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ビルマ:デモに関する新法は不十分

法制度改革は国際人権基準を満たすべき

(ニューヨーク)ビルマで成立した平和的集会の権利に関する新法は、国際基準を満たしていない、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。テインセイン大統領は2011年12月2日に「平和的集会と平和的行進に関する法」に署名した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはビルマ国会に対し、違反への刑罰として懲役を科すなど、国際人権基準を満たさない同法上の条項を撤回するよう求めた。また内務省は、規則を起草するにあたり、国際機関と同法の厳格な規定の一部を緩和するための協議を行うべきである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは「ビルマで定められた集会に関する新法は、これまでのデモ禁止を撤回した。しかし依然として政府がビルマ国民の基本的権利に優越することを可能にしている」と指摘する。「最近のビルマの変化については歓迎する向きが多い。しかし、これまでは自由を全く与えなかったビルマ政府が、一部の自由を認めはじめたというだけのことで評価するのはおかしい。そうではなく、一連の法律が国際基準を確実に満たすよう強く働きかけ続けるべきだ。」

ビルマ政府は行進、示威行動のほか、5人以上が集まることを禁止する法律を長期にわたって実施してきた。これらの法によれば、平和的な抗議運動への参加者を逮捕、訴追、投獄することができる。新法では平和的集会に関する権利を表向きは認めているものの、権利を政府当局の過度に広範なコントロールと自由裁量に従属させている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国際法では、基本的権利の法的制限は、明確かつ詳細に特定されるとともに厳格な必要性原則と均衡原則に則るべきとされている。

ビルマの集会に関する新法は、デモを計画する者に対し、5日前までに群区警察署長の許可を求めるよう定めている。デモ許可は「公共の場所で1人以上が(……)自らの意見を表明するために行う」あらゆる集会の開催に求められる。当局は集会予定の48時間前までに申請に応答しなければならない。申請を却下する際に、当局は理由を説明する義務がある。

同法は、警察署長が申請を却下できるのは、その申請が「連邦の団結、法と秩序の普及、地域の平和、公安と道徳性」のいずれかに反するときに限ると定める。申請者側は中央か地元の警察当局に異議を申し立てることができる。行政への異議申立の手続きが最終審査とされており、裁判所に訴えることはできない。

許可なく集会を開催すると1年以下の刑が科されうる。たとえ集会が許可されても、集会法は様々な行為に関して6か月以下の刑罰を定めている。これに該当するのは、虚偽の情報を含む演説、国家と連邦を毀損する内容の発言、あるいは「恐怖や騒乱、交通の遮断、車両運行や国民の往来の妨害を引き起こす行為」などだ。これらの違反行為は曖昧で不明確な記述でしか規定されていない。

政府が提案した原案では、公開の集会でスローガンを唱えることが禁止されていた。国会は最終案を改正してスローガンを許可したが、許可されるのは事前に承認されたものに限られる。

「スローガンの内容を許可制にすることは、ビルマ政府が基本的人権を理解するにはまだまだ先が長いことを示している」と前出のアダムスは述べた。「平和的な抗議行動参加者は、警察官の気に入らない発言をしたからというだけの理由で投獄されるべきではない。」

ビルマには平和的なデモ参加者への弾圧の長い歴史がある。1988年の民主化デモは当局によって武力弾圧された。治安部隊は約2千人を殺害したと推定される。2007年8月には反体制派団体「88世代学生」グループに対し、また同9月には仏教僧侶が率いた平和的デモにも暴力的な弾圧が行われた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によれば、治安部隊による殺害が行われ、多数が逮捕された。抗議行動のリーダーの中には65年以上の判決を下された人もおり、2012年1月の政府の恩赦になるまで釈放されなかった。

2011年、警察は元首都ラングーン市内での複数のデモを強制的に解散させた。10月27日の小規模のデモでは、土地を持たない農民8人と依頼を受けた弁護士のポーピューが逮捕された。政府系企業による強制的な土地収用に抗議したことが、非合法集会の開催とされたためだ。ポーピュー弁護士は判決までの間保釈されている。同氏は9月にも、イラワディ・デルタで抗議行動を行った農民たちの弁護を行っている。当局はまた11月にバセインで、農民の抗議行動を撮影したとして、人権活動家のミンナインを逮捕し、身柄を短期間拘束した。容疑は非合法な物品を流通させたとして電子取引法違反とされた。

この集会法は関連規則の草案ができるまでは施行されない。ヒューマン・ライツ・ウォッチはビルマ内務省に対し、規則を起草するにあたり、関係国際機関と、同法の厳格な規定を緩和するための協議を行うことを求めた。たとえば、規則で、警察署長の許可基準や、行政不服手続内での裁量行使に関する指針を定めることができる。

規則では、集会法が集会や行進とともに、集会に関する憲法上の権利の享受を促進するためのものであることを明確にうたうべきであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。集会が「地域の平和と平穏」を乱す可能性があるということだけの理由で、許可申請を却下するべきではない。

規制は、客観的な基準により、国民を「恐怖にさせ」あるいは「妨害する」、「国家を毀損する」といった規定を明確に定義すべきだ。また刑事罰は暴力を用いたり、扇動したりする行為に限られるべきであり、演説で虚偽の情報を扱うとか、事前に許可を受けていないスローガンを唱えるような、表現・結社・集会に関する権利の平和的な行使に科せられるべきではない。

2011年3月に政権について以来、ビルマ新政権は二院制の国会で多くの法を提案した。これらの法律についてはこれまでに3回の会期で審議されている。この光景は長い間目にしなかったものだ。しかしながら、一部の法律の成立は謎に包まれている。法律の最終草案は国会外には発表されないし、審議時間も短い。

「一連の新法の試金石は、ビルマ国民が新法を現実に行使した場合に何が起こるか、だ」と前出のアジア局長アダムスは述べる。「ビルマ国民が基本的権利を行使できるようになって初めて、ビルマでの法制度改革を評価すべきである。」 

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