Internally displaced people (IDPs) stand near temporary structures in the Arunachalam camp at Manik Farm in northern Sri Lanka on August 19, 2009.

© 2009 Reuters

(ニューヨーク) 先日、スリランカ軍兵士による捕虜の即決処刑を映したビデオがメディアに提供された。この映像は、スリランカにおける内戦のなかで、両陣営によって犯されたと考えられる戦争犯罪に対する国際事実調査委員会の立ち上げの必要性を明らかにしている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

このビデオには、裸で目隠しをされ、縛られた状態で地面に座らされている2人の男性に、至近距離から突撃銃で発砲しているスリランカの軍服を着た男の様子が映っている。更に、布をかけられた1人と、裸のままの8人の体が近くに映っている。シンハラ人もタミル人も加盟している亡命スリランカ人組織Journalists for Democracy in Sri Lanka によると、このビデオは2009年1月に兵士によって携帯電話で撮影された。ヒューマン・ライツ・ウォッチはビデオの信憑性の裏付けをとることができなかったが、いずれの陣営にも属さない独立した立場の専門家によると、信憑性を揺るがす理由は見当たらないという。捕虜の即決処刑は、ジュネーブ諸条約(1949年)の第3条違反であり、戦争犯罪である。

「ラジャパクサ大統領は、タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)に対し、クリーンな戦争を行なったと主張している。しかし、血を流し、目隠しをされて泥まみれになって虐待される兵士たちの映像は、大統領の主張と矛盾している。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの国連アドボカシーディレクターのスティーヴ・クロショーは述べた。「国際調査で、この映像についての調査はもちろん、過去1年の戦闘で犯された他の戦争犯罪についても、真相を究明する必要がある。」

25年間に及ぶスリランカ政府軍と分離独立派のタミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)の内戦は、今年5月にLTTEの敗北によって終結したが、その間、ヒューマン・ライツ・ウォッチは両陣営による多数の戦時国際法(戦争法)違反があったことを明らかにしてきた。メディアや人権組織などの独立した監視機関が戦闘地域の周辺で活動することが禁止されていたため、戦闘の実態や両紛争当事者が犯したと考えられる戦争法違反についての情報は限られてきた。

政府が調査を開始するまもなく、スリランカ軍の報道官は、ビデオを「でっち上げ」であると発表。

この内戦では、両陣営によって数多くの人権侵害が犯された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカ政府が公平な調査を怠るとともに、戦争責任を負うものたちの訴追を怠ってきた状況を長い間批判してきた。深刻な人権侵害は現在も続いており、調査されていない強制失踪や不当な殺害の件数は数万にのぼるが、訴追にいたった件は、ごく少数である。大統領調査諮問委員会など、スリランカ国内の臨時メカニズムによる違反の調査からは、新たな情報や起訴はこれまでほとんど生まれなかった。

スリランカ内戦におけるすべての当事者による戦争法違反の有無を調査するとともに責任者の訴追を勧告できるよう、独立した国際調査委員会を設置すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連事務総長やその他の国連機関に対し、独立した国際調査委員会の設置求めた。5月23日、ラジャパクサ大統領と潘基文(Ban Ki-moon)国連事務総長は、スリランカで共同声明を出した。そこでスリランカ政府は、国際人権法及び国際人道法の違反に対する法的責任を明らかにし有責者の法的責任を追及するプロセスの必要性について、「措置を講ずる」と述べた。

今年7月のTime誌のインタビューにおいて、ラジャパクサ大統領は「(戦争中)人権侵害はなかった。民間人の犠牲者もいなかった。」などと述べた。

「調査の実施を3ヵ月前に国連事務総長に約束したのに、ラジャパクサ大統領はまったく何もしていない。」と、クロショーは述べた。「潘基文事務総長は、スリランカ国内で対処するとの大統領の約束に頼るのはもうやめるべきだ。スリランカの悲惨な戦争の犠牲者たちが法の正義を見いだすためには、国際委員会が必要であることを、潘基文事務総長は明らかにしなければならない。」