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ミャンマー:ロヒンギャに関する政府報告書は不十分

戦争犯罪は認められても、完全な調査結果は公開されず

Myanmar's leader Aung San Suu Kyi, right, receives a final report from Philippine diplomat Rosario Manalo, a member of the Independent Commission of Enquiry for Rakhine State, at the Presidential Palace in Naypyitaw, Myanmar, January 20, 2020. © 2020 AP Photo/Aung Shine Oo

(2020年1月22日、ニューヨーク)ミャンマーで起きた2017年の「掃討作戦」に関する同国政府の調査は、国軍による不法行為を断片的に認める内容を含む一方、政府治安部隊がロヒンギャ・ムスリムに行った大規模な人権侵害行為を取り扱ったものではないと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ミャンマーのドナーと関係各国政府は、独立調査委員会の報告書が、正義とアカウンタビリティ(説明責任)が追及できる環境づくり、またはロヒンギャ難民のバングラデシュからの安全な帰還の実現にとっては、かなり不十分なものであることを明確に指摘すべきだ。

2020年1月21日に大統領府が発表した報告書要約(全15頁)では、ミャンマー治安部隊がラカイン州北部の「ムスリム」に対して、戦争犯罪と重大な人権侵害を行ったことが認められた。しかし、ミャンマーに関する国連独立国際調査団とヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体が、ロヒンギャの成人女性と少女への広範なレイプについて、膨大な証拠を示しているにもかかわらず、報告書では「ミャンマー治安部隊による集団強かんの証拠はない」とされた。要約では、大量虐殺の意図を示す証拠は示されず、人道に対する罪の疑いについては言及されていない。政府は報告書全文をまだ公開していない。

「ミャンマー調査委員会の報告書は、国軍の不正行為を免責しようとする政府の長年の試みからスタートしたものとはいえ、それでもやはり失望は大きい」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「国連の調査結果に反し、報告書はロヒンギャへの大規模な残虐行為を認めようとせず、呆れたことに、国軍による性暴力の広範な使用を否定し、軍幹部の責任追及も行っていない。報告書は、大規模な犯罪行為に対する正義と説明責任の実現に向けた、信頼に足る根拠ではない。」

報告書要約は、ミャンマー政府と緊密に連携する、政治的にゆがめられた委員会が行った、透明性を欠いた調査結果を反映していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

委員会は「2017年のラカイン州北部で起きた国内武力紛争で、ミャンマー国防省および警察の一部成員が、民間人、おもにムスリムを意図的に殺害したり、移住を強制させたりした」ことを認めた。また、アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)との「国内武力紛争のなかで、ミャンマー国防省および警察の一部成員が戦争犯罪になりうる行為」および「重大な人権侵害行為」を「実施した可能性がある」ことも明らかにした。委員会はこのほか、治安部隊による民間人の「大量殺人」が、マウンドー郡トゥラトリ(別名ミンジー)、チュットピン、マウンヌー、グーダーピンの各村で発生したことも明らかにしたが、国連や人権団体の調査結果とは逆に、殺害の大部分は、国軍とARSAとの武力衝突中に起きたとほのめかした。

委員会は、殺人や強制移住が「ムスリム、あるいはラカイン州北部にあるその他のコミュニティを破壊する意図や計画」に関与していることを示唆する証拠はなかったと述べることで、ジェノサイドの嫌疑を退けようとした。また、民間人(文民)に対する広範または組織的な攻撃を意味する、人道に対する罪の嫌疑を扱っていない。

ミャンマー当局が、虐殺への政府の対応にかんする世界的な不信感を払拭することを望むなら、軍事指揮系統の役割について独立した国際調査の実施を認める必要がある。

「委員会は、残虐行為を計画・命令した国軍司令官を守りながら、人道に対する罪、またジェノサイドすら起きたとする結論が圧倒的な国際世論を懐柔するために必要な、最低限の内容のみ認めたようだ」と、前出のアダムズ局長は述べた。「いくばくかの下級兵士を身代わりにしたところで、人の目は欺けない。委員会の報告書が意味を持つのは、国軍が責任を認め、独立した国際司法手続きに同意する場合に限られる。」

2018年8月に設立された「独立調査委員会」(ICOE)は、ヤンゴンとミャンマーの首都ネピドーに、2つの「証拠収集・検証チーム」を配置したものの、ロヒンギャがミャンマー国内よりも自由に、また報復の恐怖を感じることなく話すことのできるバングラデシュで難民のインタビューは行わなかった。フィリピンと日本から1人ずつ参加する委員会の構成、マンデートや過去の発表は、委員会の公平性と独立性に深刻な疑義を生じさせてきた。当初、議長は「誰かを非難したり、誰かを名指ししたりすること……あなたに責任があると言うこと」はしないと公言していた。

要約によれば、「十数件」の訴訟資料が、ミャンマー検事総長事務所と軍主任法務官事務所に提出され、追加調査される。しかし、政府がロヒンギャへの大規模な犯罪について、トップレベルを含むすべての責任者を完全かつ公正に調査し、訴追しなければ、委員会は、真相究明と説明責任についてではなく、ミャンマーの評判にたいするダメージ・コントロールのみで記憶されることになると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

今回の委員会は、ロヒンギャへの人権侵害を調査する名目で設置された政府組織としては8つ目になる。これまでの組織は、信頼に足る公平な調査を実施できなかったため、政府は今回の組織を立ち上げることになったが、その目的は明らかに、今回の件の国際刑事裁判所への付託や臨時国際法廷の設置といった動きを防ぐことにある。

「関係国は、今回の委員会が、ミャンマー当局による真相究明と説明責任を実現し、状況への突破口をついに開くのかどうかを、かなり辛抱強く見定めようとしてきた」と、前出のアダムズ局長は述べた。「たいして期待もしていなければ、そこそこの成果が出たと捉える向きもあるかもしれないが、悲しいことに現実を見れば、成果はゼロに等しい。政府は今回控えめに責任を認めたが、それではあまりに少なく、遅きに失している。」

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