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コンゴ東部:軍の残虐行為が急増

国連平和維持部隊が、コンゴ軍の残虐な軍事作戦を支援

(ニューヨーク)-コンゴ軍は、この3ヶ月間にコンゴ東部で行なわれた軍事作戦で、数百名の民間人を残虐に殺害したほか、手当たり次第にレイプを行った。国連の平和維持部隊も、この軍事作戦を支援している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、コンゴ民主共和国に展開する国連平和維持部隊(国連コンゴ民主共和国ミッション、MONUC)に、直ちに軍事支援を停止するよう求めた。さもなくば、国連自体が、今後の残虐行為の共犯の容疑をかけられる可能性もでてくる。

2009年10月中にコンゴ東部で行った2回の事実調査ミッションで、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、北キブ州の人里離れたNyabiondo町とNyabiondoの町の間で、3月以来、少なくとも270名の民間人がコンゴ軍兵士により殺害された実態を調査して取りまとめた。多くの人々は、8月にMashango村とNdorumaの村で起きた虐殺で殺害された。犠牲者のほとんどは、女性・子ども・高齢者だった。手足を切断されり、ナタで切り殺されたり、棒で殴り殺されたり、逃げようとした際に撃ち殺されたりした。

「コンゴ兵の一部は、本来コンゴ軍が守るべき一般国民を悪意を持ってターゲットにし、戦争犯罪を犯している」ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級調査員アニカ・ヴァン・ウーデンベルグは語った。「国連ミッションMONUCは、こうした人権を無視した残虐な軍事作戦を支援し続けており、国連部隊自体が、戦争法違反の共犯とされる可能性がある。」

国連平和維持ミッションであるMONUCは、3月2日に始まったキミアⅡ作戦で、コンゴ軍を支援。作戦の目的は、ルワンダのフツ系武装勢力であるルワンダ解放民主軍(FDLR)を、強制的に武装解除することにある。武装勢力FDLR の指導層の一部は、1994年のルワンダ虐殺を行なっていた。MONUCは、コンゴ軍に、軍用火器、輸送、配給、給油など、作戦上も兵站上も、かなりの軍事支援をしている。

虐殺の1つは今年8月始め、国連の基地があるNyabiondoから15kmほど離れたMashangoの丘で起きた。ヒューマン・ライツ・ウォッチが聞き取り調査をした目撃者たちによると、コンゴ兵が、数キロメートルの距離の中に点々とあった5つの小さな村落(その1つだけに反政府勢力がいた)を攻撃。少なくとも81名の民間人が殺害された。コンゴ軍兵士たちは、戦闘員と民間人の区別を全くせず、至近距離から発砲。もしくは、ナタで切り刻んで殺害した、という。

Katandaという小村落では、コンゴ軍兵士たちが若い男4名をバラバラにして殺害。腕を切断し、頭と足を胴体から20m離れた所へ放り投げた。兵士たちは次に、12歳の少女など女性と少女16名をレイプし、その後、うち4名を殺害した。

8月15日頃、コンゴ軍兵士は、Nyabiondo のNdoruma村で、別の民間人たちを虐殺。その日の早朝、武装勢力FDLRと手を結む地元民兵の攻撃に失敗したコンゴ軍兵士たちは、民間人少なくとも50名にFDLRに協力していると疑いをかけて殺害した、と目撃者たちは語った。ある女性は、兵士に夫を殺害され、次に家に火を放たれ、中にいた小さな子ども3名を焼き殺されるのを目の当たりにした。

コンゴ軍兵士たちは、NyabiondoからLwiboに続く10kmにわたる道路でも、民間人を攻撃。9月28日と29日、道沿いにあるKinyumba村に駐屯する兵士たちは、市場に向かう途中の女性と少女の2グループ(合計20名くらい)を誘拐しギャングレイプした。武装勢力FDLRと手を組む地元民兵が同日政府軍を攻撃したものの、MONUCの攻撃用ヘリコプターに支援を要請した政府軍兵士に撃退された。女性と少女の一部は何とか逃げだせたが、コンゴ軍兵士は、逃げようとした少なくとも5名を殺害した。

10月29日、MONUCは、コンゴ軍がNyabiondoの北部で、更なる軍事作戦を開始したと発表。民間人がさらに襲撃されることに懸念を表明した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2009年1月から10月までの間に南キブ州・北キブ州で21回の事実調査ミッションを行なった。こうした調査の結果、キミアⅡ作戦が始まった3月から9月までを通して、コンゴ軍兵士が、民間人少なくとも505名を故意に殺害したことを明らかにした。その他にも、コンゴ軍兵士は、同盟関係にあるルワンダ軍兵士とともに、1月下旬から2月にかけての5週間にわたって行なわれたウモジャ・ウェツ(Umoja Wetu)共同軍事作戦で、民間人198名を殺害した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、武装勢力FDLRが、コンゴ政府軍による攻撃への報復として、コンゴの民間人を意図的に攻撃している実態も取りまとめてきた。1月下旬から9月までの間に、FDLRは、民間人少なくとも630名を故意に殺害。犠牲者の多くは、南キブ州と北キブ州の州境にあるジラロ(Ziralo)、ウフマンドゥ(Ufumandu)、ワロアルワンダ(Waloaluanda)の地域の住民だった。

「FDLRが戦争犯罪を行なったからといって、コンゴ政府軍が行なった残虐行為が正当化されることは絶対にない」とヴァン・ウーデンベルグは語った。「このような人権を無視した残虐な軍事作戦における国連平和維持部隊の役割について、国連は厳しく問うべきである。」

国連当局は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対して、国連が作戦に参加することで民間人被害を最小限に食い止められるとの考えから、キミアⅡに参加していると繰り返し表明してきた。国連安全保障理事会の1856決議が定めるMONUCの権限(マンデート)は、FDLRその他武装集団に対するコンゴ軍の軍事作戦支援を認めている。この作戦開始以来、MONUCが民間人を保護するための活発な活動を行なった実績もあり、そうした活動が命を救ってきたのは明白である。

平和維持ミッションのマンデートは、民間人保護を最優先することを義務付けている。2009年1月13日に続いて4月1日と10月12日に国連法務部(UN Office of Legal Affairs)がヒューマン・ライツ・ウォッチに提示した法解釈によれば、MONUCは、コンゴ軍に対する軍事作戦支援を合意する前に、当該軍事作戦が、国際人道法に沿って計画され実行されることを確認する義務がある。軍事支援の対象たるコンゴ軍が、国際人道法に反した行動を取ると疑われる相当な根拠がある場合、MONUCは作戦に参加してはならないのである。

コンゴ軍が重大な人権侵害を行っているという信頼性の高い情報があり、かつ、人権侵害を止めさせる働きかけが失敗した場合、MONUCはキミアⅡ作戦への参加を取りやめる義務があると、この国連の法解釈は明らかにしている。

今年5月、ヒューマン・ライツ・ウォッチはキミアⅡ作戦に関与するコンゴ軍兵士が戦争犯罪を行なっているという詳細な情報を公表。2009年の国連の調査も、コンゴ軍兵士が日常的に犯罪を行っていると明らかにしていた。2009年半ば、MONUCのスタッフたちは、重大な人権侵害を行った経歴を有しながら、キミアⅡ作戦に参加していると推測されるコンゴ軍将校15名の秘密リストを作成し、ミッションの指導者らに提出した。

国連平和維持軍当局は、5月、6月、そして7月にも、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、キミアⅡ作戦に参加しているコンゴ軍兵士が行っている人権侵害についての懸念について、コンゴ政府とプライベートに議論していると述べていた。9月、平和維持ミッションは、遅ればせながら、キミアⅡ作戦の支援条件(人権の遵守を基礎とする)を定めるポリシーの素案を作成。この素案はコンゴ政府のコメント待ちの状態である。10月30日、国連MONUCとコンゴ軍は、兵士による人権侵害を調査するとともに、責任を負う指揮官を罷免する目的で、北キブ州の共同委員会を設立。同様の委員会が、南キブ州でも設立された。

11月1日、国連PKO局の責任者であるアラン・レロイ(Alain Le Roy)氏は、コンゴ訪問の際、MONUCはNyabiondoのコンゴ軍第213旅団への軍事支援を止めると公表。レロイ氏によれば、国連MONUC自らの調査の結果、コンゴ軍兵士がルクウェティ(Lukweti)で少なくとも62名の民間人を殺害したことが明らかになった、という。支援停止がどのように実行されるのかは、いまだ明らかにされていない。

「国連のPKO局関係者は、コンゴ政府軍兵士が戦争犯罪を行っていることを、知っていた。それにもかかわらず、キミアⅡ作戦開始から8ヶ月目に入る今になっても、責任を負うべき部隊の1つに対する支援停止を発表したに過ぎない」とヴァン・ウーデンベルグは語った。「コンゴ軍兵士が人権を無視した残虐行為を行なっているのはNyabiondoだけではない。残虐行為の責任者たる指揮官たちが作戦からはずされ、民間人の住民たちを保護する効果的な手段が講じられるまで、MONUCは直ちにキミアⅡ作戦全てへの軍事支援を取りやめるべきである。」

コンゴ政府は、残虐行為を行なったことで悪名高い人物たちを、今も政府軍の要職に遇している。ボスコ・ンタガンダ(Bosco Ntaganda)には、国際刑事裁判所(ICC)から戦争犯罪の罪で逮捕状が発行されている。しかし、彼は、今もコンゴ軍の将軍のままであり、キミアⅡ作戦で重要な役割を担っている。こうした事実は、国連MONUCがコンゴ軍の作戦に支援を行なうに際し、さらなる問題を突きつける。

1月から行なわれている作戦(キミアⅡ作戦を含む)の結果、FDLR戦闘員推計6,000名の戦力から1,243名を武装解除することに成功した。しかし、FDLRは徴兵を続けており、民間人を襲撃する能力は全く損なわれていない。国連MONUCには、FDLRを武装解除し、民間人保護を最優先にする総合的な戦略が必要である。国連MONUCのマンデート(権限)には、人権を無視するコンゴ軍とは別個に、FDLRを武装解するため国連だけで武力を行使することも含まれている。4月1日に国連法務部から出された法解釈には、このオプションも明確にされている。

「国連MONUCは、自らのマンデート(権限)にも国連法務部の助言も無視して、キミアⅡ作戦に参加し続けている。こうした事態の下では、国連平和維持部隊も人権侵害の共犯となる」とヴァン・ウーデンベルグは語った。「武装勢力FDLRを武装解除するに際し、これ以上、コンゴ軍兵士によるコンゴ東部の人々への人権侵害を引き起こすことのないような方法を早急に検討しなくてはならない。」

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