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バングラデシュ:殺害と拷問の否認やめよ

人権侵害への対処と治安部隊の責任追及が必須

(ニューヨーク)-バングラデシュ暫定政権は、政権の残り短い中で、現在発生している人権侵害を「ない」と否定するのをやめ、厳しく対処すべきであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、同政府に宛てた書簡で本日述べた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国家治安部隊により拷問と超法規的処刑(裁判手続きを踏まないままの処刑)が行われているとの報告が続いていること、及び政府が人権侵害を行う者の責任を追及しないことを深く懸念している。

2008年8月8日、バングラデシュ政府は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ヒューマン・ライツ・ウォッチのワールド・レポート2008に対する内務省作成の3ページの返答を送付。同省は、バングラデシュの最重要軍情報機関である軍事情報総局(Directorate General of Forces Intelligence (DGFI))が拷問を行っているという疑惑を全面否定し、精鋭法執行機関である緊急行動部隊(Rapid Action Battalion (RAB))は超法規的処刑は行っておらず、正当防衛及び政府資産の防御のために武装した犯罪者を殺害しただけである、と主張した。  
 
「バングラデシュ政府は、治安部隊が被拘束者を殺害したり拷問したりしたことを十分承知している」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「政府が国民を守るために行動せず、むしろ知らぬ振りを続けているのは、バングラデシュにとって悲劇だ。」  
 
11月18日に議会選挙が予定されている中、この問題をどうやって解決するかについて、諸政党も検討を始めることが極めて重要だと、 ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチの報告書は、ジャーナリストで人権活動家のタスニーム・ハリルが、2007年3月、DGFIに恣意的に拘束・拷問された事件の詳細を明らかにした。同報告書の発表以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、経済人、政治家、その他の人びとに対して首都ダッカにある軍兵舎内のDGFI事務所で行われた拷問の目撃者たちから、詳細で一貫した独自の証言を入手してきた。  
 
RABの超法規的処刑への関与については、2004年の同部隊設立以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、人権諸団体、ジャーナリストらによって多数の証拠が取りまとめられてきた。RABによって2007年中に行われたと内務省が認める93件の殺害事件は全て正当防衛もしくは政府の資産の防御のためだったとする内務省の主張は、目撃者の話や、犠牲者の遺体に残された拷問の痕跡及び犠牲者の多くがRABに拘束された後に死亡しているという事実と矛盾する。  
2008年1月、内務省顧問MAマティン少将(退役)は、拘禁中の死亡事件という問題があることを認め、治安部隊にこうした事態を止めるよう確保せよと指示。RABによる殺害とみられる件数は当初減少したものの、最近は増加しており、RABや治安部隊のメンバーに対して刑事責任を問うバングラデシュ政府の動きはない。  
 
「政府が残虐行為についての報告を即座に否定したことは、治安部隊の行動によって命を奪われた人びとへの侮辱であるばかりでなく、政府が言う『法の支配の回復』が空虚な美辞麗句でしかないことを示す」と、アダムスは述べた。  
 
内務省は、ヒューマン・ライツ・ウォッチへの回答の中で、「政府、司法当局、治安部隊は、常に裁判所の判決と決定を尊重している」とも述べる。しかし ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、多くの場合、収監されている者を保釈するよう裁判所が命令しても、刑務所当局に「必要な」DFGIの許可が下りないため、釈放が遅れていた事を明らかにした。  
 
ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、特別対汚職裁判所において膨大な数の適正手続き違反の報告があり、注目を集める囚人の代理人たる複数の弁護人たちはDFGIによる嫌がらせを受けてきた、と述べた。 また、軍のメンバーたちが、逮捕または刑務所送りにすると経済人たちを脅迫して多額の金銭を恐喝していることも、聞き取り調査から明らかにした。  
 
「政府とDFGIは、司法手続への介入を広範に行っている」と、アダムスは述べた。 「対汚職裁判においても恐喝は当たり前であったし、適正手続き違反は日常的とみられる。」  
 
内務省は、メディアは 「自由に妨害なく活動している」と述べているが、この見解はメディアの多くが共有するものではない、と ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。新聞の編集委員たちやベテランのジャーナリストらは、治安部隊からの干渉があると度々公に懸念を表明している。ジャーナリストは、とりわけ強権を持つ軍やその機関と対立する可能性を考えると、恐怖にかられたり自己検閲をする風潮があるとも語っている。  
 
「バングラデシュは、深刻な人権問題が存在することを認め、問題解決のために行動する用意のある政府を必要としている」と、アダムスは述べた。「選挙が近づく中、政権の座にいた時には人権を軽視していた主要政党たちは、自らの人権行動計画を策定し提示し、現状に取り組む準備ができていると示すことが重要である。」 
 

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