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Marc Perrin de Brichambaut, Péter Kovács, and Reine Alapini-Gansou are the three pre-trial chamber judges assigned to the Palestine situation at the International Criminal Court (ICC). The photo shows them in an ICC hearing related to Mali on July 8, 2019. © EVA PLEVIER/AFP via Getty Images

(ニューヨーク)国際刑事裁判所(ICC)の判事らが2021年2月5日に下した判断でパレスチナの状況についてICCが管轄権を持つことを確認したことで、イスラエルとパレスチナにいる重大な国際犯罪の被害者が待望していた裁判への道が開かれた、と本日ヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。今回の判断は2020年1月22日にICC検察官がパレスチナにおけるICCのマンデートの範囲を確かめるよう要請したことに対するものである。

これによりICC検察官が正式な捜査を始めることになる。検察官は現在この判断を分析しており、その後ICCに関するローマ規程が定めるマンデートや義務に従って次のステップを決めると述べた。

「この非常に重要な判断は、重大な犯罪についてもっとも責任のある者たちがいつか公正な裁判で自分たちの行為について責任を問われることにつながりうる捜査への扉を開くものである」ヒューマン·ライツ·ウォッチの国際司法副ディレクターのバルキース·ジャラーは述べた。「もっとも重大な犯罪について、それが戦闘中に犯された戦争犯罪であろうと違法入植地の拡大であろうと、それを犯したイスラエルとパレスチナの者たちが裁きを受けるべき時が来ている。」

2019年12月20日、ICC検察官は5年近くに及んだパレスチナの状況についての予備捜査を完了し、イスラエル人とパレスチナ人が当地で犯したとされる重大な犯罪についての正式な捜査を進めるために必要な基準がすべて満たされたと表明した。パレスチナは2018年5月、領土内で犯されたとされる重大な犯罪について捜査を始めるようICC検察官に正式に要請し、ICCと協力するつもりであることを確言した。

パレスチナの要請があったため、ICC検察官は捜査を進めるために裁判所の判断を必要としなかったが、それでもICCの領域管轄権についてICCの判事の判断を求めた。具体的には、検察官はICCが管轄権を行使できる領土に東エルサレムを含むヨルダン川西岸とガザ地区が含まれることの確認を求めた。

パレスチナと多数の被害者からの書面による意見に加え、様々な学者、市民社会団体、政府間団体、多くの国などから43の法定助言書(アミカスブリーフ)が裁判所の検討のために提出された。イスラエルも意見を求められたものの、裁判の手続きに正式には関わらなかった。

ヒューマン·ライツ·ウォッチは2016年以来ICC検察官に対し、パレスチナで重大な犯罪が犯されてきたことを示す強い証拠があるので、パレスチナについて正式な捜査を始めるよう求めてきた。犯罪の多くが深刻であること、また犯罪を犯した者が刑罰を免れる傾向が非常に強固であることからICCによる捜査が必要である、とヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。ICCは最後のよりどころである裁判所であり、各国当局が真の訴追を行うことができない、または行わない場合にのみ介入することができる。本件で検察官がそのように認めた。

ICCは本件について、米国の前政権から前例のない強い圧力を受けてきた、とヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。2020年9月、ドナルド·トランプ大統領(当時)はICCの検察官であるファトゥ·ベンソーダを含むICC関係者2人に制裁を科した。そのような制裁を許可する2020年6月の大統領令が出る前の2年近くの間も、米国の前政権はICCによるアフガニスタンとパレスチナについての捜査を妨げる動きを強めていた。捜査が行なわれれば、米国とイスラエルの市民による行為が調べられる可能性があったからだ。

ICC検察官がICCの領域管轄権についての判断を求めると発表したのと同じ日、イスラエルの司法長官はICCのマンデートに異議を唱える覚書を発表した。その後ベンヤミン·ネタニヤフ首相はICCとその職員に対する制裁を呼びかけた。イスラエルはローマ規程に署名したが批准しておらず、加盟する意図がないことを2002年に表明した。

ジョー·バイデン米大統領の政権はこの制裁を見直すことを示唆したが、制裁の根拠であるトランプの大統領令をまだ撤回していない。これは米国の主要な同盟国を含むICC加盟国たちがこの制裁に明確な反対を表明しているにもかかわらず、である。米国国務省の報道官ネッド·プライスは2月5日の会見で、バイデン政権はICCの判断を調査中であり、「イスラエルの人員について管轄権を行使しようとするICCの試みについて深刻な懸念」を持っていると述べた。

ヒューマン·ライツ·ウォッチは、トランプ大統領による行政命令は法の支配、ICC、そして被害者に公正な裁きをもたらすICCの任務に対する脅威だとして反対してきた。

ICC加盟国はICCへの支持を表明するとともに、ICCの独立を損ないパレスチナについての捜査を阻止しようとするいかなる動きからもICCのマンデートを守る構えでいるべきだ、とヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。

イスラエル政府は50年以上前から、パレスチナ占領地に自国民を移住させている。占領地へのこうした移動は国際人道法に反している。入植地は、パレスチナの人びとを追放し、ひどく差別し、人権を組織的に侵害する体制の中心にある、とヒューマン·ライツ·ウォッチは指摘した。2017年以降、イスラエル政府はヨルダン川西岸での新たな入植地の建設を強化している。ローマ規程は、占領国が自国民を占領地に「直接または間接的に」移すことを戦争犯罪に指定している。

ICCで問題となっている犯罪は違法入植に関連する活動だけではない、とヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。ヒューマン·ライツ·ウォッチは、2014年にガザ地区で起きた1,500人以上の非戦闘員が死亡した戦闘の際に、戦争犯罪や、民間人と民間インフラを意図的に狙ったように見える攻撃を含む違法な攻撃があったことを記録した。これらの攻撃の多くをイスラエル軍が行った。これにより病院などきわめて重要なインフラが被害を受け、10万人以上のパレスチナ人の家が破壊された。

パレスチナの武装勢力は、何千ものロケット弾や迫撃砲を無差別にイスラエルの人口密集地に向けて発射し、イスラエルの非戦闘員5人が死亡、36人が負傷した。ガザ近くに住む何千もの非戦闘員も一時的に家を離れなければならなかった。

より最近のこととして、ヒューマン·ライツ·ウォッチはイスラエル軍が2018年3月30日以降にガザ地区で、命に対する差し迫った脅威ではなかったパレスチナのデモ参加者に対し、高官から出された違法な命令に基づいて繰り返し殺傷能力のある武器を用いたことが戦争犯罪に相当すると断定した。2018年のガザ地区でのデモについて国連が行った調査では、イスラエル治安部隊の構成員が「非武装のデモ参加者、子ども、障がい者を狙って、また職務中の医療従事者やジャーナリストを、正体を知りながら狙って」撃ったことが明らかにされた。

国連の調査委員会は、イスラエル軍とその指揮官らが戦争犯罪と人道に対する罪を犯した可能性があると断定し、国連人権高等弁務官事務所に共有されていた、ガザでの事件に関与したとされる者についての機密情報をICCに開示する許可を国連人権高等弁務官のミシェル·バチェレに提出した。

2018年10月、ヒューマン·ライツ·ウォッチは報告書を発表し、ヨルダン川西岸とガザ地区のパレスチナ当局による平和的な批判者や反対者に対する恣意的拘束と拷問の組織的運用は、ICCで訴追可能な人道に対する罪に相当する可能性があると結論づけた。

これらだけでなく、申し立てのある他の重大な犯罪についても処罰が行われないのが通常となっている。イスラエルとパレスチナの両当局は申し立てられている重大な犯罪を捜査し、治安部隊の構成員の責任を問うために適切な措置を取ってこなかった。このような怠慢ゆえに、ICC検察官が正式な捜査を始めることは極めて重要だ、とヒューマン·ライツ·ウォッチは述べた。

ローマ規程はパレスチナで2015年4月1日に正式に発効した。ICCはこれを理由に、1967年以来イスラエルに占領されている領土、具体的には東エルサレムを含むヨルダン川西岸とガザ地区にICCの管轄権が及ぶと判断した。2015年1月1日、パレスチナ政府は2014年にガザ地区で起きた戦闘を対象に含めるため2014年6月13日にまで遡ってICCにマンデートを与えた。ICCはこの領域内で犯された人道に対する罪と戦争犯罪について管轄権を持つ。

「ICCは、パレスチナのように領土内での裁判に頼ることができない状況で最後のよりどころの裁判所として重大な役割を担っている」とジャラーは述べた。「加盟諸国は、イスラエルとパレスチナでの行為についての捜査に対する圧力と反対が続く中で、ICCの独立をなんとしてでも守る構えでいるべきである。」

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