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「ミキモト」が責任ある調達ランク外 情報公開が必要

掲載: Yahoo! Japan

今日はクリスマス。美しい真珠、金やダイヤモンドがたくさんプレゼントされる日。美しいジュエリーには、幸せを運んできてほしい。でも、もしその製造の過程で、多くの人びとが不幸になっているとすれば?血がながれ、涙が流れ、健康が失われているとすれば?そんなジュエリーが幸せを運ぶだろうか?

残念ながら、金やダイヤモンドの採掘には危険がつきものです。世界のあちこちで人びとの健康を害し、自然環境が破壊されることも珍しくありません。私たちヒューマン・ライツ・ウォッチ(本部ニューヨーク、HRW)は10年以上にわたり、金やダイヤモンドの採掘における児童労働や環境破壊、政府治安部隊武装集団による民間人への暴力の実態を調査して明らかにしてきました。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」は、企業はサプライチェーンでの人権侵害を特定、対処、防止するとともに、その取り組み状況を公開する責任を負っています。

そこで、私たちHRWは今般、宝飾品ブランドは、金やダイヤモンドを調達するにあたり、人権侵害を防止するための取り組みを行っているのか、調査を行いました。対象に選んだのは、ティファニー、カルティエ、ブルガリなど、世界的な大手ブランド15社。そしてこれまでの10年の歴史で初めて、HRWは日本のブランドも調査対象に選びました。選ばれた日本ブランドは、真珠製品の美しさで有名なミキモトです。同社の2019年度の売上高は約263億円に上りました。

HRWのスタッフの出身国は世界約90にも及びます。その中の日本人スタッフのひとりとして私(土井)は、HRWが日本ブランドを選んだことをうれしく思い、ミキモトがその人権責任を立派に果たしていることを世界に示してくれることを期待したのでした。

しかし、期待はすぐさま打ち砕かれました。ミキモトは調査協力を拒否したのです。

昨年2019年、私たちはミキモトに連絡を取りました。そして調査の目的を説明し、金とダイヤモンドの調達の仕方について尋ねたところ、問い合わせは書面にしてほしいとのことでした。そこで文書を送ったのですが、回答が来る気配がありません。その後も何度か依頼を行いましたが、なしのつぶてでした。人権侵害に加担していない商品を購入しようとする消費者にとって、こうした対応は不親切極まりないものです。ミキモトのウェブサイトを見ても、金やダイヤモンドを採掘する人びとの人権尊重に向けてどんな取り組みをしているのか、ほとんどわかりませんでした。

透明性は、企業の人権責任の核といえます。宝飾品ブランドには、自社が手がける美しいジュエリーが、その素材となる宝石や貴金属の採掘をする労働者へのひどい人権侵害と無縁である、と説明する責任があるのです。消費者は、自分の買うジュエリーが児童労働や奴隷労働、治安関係者の暴力などの人権侵害にまみれていないと確かめるために、そうした情報が必要です。企業がどのようなサプライチェーンを持っているか、どうやってサプライチェーン上の人権リスクを特定しているのか詳しく分かれば、消費者にとっては、その企業どうやって人権侵害を見つけているか、そして見つけた場合にどうやって対応しているのか又はしないのか、知る助けにもなるのです。

今回ヒューマン・ライツ・ウォッチが世界的な宝飾・時計ブランド15社の調達慣行を査定・評価したところ、複数のブランドが透明性向上に向けて取り組んでいることがわかりました。例えば、デンマークのパンドラはダイヤモンドサプライヤーの公表を決めています。英国のブードルスは、サプライヤーに求める人権保護条項や、人権侵害が問題となっている5カ国をサプライチェーンから外す決定などの取り組み状況を公開しています。対象となった15社のうち10社が現在では、サプライチェーンでの人権尊重に向けた取り組みを公表しているといえます。

しかし、残念ながらミキモトは、公表していないブランドのひとつなのです。そして調査協力も拒否でした。その結果、HRWの「ジュエリーブランド・責任ある調達2020年ランキング」でなんとランク外になった4ブランドのうちの1つという残念な結果になってしまったのでした。ちなみに、ランキングで「強い/Strong」とされたトップ2社は、ティファニーとパンドラでした。

ミキモトの秘密主義とも言える現在の姿勢は、ビジネスのベストプラクティスに関する国際規範や国際基準に達しません。宝飾業界の透明性のトレンドからも外れています。企業がビジネスプラクティスについての情報を開示しない場合、影響を被る被害者たちは、その企業の行動を査定・評価することさえできなくなってしまうのです。

ミキモトは金やダイヤモンドのトレーサビリティを確保するために、また人権リスクを発見・対処するためにどのような方針や取り組みを行っているのでしょうか。そのほかの多くのブランドと同様に、ミキモトにもそうした情報を是非公開していただきたいと私たちは考えます。情報を隠すのではなく明らかにする方が、企業にとっても、消費者にとっても、そして最も大切なことに、金やダイヤモンドの採掘地域で暮らす人びとにとってもよりよい状況をもたらすのです。ミキモトが、そしてすべてのジュエリーブランドが透明性を高めれば、そのジュエリーはその輝きをいっそう増すのではないでしょうか。

執筆者:
土井香苗(ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表)
ジュリアン・キッペンバーク(ヒューマン・ライツ・ウォッチ 子どもの権利局 アソシエイト・ディレクター)

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