(ニューヨーク)-北朝鮮政府は、学校生徒や大学生までをも含む北朝鮮国民に対し、無償の強制労働を継続的に課している、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。最近ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った脱北者らに対する聞き取り調査において、北朝鮮の人びとは、無賃金あるいは形ばかりの賃金で何年も労働させられたこと、そして、指示された労働現場に出頭しなかった場合は賄賂を支払わないと厳しく処罰される実態などを語った。

脱北者らはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、学校卒業後、割り当てられた労働現場で働くことを義務付けられたと訴えた。北朝鮮経済の大半が事実上崩壊していることからすれば、ほとんどの労働は無賃金又は食料品やその他の配給品という形での最低限の代替的な報酬が提供されるだけである。別の方法で金を稼ごうとして、指示された労働を行わなかった場合は、半年から2年の間、強制労働収容所に送られる危険がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理のフィル・ロバートソンは「無報酬の強制労働と搾取は、北朝鮮の労働者や学生が直面している過酷な現実だ。拒否すれば、強制労働収容所に送られ、そこでは過酷な労働を強いられ、看守からの虐待に遭い、人間以下の存在として取り扱われる」と語る。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、過去6ヶ月の間に韓国及びタイで約65人の脱北者に聞き取り調査を行った。2009年12月に北朝鮮から逃げ出したある女性脱北者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「仕事を辞めた人は皆・・・無職であるという理由で、法的に処罰されます。そして3ヶ月から6ヶ月の間、強制労働収容所に連れて行かれるのです。北朝鮮では、無職であれば、犯罪者と見なされます」と話していた。2011年3月に北朝鮮から逃げ出したもう1人の男性は、「[労働のため]にどこかに配置されたら、文句なしに出頭するしかありません。嫌だと働くことを拒否する事は出来ません、疑問を挟むことが許されない義務なのです」と話していた。

別の脱北者はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「卒業後、政府の鉱山で働くよう強制されました。ただ、自宅からすごく遠かったんです。母が死んでしまっていたので、病気の父の面倒を看なければならず・・・、当局に賄賂を渡さなければなりませんでした。それで当局は近くのタイル工場に私を配置して・・・それから後はタイル工場で強制労働させられたんです」と話していた。

労働に行かなければ、その職場の管理者から体罰を加えられる危険がある。ある脱北者はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「工場長は働きに行かないと、僕を呼びだし、殴り、罵った。沢山の人が僕が殴られるのを見ていました・・・。僕は食べる物がなにもなくて、働きに行かなかったんだと話しました。話せば話すほど、彼らは怒り、殴る蹴るの暴行を加えたんです・・・。僕だけじゃありません、他の人にも同じような事が起きました。誰か1人働きに行かないと、当局者がその人を探しに家に行くんですよ。彼らは仕事に来なかった人を激しく殴りつけて、『なぜ仕事に来ないんだ』と言って罵るんです。」と話していた。

働いても賃金が貰えない現実を前に、家族と自分が経済的に生き残れるかどうかは、自分の非公式商売を行う能力にかかっている、と脱北者らは話す。内職、地元市場での非公式な物品販売、各地方間や中国との国境を越えた行商などの非公式商売を北朝鮮人が行うためには、まず、商売をする時間を確保するため、毎日義務付けられている労働から解放してもらう必要があり、そのため、地元当局者と企業管理者へ賄賂を支払わなければならない。ある女性脱北者はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「配給がなかったので、幾らかのお金を[自分が働いていた]会社に渡して、それで商売を始めました。労働していない人は強制労働収容所に送られる事になっているのよ・・・。だから私は、内緒で商売をしている間、会社に結構な金をいつも払っていたわ。」と話していた。

前出のアジア局長代理ロバートソンは「北朝鮮政府当局者は、国民に無償で働くことを強制した上に、食べる物も十分に与えない。その挙句に、国民が生き残るための手段を講じようとすると、そこから金銭をゆすり取っている。これはまさしく、搾取と虐待の上に構築された経済システムから成る略奪体制というほかない」と語る。

北朝鮮憲法第31条は、労働に従事する子どもの最低年齢を16歳と設定すると共に、児童労働を明確に禁止している。しかし親たちによれば、中学校の生徒は、午前中こそ勉強しているが、午後には通常、学校が細目まで組織した無報酬の労働に送られると話した。2011年に北朝鮮を脱北した元教師は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、「朝だけ授業をして、午後には・・・外へ仕事をしに11歳や12歳の生徒を連れていく教師を見ました。生徒の仕事の種類は、植林、道路補修、水泳プール建設作業への参加などでした・・・。生徒は午後1時まで授業を受けて、それから[そのような]重労働に耐えるのです」と話していた。

別の元学生はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「11歳から15歳の間、僕は殆ど毎日政府の農場で働かなくちゃならなかったんです。授業を午後1時に終えて、昼御飯を食べに家に飛んで帰らなきゃいけなかった。学校は生徒に食べ物をくれませんでしたからね。学校は、僕たちが農作業用の道具を持って、校庭で再集合するようにアナウンスしていました。学校は小さな子どもすら全員を働かせるんです。朝、先生は、その日の内にやらなきゃいけない仕事とそれに必要な道具について、生徒に指示するんです。それは僕の家にとっては何の得にもならないし、僕は家族のためにやらなきゃいけないことが沢山あったから、僕は嫌だった。でも政府は家族のために働くことを強制したんだ。僕は子どもの頃、いつも本当に疲れていた。」と話していた。

2009年に「北韓人権市民連合」(Citizen’s Alliance for North Korean Human Rights)が行った調査は、教師と学校責任者たちが、生徒たちに労働を強制している実態を明らかにした。生徒たちは、山間部からの転売用食材の収集、学校が使う材木の伐採、政府によるキャンペーンの一環だというリサイクル用の貴重な原材料の割当量に基づいた収集と供出、国営農場での農業労働など、様々な状況で労働を強制されている、という。生徒たちは中学生の年齢である11歳になると働き始めるが、北部のより貧しい地方では8歳か9歳ほどでも働きはじめることを求められている。

こうした調査報告は、国連子どもの権利委員会が2009年に公表した、「北朝鮮の子どもが学校教育の一環として、職業教育の目的を遥かに超えた、厳しい肉体労働に携わっているとみられる」という調査結果とも一致する。

「北朝鮮政府は、世界の人びとが注目するような、子どもたちのダンスやマスゲーム行進の壮大なショーを上演する一方、多くの子どもたちは、厳しい強制労働を課された上に、食料不足も重なって、苛酷な現実におかれている」と前出のロバートソンは語る。

強制労働の蔓延と、それに従わなかった場合の刑罰についての証言は、韓国統一研究院(以下KINU)の2009年の研究でも裏付けられている。難民からの報告を基にKINUは、北朝鮮当局が教化所(jip-kyul-so)と労働教養所(ro-dong-dan-ryeon-dae)を多数運営している事実を明らかにした。それらの施設には、様々ないわゆる「犯罪」に当たる行為を行った人びとが収容されている。その「犯罪」は多岐にわたり、例えば、予定された労働や訓練の欠席、無許可での旅行、旅行許可期間の超過(当局が、旅行者が韓国へ亡命することが無いと確信した場合にのみ中国への旅行も許可される)など様々だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、北朝鮮に国際労働機関(以下ILO)に加盟するよう求めた。ILOは政府に「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に従うよう義務付け、同宣言はILO加盟国に、強制労働と児童労働をなくし、結社の自由と団体交渉権を尊重するよう義務付ける。北朝鮮はILOに加盟していない世界で数少ない国の1つであり、国際的に認められているILOの基準を守っていない。

前出のロバートソンは「北朝鮮は、強制労働をなくす第一歩として、ILO加盟への抵抗をやめ、ILOに入るべきだ。子ども時代を、労苦と虐待ではなく、養育と勉学の時期にするため、国際基準を導入し、児童労働をなくす方向に舵を切るべきだ」と語る。