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(ジュバ)-南スーダン政府は、児童婚から少女を保護する取組みを強化すべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは国際女性デーの前日である本日に公表した報告書で述べた。同国でまん延する児童婚は、学校在籍児童間に見られるジェンダー格差を顕著化し、妊産婦死亡率を増加させ、少女の暴力を受けない権利を侵害し、かつ、婚姻は自由意志による権利も侵害している。

南スーダン政府統計によれば、15歳から19歳までの少女の半数近く(48%)が婚姻しており、中には12歳くらいで結婚した少女たちもいる。

全95ページの報告書「『我々を養えるこの年寄りと結婚しろ』:南スーダンにおける児童・強制婚の実態」は、児童婚の及ぼす影響、結婚に抵抗する少女や家庭内暴力から逃れようとする少女に対する保護がほぼ全く欠如している現状、そして被害者が救済制度にアクセスする際に直面する多くの障害などを調査してまとめた報告書である。報告書は、中赤道州、西赤道州、ジョングレイ州の女性と少女87人、更に政府当局者、伝統的指導者、保健・医療従事者、法的及び女性の権利専門家、教師、刑務所当局者、NGOや国連そして援助機関の代表者への聞き取り調査を基に作成されている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利局長リースル・ガルンソルツは「勇気をだして若年結婚を拒む少女たちには、保護や支援そして教育を緊急に提供する必要がある。南スーダン政府は、児童婚事件に対して関係機関が協調的対応を取れるようにしなければならないし、少女の権利の保護にむけて警察と検察に更なる訓練を施さなくてはならない」と指摘。

南スーダンの少女たちによると、結婚するよう圧力を掛けられる理由は、花婿の持参金を貰いたいという家族の思惑や婚前性行為を家族に疑われたためだと言う。少女アギール・Mはこう話す。「私が彼との結婚を断ったら、叔父さんたちにひどく殴られて、無理やり今の夫のところに連れてこられたの。その男に、今の夫と無理やりセックスさせられたせいで、私はそこに居るしかなくなったの。」南スーダンの少女の殆どは、助けを求める権利があることを知らない。一方、早婚や強制婚に抵抗を試みる少女は、家族からの言語的暴力や虐待、さらに時には殺人に至るほどの残虐な仕打ちに苦しんでいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、父親に200頭の牛を持参金として提供すると申し出た年老いた男との結婚を強制されたレイク州の17歳の女子学生について掲載している。少女は「その男なんて知らない。話したこともなかったし、歳の差が離れ過ぎている」、と結婚を拒否すると、近くの森に連行された後、木に縛られ、殴り殺された。

同報告書は南スーダン政府に対し、婚姻の最少年齢を18歳と明確に設定すること、「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女性差別撤廃条約)」や「子どもの権利条約」等の人権条約を批准すること、婚姻・別居・離婚を規定した包括的な家族法を制定することを勧告している。

児童婚は女子教育を中断あるいは終了させるだけでなく、女子の暴力と虐待を受ける危険性を増加させる。少女が疾病にかかる確率も高くなる。児童婚問題に取り組まないでいれば、南スーダンの将来の開発発展に重大な影響を及ぼす危険性に繋がる可能性があり、それは女性と少女及びその家族と所属するコミュニティーの教育・身体の安全・経済的進歩を制約することになる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘する。

「児童婚は少女の教育を度々中断させ、あるいは彼女たちから完全に教育を受ける機会を奪ってしまう」、と前出のゲルンソルツは述べた。

聞き取りに応じた女性と少女たちは、会計士や教師、医師になりたかったので学校に通いたかったのに、その夢を結婚が壊してしまったと話していた。結婚や妊娠後に学校に通い続けられなくなり、ドロップアウトせざるをえなくなった少女たちも多い。

2011年の政府統計によると、小学校に在籍する女子児童の割合は僅か39%、中学校は30%となっている。

児童婚による若年での妊娠や出産は、少女たちが死亡したり病気にかかるリスクを一層引き上げている。若年女性の妊娠・出産は、小さな骨盤と未成熟な体が原因の、生命の危険を伴う閉塞性分娩を含め、成熟した女性より大きな危険を伴う。そして、南スーダンにおいて、出産前後の保健医療サービスが限られているという実態が更に問題を悪化させている、とリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)の研究は明らかにしている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは南スーダン政府に、経済支援を受けつつ、以下に掲げることを行うよう求めた。  

● 児童婚が招く結果を予防し、それに対処するための包括的国家行動計画を策定・実施すること

● 国及び州の政府省庁・機関を対象とした児童婚問題への取り組み方に関するガイドラインを策定・実施すること

● 児童法のもとで保証されている少女の法的権利、とりわけ児童婚から保護されるべき少女たちの権利に関するトレーニングを関係政府当局者と法執行官に受けさせること

● 児童婚によってもたらされる危害について、市民に情報提供するため国家規模の啓蒙キャンペーンを実施すること

● 婚姻・別居・離婚などについて定める南スーダン法を総合的に改正するべく努力すること

● 強制婚から逃れるための支援を求める女性と少女へのサポートを保証するためのプログラムや政策をとること

世界中では、毎年約1,400万人の少女が、18歳の誕生日前に結婚している。ユニセフの2012年報告によれば、20歳から24歳までの女性のおよそ3人に1人が、18歳以前に結婚、約11%が15歳以前に結婚している。児童婚は世界の全ての地域でみられるが、南アジア、サハラ以南のアフリカ、中南米、カリブ地域などでは特に顕著である。

前出のガルンソルツ女性の権利局長は「女性と少女から生活の手段を奪うとともに、暴力にさらされる危険性が増す児童婚。これは世界的問題である。南スーダン政府は、女性と少女の人権を開発政策の重点課題とし、ジェンダーの平等を保障するという自らの約束を果たすべきだ」と指摘した。

証言の抜粋

『その男は、私の叔父さんたちの所に行き、支度金として80頭の牛をあげました。私が結婚に抵抗したら、叔父さんたちは「兄弟姉妹の面倒をみてもらえるようにしたいなら、あの男と結婚するんだ」、と言って私を脅しました。私はその男は歳をとり過ぎているって言ったんです。そしたら、叔父さんたちは「あの男は私たちに食べる物をくれるんだから、お前が好きだろうとなかろうと、あの年寄りと結婚するんだ」、と言って、私をひどく殴ったんです。母もその結婚に反対だったため殴られました。』-アグエットN、(2012年3月15日、於ボール郡)-2003年に15歳で結婚。アグエットは、当時5年生で、教育を修了したかったが、叔父たちに暴行され、母親からは75歳の男と結婚するよう強いられた旨をヒューマン・ライツ・ウォッチに明かした。

「お父さんは私を学校に行かせてくれなかった。女子の教育なんて、お金の無駄だって。結婚すればコミュニティーから尊敬されるようになるって言ってた。でも私が成長した今、それがホントじゃないってことが分かった。子どもの面倒を見ようと思っても仕事に就けない。でも、教育を受けた女の子が仕事に付くのを見たの。」—マリーK(2012年3月7日、於ヤンビオ郡)

「私が愛していた人は牛を持っていなかったから、叔父さんたちは彼との結婚を許してくれなかった。今の夫は牛を120頭出したのよ・・・。結婚を断ったら、叔父さんたちにひどく殴られて、無理やり今の夫のところに連れてこられたの。その男は私に、今の夫と無理やりセックスをさせて、それで私はそこに居るしかなくなったの。」—アギールM(2012年3月15日、於ボール郡)

「娘の結婚を遅めれば、娘は妊娠してしまうかもしれない。男から多くの牛を貰えなくなるかもしれない。だから娘を早く結婚させるのさ。結婚しないまま娘が妊娠するのがすごく怖いんだ。」—ヤルB(2012年3月15日、於ボール郡)

「彼のこと前は知らなかった。愛してなかった。家族に『この男はいやだ』って言ったら、家族は『あの年寄は私たちを養えるんだから、お前はあの人と結婚するんだ』って言ったの。」—アトンG(2012年3月15日、於ボール郡)—アトンは2011年7月に50歳の男との結婚を強制された。

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