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イラン:大統領選挙後の抗議行動に対する弾圧から1年 深刻化する危機

イランの市民社会への圧力は強まる

(ニューヨーク) - 2009年大統領選挙への抗議運動と弾圧から1年になる現在、イラン政府は自国民への取締りを強化し、嫌がらせや投獄、暴力の行使を続けている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。2009年6月12日の大統領選1周年の2日前にあたる国連の人権理事会の審理で、イラン政府は自国の人権侵害への批判をはねつけた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがイラン国内の人権活動家などから得た情報によれば、国内の雰囲気は、電波やインターネットによって広く伝えられた1年前の大衆運動のイメージとはかけ離れている。街頭での抗議行動は一切影を潜め、反体制派はおおむね地下に潜伏している。治安部隊が国中の主要都市で大量に配備されているためだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは、「国際社会の関心がイランの核問題に集中するなかで、イラン政府は、国内のあらゆる反体制派を徹底的に弾圧し続けている」と、指摘する。「外国のメディアや人権団体とコンタクトを取っていたジャーナリストや弁護士、活動家たちは、電話盗聴やインターネットの通信監視への警戒から、コンタクトをとることに消極的になってきている。」

イラン司法権の報道発表によると、これまで250人が大統領選の抗議行動に関連した犯罪で有罪判決を受けた。長期刑を宣告されるケースも多い。裁判は形式的なものにすぎず、公安犯罪の自白が強要されている。このほか数百人が現在も投獄中で、弁護士や家族との接見も制限されている。1月には反体制派2人が処刑された。上訴裁判所は最近、大統領選後の抗議行動に参加したとして逮捕された人のうち、少なくとも6人の死刑判決を容認した。

弾圧対象は、選挙結果に抗議をしている人びとに留まらない。2009年6月以降、政府は少なくとも7人のクルド人反体制派を処刑。全員が「武力による体制破壊」(モハーレベ)というあいまいな構成要件の容疑で有罪とされた。現時点でクルド人反体制派10人以上に死刑判決が下されており、いつ執行されてもおかしくはない。さらにこの1年で、多数の野党議員や市民活動家のほか、抗議行動には参加していない反体制派も身柄を拘束された。釈放後に再度身柄を拘束されたケースもある。

ジャーナリストや人権活動家も弾圧の対象となっている。人権侵害行為に関する情報を集め、国内外に伝達する技術に長けているため、弾圧の対象とされていると見られる。NGOジャーナリスト保護委員会(表現の自由を監視する著名なNGO)によると、少なくとも37人のジャーナリストが投獄中。その他に19人が保釈金を納めて仮釈放状態にあるという。そのほかに、これよりもっと多くのジャーナリストや人権活動家が、この1年でイランを脱出し、隣国トルコで亡命生活を送らざるをえない状態となっている。

治安部隊はイラン国内の人権団体のメンバーたちに頻繁に嫌がらせを行うだけでなく、多くの場合、容疑の立件もないまま逮捕・拘束を続ける。弾圧の対象となっているイランの人権団体には、例えば、人権報告者委員会(Committee of Human Rights Reporters)、政治囚防衛学生委員会(Student Committee for the Defense of Political Prisoners)、人権擁護協会(Center for Defense of Human Rights)などだ。なお同協会の代表はノーベル平和賞受賞者シリン・エバディ(シーリーン・エバーディー)氏。多くの人権活動家たちは、大挙して押し寄せてくる多数の治安部隊や公安に逮捕され、「サイバー戦争」による政権転覆に関係したという容疑で訴追されている。

治安部隊はジャーナリストと人権活動家を弾圧の標的にするだけでなく、新しいメディアによるコミュニケーションを規制するため多正面作戦を行っている。一般のイラン人たちが、選挙後の出来事を、携帯電話や電子メール、ソーシャル・メディア・サイト(訳注:youtube、flickr、myspace、facebook、twitterなど)を使ってリアルタイムで伝えた。このためイラン国内の通信量が大幅に増大したのだが、政府はそこで用いられる通信網の入口と出口に注目した。人権活動家やメディアからの情報によれば、政府は通信監視やフィルタリング、妨害を行う高度技術にますます依存しており、イラン国内の携帯電話やインターネット、衛星通信については、国外と行うデータの送受信に大きな混乱が生じるまでになっている。当局はあるウェブサイトやサービスへのアクセスがうまく遮断できない場合には、インターネットや情報通信用の回線をそっくり遮断するか、速度を低下させている。

これまでも、人権団体やイラン市民社会そして諸外国政府が、イランにおけるデモ参加者や活動家の殺害や逮捕、虐待、恣意的拘禁について、透明で包括的な調査を行うようイラン政府に何度も繰り返し要求してきた。だがイランの裁判所はこれらの人権侵害行為について、政府高官を一人として有罪としていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは木曜日にジュネーブで発表したステートメントで、(日本を含む)国連人権理事会の加盟国に対し、イラン政府による市民社会の弾圧についてイラン政府の責任を問うとともに、国連人権理事会で国連加盟国が今年2月にイランの人権状況を審査した際に採択した勧告へのイラン政府の対応が不十分であることに対し、イラン政府の責任を問うよう求めた。

「6 月10日にイラン政府は国連人権理事会の審理に出席したが、自国民の人権を尊重せよとする国際社会の勧告の受け入れを拒否した」と前出のストークは述べる。「イラン市民社会への弾圧は強まっている。今こそ国際社会は共同歩調を取り、イラン政府から独立した立場で政府に批判の声をあげているイランの人びとを沈黙させるイラン政府の問題行動に対し、抗議の声をあげなくてはならない。」

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