人権尊重なしに、中国政府は環境問題を解決することはできない。

中国北部黒竜江省の都市ハルビン。人口1100万人のこの都市では、大気汚染レベルが、世界保健機関(WHO)の基準の10倍にも達した。ハルビンのニュースサイトは「目の前にある自分の指さえも見えない」と報道。それほど深刻だった。

このハルビンの大気汚染は、中国国内で多発している環境問題のひとつにすぎないことは言うまでもない。

そして中国政府ももちろん問題に気がついている。

今年9月に中国政府当局者、国連、研究機関と市民社会などが、第6回北京人権フォーラムに参加。今年のフォーラムのテーマは「環境権」だった。政府系のシンクタンク「中国人権研究会(China Society for Human Rights)」の会長は開会に際し、「クリーンで美しい環境は、最も基本的な人権の一部である」と表明した。

しかし「環境権」の実現には大きな壁がある。つまり、情報へのアクセス、言論の自由、集会の自由、健康への権利と救済への権利などの基本的権利なしには、意味のある環境権などは実現できないのだ。中国政府は、環境権を認めるどころか、環境破壊をめぐる大衆運動を弾圧している。

たとえば、中国南西部、青海省内のチベット系の新聞報道によれば今年8月、漢族による不法採掘事業に対する抗議運動が発生、集まった人々に催涙ガスが撃ち込まれ、逮捕者と数十人の負傷者が出る事態をもたらした。

広東省では7月と8月に、ゴミ焼却場の建設に関して流血の衝突が発生、「ガンは嫌だと言おう」「次世代の環境を守れ」と叫んだデモ参加者が、逮捕される事態となった。

中国には、がん発生率が国の平均を遥かに上回る通称「ガン村」が推計で450箇所存在する。工場や化学プラントの近くの村々だ。村民たちは救済や情報を求めて地元や国の政府に陳情をしているが、多くの場合無視され、逆に嫌がらせを受けたり、逮捕される事態となっている。

鉛中毒に冒された子どもを連れた両親が2009年9月、村から町に向かうバス内で逮捕される事件がおきた。両親たちは、わが子の病気に関する情報をもらいたいと町に行こうとしていただけだった。中国政府当局は「一般市民への教育上」処罰は正当だ、とした。

中国政府は最近も、環境汚染に対処するための新たな取り組みを発表。石炭などの重大な汚染源からの排出ガスを抑えるとも公表した。しかし、中国には、しっかりした環境保護法がすでに多数成立している。欠けているのは法の執行、そして、法律違反に対する責任の追及(アカウンタビリティ)なのだ。そして、人権尊重なしに責任追及ができないことは言うまでもない。

再び中国に清浄な大気・水・土壌を復活させるには、人権の保護が必要だ。中国政府が人権尊重の姿勢を明らかにするその日まで、「環境権」は、スモッグの霧に霞み続けてしまうだろう。