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ビルマ:政府調査委員会、残虐行為を否定

「不適切な調査」を踏まえ、国連事実調査団に自由なアクセスを認めるべき

Vice President Myint Swe speaks at a press conference of the government commission’s final report on the Rakhine State investigation in Rangoon, Burma, August 6, 2017. © 2017 AP/Thein Zaw

(ニューヨーク)― ビルマ政府の調査委員会は、ラカイン州での治安部隊による深刻な人権侵害行為について、信頼できる根拠を示さずに訴えを退けたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ミンスウェ第一副首相が委員長を務めるラカイン州に関する政府調査委員会は9カ月の国内調査を終え、2017年8月6日に記者会見を開き、ロヒンギャへの人権侵害の訴えに関する調査結果を発表した。

独立した消息筋から大量の証拠が示されているにも関わらず、委員会は深刻な人権侵害行為は一切ないとした。ビルマ国軍がすでに行った不十分な調査と相まって、今回の委員会の結論は、国連のマンデートを得た国際的な事実調査団に対し、政府が完全なアクセスを与える緊急の必要性があることを示していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「委員会の調査結果は、ロヒンギャに対する昨年の大規模な人権侵害を隠蔽しようとする最新の動きである」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「一連の残虐行為が消えてしまうことはない。国連事実調査団のビルマ入国が早く認められれば認められるほど、責任者が特定され、被害者の補償が早く行われることになるだろう。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは委員会報告書の要旨を入手した。これによると委員会は、訪問した村落でのレイプや集団強姦、拷問、殺害の裏付けはとれなかったと結論づけた。また13カ村で建造物1,152棟が破壊されたことを認めたが、放火犯を特定することは不可能であると述べている。報告書は、2月から3月にかけて、殺人やレイプ、放火、証拠隠滅、窃盗、不当な殺害で21件の裁判が起こされたが、調査後にすべての訴えが退けられたとした。証拠がねつ造されたと述べた事案もあった。

ミンスウェ副首相は「国連が言うような、人道に対する罪の可能性もなければ、民族浄化の証拠もない」と記者団に述べたとされる。虐殺の可能性も退けた。委員会は報告書要旨で、明らかになっていない治安部隊による人権侵害や、さらなる調査を必要とする人権侵害がある可能性を認めた。

13人で構成された委員会が用いた調査方法は、不完全で不正確、かつ誤った情報を生み出したと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。現地団体の報告や目撃証言、公開された映像によれば、委員会の調査員は村人を詰問したり、言い争ったりしたほか、黙れと命じ、嘘つきとなじり、秘密が保証できない大人数で、レイプのサバイバーを含む被害者の聞き取りを行ったりした。

委員会のマンデートは調査範囲に、2016年10月9日のロヒンギャ過激派と見られる一団による国境警察地区支部等3カ所への襲撃事件に端を発する、ラカイン州北部での人権侵害を含んだ。報告書要旨は国連について、過激派の襲撃を考慮せず、治安部隊の行動に焦点を当てたと批判した。委員会の調査結果は2017年1月3日付の中間報告を受けたものであり、これもまた政府治安部隊が人権侵害を行ったとの訴えを退けていた。

国連やヒューマン・ライツ・ウォッチなどは、10月9日の連続襲撃事件後に、ビルマ政府治安部隊がラカイン州でロヒンギャへの深刻な人権侵害を多数行ったことを報告してきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは超法規的処刑成人と未成年の女性へのレイプ少なくとも1,500棟の建造物の放火を明らかにしてきた。ロヒンギャの村人はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、放火は治安部隊によるものだと述べた。委員会要旨は、戦闘でのグラネードランチャー使用に言及しており、国軍が家の破壊に「ランチャー」を用いたというロヒンギャ側の証言を実質的に裏付けるものだ。治安部隊の作戦行動で大量の人びとが住みかを追われた。隣国バングラデシュには7万人以上が逃れたほか、2万人が国内避難民となっている。2月3日付の国連人権高等弁務官事務所の報告書は、ロヒンギャへの襲撃が人道に対する罪に該当する「可能性はかなり高い」と結論づけた。

委員会による調査の結論に先だって、ラカイン州での人権侵害の訴えに関するビルマ国軍の調査結果が5月23日に発表された。これも人権侵害の事実を否定するものであり、明らかにした不法行為はわずか2件の軽微な事件だけだった。つまりビルマ政府は今回の暴力事件について4つの調査を別々に立ち上げたが、いずれも信頼性と公平性に欠けるものだったのである。

3月、国連人権理事会は独立した国際事実調査団の設置決議を採択し、ビルマ、とくにラカイン州で最近生じた人権侵害の訴えについての調査に関するマンデートを与えた。

ビルマ政府は事実調査団メンバーに指名された専門家3人へのビザ発給拒否をほのめかしているが、今のところ行動に移してはいない。チョーティン外務副大臣は6月30日に国会で「各国のミャンマー大使館に、国連事実調査団メンバーへのビザ発給を行わないよう指示するつもりだ」と述べている。

コフィ・アナン元国連事務総長が代表を務める委員会は、ラカイン州に関する詳細な勧告を記した最終報告書を今月発表の予定だが、マンデートには人権侵害の調査は含まれていない。

「ラカイン州調査委員会による無能な調査は、ビルマが国連事実調査団の入国を認めるべききわめて強い根拠である」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「ビルマのドナーと友好国は政府に対し、否認とごまかしの戦略も、被害者に真相追究の権利を認めない振る舞いも止めるよう求めるべきである。」

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