戦闘から逃れようとするルクウェティ近郊の町キランボの女性たち。この女性たちは、コンゴ軍兵士により強制的に町に連れ戻され、持ち物も奪われた(2009年10月)。

© 2009 Franz Wild

 (ニューヨーク)-アフリカのコンゴ東部で、一般市民たちが、コンゴ政府軍と反政府武装勢力の双方から虐殺されている。国連安保理は、民間人を残虐行為から守るための緊急行動をとるとともに、国連平和維持部隊が、コンゴ政府軍による残虐な人権侵害に加担することのないようにしなくてはならない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日発表したレポートでこのように述べた。

2009年1月以降、コンゴ軍は、2度にわたるルワンダ解放民主軍(FDLR、ルワンダ人フツ族民兵からなる)に対する軍事作戦を展開。183ページの報告書「『処罰』の名の下で:コンゴ東部での一般市民の虐殺」は、軍事作戦が展開されていた今年1月から9月までの間に、少なくとも民間人1,400名が故意に殺害された実態を詳細に取りまとめている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今年だけで23回の事実調査ミッションをコンゴに送り、600名を超える被害者・目撃者・家族に聞き取り調査を行っており、この報告書はそうした調査を基に作成された。

「コンゴ東部では、紛争の全当事者が殺害とレイプを繰り広げている。国連安保理が、コンゴの民間人を保護するために、新たなアプローチをとる必要があることは明白だ」とヒューマン・ライツ・ウォッチの上級調査員アニカ・ヴァン・ウッデンバーグは語った。「国連安保理は、本腰を入れた民間人保護をはじめるために、まずは、コンゴに専門家チームを派遣するべきである。」

コンゴ政府軍も反政府勢力FDLRも、しばしば一般の民間人を襲撃。敵側の人間だと容疑をかけて、人間をナタで切り刻んで殺す「刑罰」をしばしば科している。また、コンゴ政府軍側も、反政府勢力FDLR側も、逃げようとした民間人に発砲。あるいは、家もろともに焼き殺すことも多い。目撃者たちによれば、犠牲者のなかには、互いに縛り付けられ、その後ノドを「ニワトリのように切り裂かれた」とひとたちもいたという。犠牲者の大半は女性や子ども、高齢者だった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、コンゴ東部の民間人を保護するためのよりよい戦略をたてるために、まず民間人保護専門家チームを編成し派遣することを勧告・提案。コンゴ担当の国連事務総長特別代理であるアラン・ドス(Alan Doss)氏は、12月16日、安全保障理事会で演説を行う予定である。また、国連安保理は、12月21日、国連コンゴ平和維持ミッション(MONUC)のマンデート更新についての投票を行なう予定である。

国際人道法違反の残虐行為を行なっているコンゴ政府軍の作戦を、国連平和維持部隊も支援してきた。そこで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、軍事作戦支援の際に国際人道法違反が起きないように確保した支援実施と、その事後評価のための手続きと手段がしっかり導入されるまで、国連平和維持部隊は進行中の軍事作戦に対する支援を直ちに停止することを強く求めた。そして、残虐行為を行なったことがわかっている全ての指揮官を、作戦上の責任ある地位から解任することも求めた。また、これらの手続と条件は公開されるべきである。

国連の調査によると、2009年に入ってからの9ヶ月の間に、コンゴ東部の北キブ及び南キブ全域で女性と少女に対する性的暴力事件が7,500件以上発生。この数字は、昨年1年間に明らかになった件数に迫る勢いで、そのうえ、明らかになった7,500件もおそらくは氷山の一角にすぎないと考えられる。被害にあった女性や少女のほとんどは、集団強姦されている。そして、被害者の一部は、レイプの際の損傷がもとで死亡している。また、コンゴ政府軍も反政府勢力FDLRも、多くの女性や少女を性奴隷として拘束。その拘束期間は、数週間から、長いときには数ヶ月あるいは数年にも上る。性奴隷とされた女性たちは、繰り返しレイプされるだけでなく、中には手足を切断されたり、ナタで切り殺されたり、性器を銃で撃たれて殺された女性たちも多い。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査・記録したレイプ事件で最も年少の被害者は、9歳の少女。彼女は、1月27日、マシシ(Masisi)準州のングウィロ村で、母親と一緒に戦闘から逃げる途中、FDLRの兵士にレイプされた。 FDLRは最初に母親をレイプ。性器に大きな棒を突っ込み、それが原因で母親は死亡。母親をみて泣き叫ぶ幼い少女を、FDLRはレイプしたのだ。

「たくさんの国連安保理メンバー国の大使たちがコンゴを訪れ、大規模な性的暴力に対する怒りを表明してきた」とヴァン・ウッデンバーグは語った。「しかし、コンゴ東部では、レイプは減るどころか、むしろ増えつづけている。大使たちは、怒るだけではなく、女性と少女を守るための、大胆かつ効果的な行動に移らなくてはならない。」

今年1月、コンゴ政府とウガンダ政府は、FDLRに対する軍事作戦を共同して展開。このウモジャ・ウェツ(Umoja Wetu)軍事作戦は、5週間に及んだ。3月には、引き続き、今度は国連平和維持部隊の支援も受けて第2次軍事作戦(キマⅡ作戦とよばれている)を開始し、この軍事作戦は今も継続中である。

コンゴ政府は、軍事作戦の目的は、一触即発の不安定な地域に平和と安全をもたらすことと説明している。しかし、地域に平和も安全ももたらされてはいない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、軍事作戦で、FDLR、コンゴ政府軍、そして時にはルワンダ政府軍までも、民間人に対して身の毛もよだつような残虐行為を行っている実態を調査して取りまとめた。ヒューマン・ライツ・ウォッチのこの調査は、FDLR幹部指揮官及びコンゴ政府軍将校の一部が、極めて残虐な人権侵害の責任と関連していることを明らかにした。こうした人権侵害の多くは戦争犯罪に該当する。そして、人道に対する罪にも該当する可能性もある。

国連平和維持部隊が、この複雑かつ困難な場所で、民間人保護のため、重要な活動を担ってきたことは確かである。しかし、平和維持部隊は、コンゴ政府軍と共同軍事作戦を展開しており、コンゴ軍の戦闘に対し、かなりの支援を提供している。その結果、平和維持部隊たちまでもが人権侵害に加担している容疑が浮上しているのみならず、民間人保護という国連平和維持部隊の本来の目的までも台無しになっている。

コンゴ東部の民間人を虐殺やレイプなどの残虐行為から保護するためのニーズと課題について調査し、具体的で明確な提言を行う専門家チームの設立が急務である。この専門家チームは、民間人への襲撃が起きている原因と実態を調査分析するとともに、民間人保護というマンデートを実行するために国連平和維持部隊が行なってきた措置も調査分析し、民間人保護のための活動を何倍も強化するために必要な施策を明らかにすべきである。

今年11月11日、国連安保理は第1894決議を採択。この決議には、改めて、民間人保護に向けた安保理の決意が表明されている。決議文には「国連安保理がとるべき適切な手段を検討するなどして・・・武力紛争で、民間人が標的とされている現状に対応する」と表明されている。コンゴ東部の悲惨な現状を変えられるかどうかが、安保理メンバー国が示した決意の試金石である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「安保理は、コンゴの平和維持部隊に対し、明確かつ具体的な指示を出す必要がある」とヴァン・ウッデンバーグは語った。「専門家チームを派遣し、平和維持部隊がコンゴ政府軍と共同作戦をする際の条件を明確にすることは、コンゴ政府軍による人権侵害を止めさせるためにも、そして、国連平和維持部隊が今後は残虐行為に関与しないようにするためにも、極めて重要だ。」

報告書からの証言の抜粋:

20091月下旬のブシェケ村への襲撃の際、FDLRに拉致された女性の話:

「奴らは[FDLR]・・・ナタで夫を殺し、私をレイプしたのよ。父も殺したし、母と妹をレイプしてから、みんなナタで殺した。あの晩、村の女性と女の子がもう10人レイプされてナタで殺されたわ。私はさらわれて奴らのキャンプに連れて行かれ、ジーン・クラウド(Jean Claude)の「妻」にされたの。6ヵ月後にやっとのことで逃げ出せた・・・それまでアイツは毎日私をレイプしたのよ。FDLRは、コンゴ人フツ族の兄弟なのに、なんで私たちがFARDC(コンゴ政府軍)を歓迎するのかって言ってたわ。私たちを痛めつけてるのはそのせいなんですって。」

反政府武装勢力FDLRによって、20092月に25歳の息子を殺され、その後暴行されたニャカバサ(Nyakabasa)村の女性:

「私は外に走って逃げたわ。でも、FDLRの兵士につかまってしまった。そして、なたで至るところを切りつけられたの。私は死にそうになった。頭も腕も、切られた。首も切られそうになったけど、私はなんとか自分の腕でふせいだの。...本当にたくさんの兵士がいたわ。家も結構燃やされて、たくさんの人が殺されたわ。...彼らは、私が死んだと思ったのね。それで、私をおいて去っていたんです。」

2009510日のブスルンギ(Busurungi)でのFDLRによる大虐殺の目撃者の話:

「FDLRが来て、村を取り囲んで、虐殺をはじめた。逃げようとした人たちは捕らえられた。女性はみんな、小さな女の子も、強姦されました。それから、FDLRの兵士たちは、家を燃やし始めたんです。家から逃げようとした人たちのなかには、FDLRにつかまって、燃えている家に放り込まれました。小さな子どもたちもです。翌朝ブスルンギに戻ったところ、首のない死体やまるこげの死体、強姦された死体などがちらばっていました。...妊娠していた2人の女性の死体もありました。FDLRは妊婦たちの腹を割いて、胎児をとりだしてたんです。」

コンゴ軍兵士とルワンダ軍兵士による20092月のンドルモ(Ndorumo)大虐殺の目撃者の証言:

「兵士たちが、学校に到着して、「住民たちに会いたい」と言いだしました・・・一部の村人が教室に集まると、兵士たちは、住民たちを虐殺しはじめたんです。兵士たちは、村人たちがFDLR側に加担している、だから処罰してるんだ、と言ったんです。でも、そのとき、FDLRは村にいもしませんでした。」

コンゴ政府軍が2009427日にシャリオ(Shalio)の丘を攻撃した際、家族6人を失ったルワンダのフツ族難民の証言:

「家族は、私の目の前で、木の棒で殴り殺されてしまいました。それから、兵士のうちの4人が、私を連行して強姦しました。彼らは、私はあるFDLR兵士の妻になった、というんです。お前を生かすも殺すも、なんとでもできる、って。」

コンゴ政府軍が20098月にンダルモ(Ndorumo)を攻撃した際、父と3人の子どもを殺された女性の証言:

「ツチ族の兵士は、私たちを皆殺しにしたいんです。私たちを守ってくれる兵士たちがいないとき、攻撃をしかけてきます。攻撃しながら、言うんです。「おまえたちはこの土地から出て行け、俺たちの土地にする」って。牛をつれてくる兵士たちもいました。私たちを殺したあと、村で牛を放牧するためにね。」