(エルサレム) - 「イスラエルによるガザ地区での地上作戦が進行中である。人口の密集する都市部で戦闘が行なわれるとみられる中、イスラエル側もパレスチナ側も、民間人の犠牲を避けるため行動をとらなくてはならない」とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。両陣営とも、戦争法を遵守し、民間人の犠牲を避けるためにすべての実行可能な措置をとり、人道支援要員や医療要員のアクセスを容易にするなどの戦争法上の義務を守らなくてはならない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これまでも、イスラエル軍(IDF)によるガザ地区及びヨルダン川西岸地区での地上作戦の実情を調査し、イスラエル軍が非合法な殺害を行った証拠を明らかにしてきた。一方、ハマスその他のパレスチナ武装グループも、人口密集地域からロケット弾を発射するなどの軍事作戦を行って、民間人を重大な危険にさらしてきた。

「イスラエル軍によるガザ地区での地上作戦は、人口密集地域での激しい戦闘を意味する。民間人への脅威は重大だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局局長代理ジョー・ストークは述べた。「イスラエル軍もハマスも、戦闘による民間人への影響を最小限にするため、具体的な措置を講じなければならない。さもなくば、民間人に多大な犠牲が出る。」

2008年2月27日から3月3日にかけて行われたイスラエル軍によるガザ地区での地上作戦では、107名のパレスチナ人が殺害されたが、その半数以上は民間人だった。また、200名以上が負傷した。イスラエル軍兵士も2名死亡している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この軍事作戦について詳細な現地調査を行ったが、その結果、イスラエル軍が、重大な戦争法違反を犯したことが明らかになっている。たとえば、救急車で治療を受けていた男性を殺害したり、ロバが引く荷車に乗っていた2名の民間人を射殺したり、イスラエル軍に拘束中の男性2名を銃撃して負傷させる、などの事件をイスラエル兵が引き起こした。イスラエル兵が戦車から非武装の民間人に発砲したケースも2件ある。これらの事件は全て、イスラエル軍の支配が確立した地域で発生したものである。パレスチナの医療関係者や救急車の運転手たちも、民間人、戦闘員を問わず負傷者や死者を処置するにあたり、様々な制限を受けた。発砲事件も起き、医療関係者1名が殺害された。

その他、2008年2月から3月にかけて、ハマスやその他のパレスチナ武装グループは、人口密集地域からロケット弾や迫撃砲を発射したり、民間の建物に武器を貯蔵するなどして、民間人を危険にさらした。こうした行為も、戦争法に違反する。

過去の戦闘では、イスラエル軍もハマスも、民間人を戦闘地域から退去させるために十分な措置をとらず、民間人を不必要な危険にさらした、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。あるイスラエル軍上級法律顧問は、先日、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、イスラエル軍が展開中の家屋にパレスチナの民間人を拘束すること(すると、民間人はパレスチナ側からの攻撃の対象となってしまう)は、今もイスラエル軍の通常オペレーションのままだ、と述べた。

過去、イスラエル軍が地上作戦で行った違法行為はもっとある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ヨルダン川西岸地区のジェニン難民キャンプに対してイスラエル軍2002年4月に行った地上作戦についても現地調査を行ったが、殺害された52名のパレスチナ人のうち少なくとも22名が民間人で、中にはイスラエル軍が非合法又は故意に殺害したと見られる民間人も複数いた。(https://www.hrw.org/legacy/reports/2002/israel3/israel0502.pdf)イスラエル軍は、装甲車両の通行を確保するため、装甲ブルドーザーを使用して住民の家を取り壊したが、中には、考えられうる軍事目的をはるかに超えた破壊活動を行ったこともあった。また、イスラエル軍は、医療関係者と医療用車両がジェニン難民キャンプに入る事を11日間にわたり阻止。イスラエル軍兵士は、救急車に繰り返し発砲した。

ジェニン難民キャンプなどでの地上作戦で、イスラエル軍兵士は、家宅捜索の最中、民間人を(時には銃を突きつけつつ)イスラエル軍に同行させ、ドアを開けさせたり、その他の危険な行為をさせたことも多々あった。こうした行為も戦争法に違反するもので、2005年、イスラエル最高裁判所もこうした行為を禁止する判決を下している。

過去の戦争法違反行為の責任追及がされていないことに問題の核心がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。イスラエル軍は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、2008年3月のガザ地区での地上作戦(通称「暖かい冬作戦」)でおきた殺害事件のうち違法の疑いがかけられているものについても、一切の捜査を行っていないことを明らかにした。イスラエル軍兵士に対し被害届が出された3件の窃盗事件については捜査を行ったにもかかわらず、である。同じく、ハマスも、戦闘員らが計画的かつ違法に民間人地域に向けてロケット弾を撃ち込んだり、民間人地域からロケット弾を発射したりしているにもかかわらず、何らの責任追及もしていない。

「イスラエル軍もハマスも、重大な違反を犯した兵士らを処罰せずに野放しにすることで、ガザ地区で今戦っている兵士たちに、今後もこうした戦争法違反は黙認されるだろうという戦慄すべきメッセージを送っていることになる」と、ストークは述べた。

この一週間の戦闘で400名を超えるパレスチナ人が死亡した。国連によると、その約1/4が民間人である。同期間に、3名のイスラエル民間人も、パレスチナから発射されたロケット弾の犠牲になった。

民間人の巻き添えや犠牲を最小限に抑えるため、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イスラエル軍、そして、ハマスその他のパレスチナ武装グループに対し、ガザ地区で今後地上戦が展開される場合に、以下の勧告を実行するよう強く求めた。

イスラエル軍に対して:

● 軍事作戦において、民間人住民に危害を加えないために、常時、戦争法を遵守するよう配慮すること。

● 民間人に対する故意の攻撃、無差別攻撃など、戦争法上禁止されている行為を行わないよう命じ、かつ、民間人と戦闘員を常時区別するよう命じる明確な交戦規定を発すること。

●  予期される具体的かつ直接的な軍事的利益と比較して、民間人や民間施設に過度の危害を引き起こすことが予測される攻撃は禁止されるというルールを遵守すること。

●  医療関係者及び救急車の救命のための自由な活動を確保し、負傷した人びとが治療を受けるために自由に移動できるよう確保すること。安全確保のために真に必要な限りでとられる移動制限措置も、一時的なものでなくてはならず、かつ、解除可能かどうか常時検討し、どうしても必要な範囲に限られなければならない。

●  民間人を「人間の盾」として使うなど、軍事作戦を容易にするために民間人を強制的に利用しないこと。パレスチナの民間人に対し、イスラエル軍が軍事的に占拠した家や建物の中に残るよう強制しないこと。

● 民間人住民が、十分な食料、医療、その他必要不可欠な人道的物資とサービスの供給を受けられるよう確保するために必要なすべての措置をとること。

● 群衆をコントロールしなければならない事態に対処する兵士たちに、非致死的な武器を供給すること。

● ジャーナリスト及び人道援助機関にガザ地区への立ち入りを認めること。安全確保のために真に必要な限りでとられる立入り制限や移動制限の措置も、一時的なものでなくてはならず、かつ、解除可能かどうか常時検討し、どうしても必要な範囲に限られなければならない。

ハマスその他のパレスチナ武装グループに対して:

● 軍事作戦において、民間人住民に危害を加えないために、常時、戦争法を遵守するよう配慮すること。

● イスラエル人居住地区に対するすべての計画的又は無差別なロケット弾攻撃を止めること。

● 支配地域の住民たちが攻撃の巻き添えとなるのを避けるため、すべての実行可能な予防措置をとること。具体的には、人口密集地域の中もしくは近くから軍事作戦を実施したり、そうした地域に軍事目標を設置しないこと、そして、軍事目標の周辺からできる限り民間人を退去させる措置を取ることなど。

●  戦闘員その他の軍事目標への攻撃を避けるため、または、軍事作戦を利する又は妨害するため、民間人を「人間の盾」として使用しないこと。