Members of parliament cast ballots in Naypyitaw on June 25, 2015. 

(ニューヨーク)ビルマで宗教の異なる男女の婚姻を規制する差別的な法律が2015年7月7日に国会を通過した。テインセイン大統領はこの法案への署名を拒否すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。法案の標的は、仏教徒でない男性と結婚する、あるいは結婚を考えている仏教徒女性だ。反仏教的行為という曖昧な規定を導入し、離婚、親権と夫婦間財産の権利の喪失、更には刑事罰の根拠としている。

この「仏教徒女性特別婚姻法」は、両院合同で開かれた国会で賛成524票、反対44票、棄権8票で採択された。法案の最終版はまだ公開されていない。法案は署名のために大統領に送られている。

「今回の特別婚姻法は、仏教徒女性への援助という不合理な主張で宗派間の婚姻を抑制しようとする露骨なやりかたである」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理フィル・ロバートソンは述べた。「宗教過激派が扇動する反ムスリム暴力の新たな引き金となりかねない。大統領は署名を拒否すべきだ。」

この法案は差別的なだけでなく、国際法が保障するプライバシー、信仰、法の下の平等への権利を侵害するものだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。この法案は「ミャンマー人仏教徒女性と非仏教徒の夫のみを対象とする」ものであり、18歳以上のビルマ人仏教徒女性全員に適用される。法案は、郡区登記官が夫婦の婚姻届を14日間公開すること、また結婚に異議がある人物が地方裁判所に提訴することを認めている。また20歳未満の女性に差別的な規制を課し、非仏教徒と結婚する際には両親または法律上の後見人から許可を得なければならないと定めている。

同法はさらに非仏教徒の夫に対し、配偶者が仏画や仏像を置き、仏教儀礼を行うなど、仏教を自由に信仰することの尊重を定めている。夫には「仏教徒の感情を荒立てる意図を持って文章を書き、発言し、振る舞い、あるいは身ぶりをするといった意図的で悪意ある行為」を慎む義務がある。こうした条項への違反は離婚理由となる。離婚の場合、非仏教徒の夫は夫婦の共有財産における自分の取り分を主張できず、妻に慰謝料を払い、子どもの親権を奪われることになる。

この法律は既存の結婚にも適用され、異なる宗教を信仰する夫婦は宗派間結婚を届け出る義務を負う。仏教徒女性と結婚するヒンドゥー教、シーク教、ジャイナ教の信者男性は「そうした家庭と縁を切らなければならない」――つまり自分が育った家庭と縁を切らなければならない――だけでなく、亡くなった際には自分の全財産が仏教徒の妻と子どもたちのものとなる。仏教に対する犯罪は刑法295条と295条(a)が定める宗教侮辱罪で起訴される可能性がある。有罪になると2年から4年の禁固刑が宣告される。

「仏教徒女性と結婚した非仏教徒男性が、自らの宗教が原因で結婚、子ども、財産を失うのではないかと恐れるようなことがあってはならない」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「大統領はこの法律を廃案にし、宗教的・社会的不安がこれ以上高まるのを避けるべきだ。」

特別婚姻法は、国際法がビルマに課す条約上の義務に違反する。自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)は、婚姻を行い、家族を宗教などの理由による差別なしに築く権利を認めている。ビルマも加盟する女子差別撤廃条約(女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約)は第16条で、各国政府には「婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃する」義務があるとし、また男女が「婚姻中及び婚姻の解消の際」について、また「子に関する事項についての親」としての同一の権利及び責任があると定めている。

特別婚姻法は通称「民族宗教保護法」というパッケージ化された4法案の1つだ。影響力を増しつつある民族宗教保護協会(通称「マバタ」)がビルマの国会議員に圧力をかけたことが背景にある。マバタは仏教の高僧と有力な僧侶が作る全国組織で、メンバーの多くがビルマの宗教的少数者であるムスリム、なかでも国籍を持たないロヒンギャ・ムスリムをたびたび非難している。マバタが最初に婚姻法の草案を提出したのは2013年だ。政府は2014年後半に最高裁判所が起草した法案を発表したが、マバタの草案との違いはわずかだった。

4法案すべてに人権面での深刻な懸念があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2015年5月に大統領が署名して成立した人口調整法は当局に対して、特定の集団に属する人びとが産むことのできる子どもの数を制限する権限を与えるもので、宗教的・民族的少数者への差別的措置を招きかねない。このほかまだ成立していない2つの法案は改宗と一夫一婦制に関するもので、現在も国会で審議中だ。

国連および米国やEUなどビルマの主要なドナー国は、この4法案を厳しく批判している。EUは7月8日に特別婚姻法は「国際人権基準を尊重しておらず、ミャンマー[ビルマ]が負う人権条約上の義務に反するものだと思われる」との声明を出した。

「国会と大統領は過激な勢力におもねることなく、ビルマ社会にさらなる分断もたらすだろう法案はすべて廃案とすべきだ」と、ロバートソン局長代理は述べた。「総選挙が11月8日に控えている。差別とコミュニティ間の暴力で膨張する勢力を後押しする法律が成立するのは危険な展開だ。」