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ナイジェリア:反LGBT法が基本的人権を脅かす

「同性婚」への反発から 表現や結社まで犯罪に

(アブジャ)ナイジェリアのグッドラック・ジョナサン大統領が2014年1月7日に署名して成立した同性婚(禁止)法案は、広範な危険をはらむ法律である。この法律は、同性カップルによる公の場での愛情表現を犯罪とみなし、同性愛者とその権利を守る団体の活動を制限する。ジョナサン大統領は、直ちにこの苛酷な法律を廃止するべきだ。

同法は「同性の婚姻契約を結ぶ、あるいはシビル・ユニオンを結ぼうとする」者に最長14年の刑を科し、宗教指導者などの「同性の婚姻あるいはシビル・ユニオンの挙式に立ち会う・加担する・補助する」個人もしくは団体に、最長10年の刑を科す内容。また、「同性の恋愛関係を、直接あるいは間接的に人前で表現する」者及び、「同性愛者のクラブ・社会・団体を登録・運営・あるいはそれに参加する」者に対し、それらのグループの支持者を含め、最長10年の刑を科す。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(以下LGBT)の権利局グラエム・レイドは「この法律は、ゲイとレズビアンの生活を犯罪にしてしまうに留まらず、あらゆるナイジェリア国民に悪影響をもたらす」と指摘。「ナイジェリア国民が長きにわたって闘い、守ってきた普遍的自由を損ない、市民の権利が踏みにじられた過去の軍政時代に逆戻りさせかねないものだ。」

ナイジェリア上院は2011年11月29日に同法案を承認し、下院は2013年5月に第3及び最終読会を通過させた。「調整委員会」は昨年12月に最終案を固め、ジョナサン大統領の署名に備えた。

新たな法律制定は、個人の性的指向あるいはその疑いだけをもって、投獄される事態をもたらす危険性がある。「同意に基づく個人的な性関係を持った」、「LGBTの権利を推進した」、「LGBTの性的指向や性自認(ジェンダーアイデンティティー)を人前で表現した」ことなどにより、人びとは訴追される恐れがある。「同性の婚姻」及び「シビル・ユニオン」という語句は、同法の中で極めて広く定義されており、事実上あらゆる形態の同性の共同生活が含まれてしまう。

「この法律は非常に曖昧で、同性愛者の恣意的逮捕に繋がる危険が高く、汚職で悪名高いナイジェリア警察による恐喝と脅迫を助長しかねない」、と前出のレイドは指摘している。「レッテルを貼られた人びとをさらに周辺に追いやり、目につかない場所に押し込め、権利と健康を危険に晒してしまう。」

ナイジェリアの主要な人権保護団体は、この法律に反対すると脅迫される危険にさらされており、意見を述べることさえ恐ろしい、と語っている。ナイジェリアのLGBTの権利保護やそれに関連した活動を行っている団体への寄付者/資金提供団体や支持者に対しても、同法の下で監視が強化される可能性もある。

ナイジェリアは、HIV/エイズと共に生きる人びとの数が世界第3位の国である。ナイジェリア国家エイズ対策局は、HIV/エイズ対策に取り組むにあたって、同性愛行為を行うグループにも手を差し伸べる必要があると認識している。同法はLGBTグループを支える活動を行う人びとを犯罪者にしてしまうため、その取り組みの妨げになるだろう。定義のあいまいな「同性愛者の会合」を禁止することで、男性と性行為を行う男性に対してHIV予防と保健に関する教育を提供している、主要な援助国・機関が資金援助する事業すら犯罪にしてしまう危険がある。

同法は、国際人権保護条約や基準、更にナイジェリア憲法が保障している、基本的自由を侵害している。ナイジェリア憲法第40条は「すべての者は、他者と自由に集会を持ち、結社する、とりわけ政党・労働組合その他、その者の利益を守るために結社する、あるいは結社に所属する権利を有する」、と保障している。憲法第17条では「すべての国民は、法の前の権利・義務・機会において平等である」と認めている。

「人及び人民の権利に関するアフリカ憲章」は同様に、表現の自由(第9条)、結社の自由(第10条)、集会の自由(第11条)、全人民の平等(第2条及び第3条)を保障している。第26条は「あらゆる個人は、同胞を尊重し差別なく認めると共に、相互の尊重と寛容を促進・保護・強化することを目的とした関係を、維持する義務を有する」、と規定している。「人及び人民の権利に関するアフリカ委員会」は2006年、平等権の保障は性的指向にも及ぶと言明した。

ナイジェリアは1993年、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下ICCPR)」に保留事項なく加盟した。同条約もまた、表現の自由(第19条)、集会の自由(第21条)、結社の自由(第21条)を保障すると共に、法の下での全人民の平等及び差別を受けない権利(第2条と第26条)を認めている。各国のICCPR順守状況を監視する国連人権委員会は1994年、性的指向は同条約上、差別から保護される地位にあると理解されるべきと断定し、個人による同意に基づいた同性同士の性行為を犯罪とする法律は、ICCPRが保障するプライバシー権を侵害していると裁定した。

ナイジェリア南部で施行されている刑法と、ナイジェリア北部で施行されている刑罰法では既に「自然の摂理に反して」人と「交接」あるいは「性交渉」を持つ者に、14年以下の刑を科している。それらの法律は、ヒューマン・ライツ・ウォッチが2008年に公表した報告書で取りまとめたように、英国植民地支配が終焉した後にも残った、ビクトリア朝時代の規定である。1999年以降ナイジェリア北部は、シャリア(イスラム)刑罰法を導入、「男色」をムチ打ち・投獄・石打による死刑で罰する犯罪としている。同性の婚姻とシビル・ユニオンは、ナイジェリアでは認められていない。アフリカ最大の人口を有するナイジェリアだが、同性の結婚を法制化する動きは皆無である。

ナイジェリアは1960年に独立して54年が経つが、うち約30年間は軍によって独裁支配され続けた。人権保護や民主主義を求める活動家は逮捕され、報道の自由は制限され、適正な手続きを受ける権利は停止されていた。ナイジェリアが民政に復帰したのは1999年のことだ。

「これは、軍による支配が終わって以降、各種基本的人権を制約する最も弾圧的な法律だ」、と前出のレイドは指摘した。「政府にあるグループの自由を奪うのを許せば、次は他グループの権利も奪われていってしまうだろう。」

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