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国連:75周年 人権に再コミットを

自由と保護を後退させる企みに対し、国連総会で拒否の姿勢を

U.N. headquarters Saturday, Sept. 28, 2019. © AP Photo/Jeenah Moon

(ニューヨーク)―国連加盟国は国連創設75周年記念に先立って開催される今年の総会で、人権に再コミットすべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。 今年、ハイレベル会合はほぼリモート形式で予定されており、9月23日から始まる。

加盟国は、国連の3本柱のひとつである人権を大幅に弱体化させようとする中国政府の長年の試みや、国際人権基準を選択的に再解釈しようとしている米国政府の動きを断固拒否すべきだ。そして、1995年の第4回世界女性会議の25周年記念会合などでジェンダー平等の強化にも再コミットする必要がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの国連ディレクターのルイ・シャルボノーは、「75年前の国連の創設は惜しみない祝賀の瞬間に違いない。しかし、人権侵害に手を染める世界各国の指導者たちは依然としてあらゆる危機を利用して基本的な自由を踏みにじり、女性やマイノリティ、社会から疎外された人びとの権利を侵害している」と述べる。「世界には、グローバルな人権の指導力を発揮し、中国やサウジアラビア、ロシアなどの人権侵害政府ならびに米国のような民主主義国家に断固対峙することをいとわない国々(大小を問わない)がもっと必要だ。」

新型コロナウィルス感染症パンデミックのため、アントニオ・グテーレス国連事務総長は総会会場の演壇からスピーチをする数少ないリーダーのひとりになる。その際には、自身が近ごろ呼びかけた「Call to Action on Human Rights」に従うように、加盟国に強く求めるべきだ。この呼びかけのなかでグテーレス事務総長は、世界各地に「人権の軽視が広がっている」と警告し、国連の人権問題への注目を再び活性化することを誓った。

そしてグテーレス事務総長は、特定の国を批判することへの抵抗感を捨てるべきだ。なかでも中国政府が香港に強いた国家安全維持法と、新疆ウイグル自治区におけるテュルク系ムスリムの大量拘禁をおおやけに非難すべきである。中国政府の人権侵害について公言したがらない姿勢は、事務総長自らの行動呼びかけの精神に反している。 ヒューマン・ライツ・ウォッチを含むNGOは事務総長に対し、香港など中国各地での人権侵害を監視する特使を指名するよう6月に書簡で要請したが、まだ回答は得ていない。

事務総長はまた、米トランプ政権の「不可侵の権利にかんする委員会」を推進しようという計画に懸念を表明すべきだ。マイク・ポンペオ米国務長官は、国際的に認められた権利を「再検討」するためのこの委員会をアピールしようと、世界人権宣言のサイドイベントを主催する予定となっている。

シャルボノー国連ディレクターは、「米国の不可侵の権利にかんする委員会は、政府が賛成しない人権保護を弱める可能性をもつ重大な問題をはらんむ委員会だ」と指摘する。「この委員会はレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとや女性など、あまりに多くの人が自らの権利を主張しすぎているという誤った前提を推進している。」

国連総会のハイレベル会合期間にトランプ政権がもう一つ主催する可能性があるのが、米国の「経済分野における女性の地位向上を目指すイニシアチブ」にかかわるイベントだが、それに参加する加盟国はあらゆる暴力からの自由や健康への権利などから、女性の経済的権利を切り離すことができるという米国政府の考えを拒否すべきだ。

米国政府が人権理事会からの脱退、国連人口基金への拠出差し控え、そして世界保健機関(WHO)脱退の可能性など、国連への影響力を縮小させている一方で、中国政府はそれと全く逆の方向に動いている。

中国政府は国連にかんする諸問題への影響力を拡大かつ深めることを目指してきた。そして、その影響力を駆使し、「平和と安全」「持続可能な開発」と並んで国連の3本柱である「人権」にかんするメカニズムに反対し、経済的弱体化することを目指してきた。中国政府は、人権侵害の監視ミッション、そしてシリアやミャンマーなどで起きている重大犯罪の証拠収集ミッションへの拠出拒否・職員削減のために、絶え間なく国連の予算委員会へのロビー活動を行っている。

国連代表団は、北京宣言と行動綱領を祝う10月1日のハイレベル会合を機会に、ジェンダー平等へのコミットメントを再確認・強化する必要がある。新型コロナウィルス感染症パンデミック、学校の閉鎖、そして経済危機が既存の不平等を悪化させた。とりわけ、家族の世話や介護などの役割、ジェンダーに基づく暴力、教育・経済的エンパワメントへの壁などが増大し、女性や少女が深刻な状況に追い込まれている。

シャルボノー国連ディレクターは、「米国政府の性および生殖にまつわる保健・権利への攻撃などの結果、過去25年間で勝ち取られた女性の権利の前進が脅かされている」と指摘する。「中国政府は女性の権利活動家に嫌がらせや威嚇を行い、ジェンダー平等を推進するソーシャルメディアのアカウントや投稿を検閲している。」

新型コロナウィルス感染症パンデミックにより、今年世界各地で100万人近くが犠牲になった。ロックダウン(都市封鎖)と世界的な景気後退は、とりわけ貧困層に大きな打撃を与えた。十分な医療へのアクセスなどの経済的・社会的権利をめぐり、不安定な状況にある人びとが受ける永続的な悪影響に、とりわけ懸念が深まっている。国連加盟国は総会の会合を機会に、経済的および社会的な不平等を恒久的に縮小させていく方策についての議論を加速すべきだ。

シャルボノー国連ディレクターは、「国連総会で加盟国は、世界的な人権枠組みの時計の針を元に戻し、弱体化させようとする動きを非難すべきだ」と述べる。「中国政府は国連が柱とする人権を自らの反人権の考え方にそって再構築したいと考えている。米国政府は、各国政府がそれぞれ好みの権利を選び、好まない権利は拒否すればいいという姿勢を強めている。世界各国の指導者は人権保護の軽視や弱体化に対し、声高らかに反対しなければならない。そして、人権の尊重と強化こそを求めるべきだ。」

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