日本は活発な市民社会を有する自由民主主義国家である。自由民主党の高市早苗氏は10月、石破茂氏の辞任を受けて女性初の総理大臣に就任した。石破氏の辞任は、自民党と公明党の連立政権が衆参両院で過半数を割ったことを受けたものだった。保守政党である自民党は、1955年の結党以来、ほぼ一貫して政権を担ってきた。
日本には、人種、民族、宗教に基づく差別、性的指向や性自認に基づく差別、年齢に基づく差別を禁止する法律がない。また、国内人権機関も存在しない。
死刑
日本は死刑存置国である。死刑に関して、弁護士との接見の制限、死刑執行の告知が当日にならないと行われないといった問題もかねてより指摘されている。 本稿執筆時点で、2025年に死刑が執行された死刑囚は1人であり、105人が死刑囚として収監されている。
刑事司法制度
日本の未決段階の刑事司法制度について、無実を主張する被疑者や黙秘する被疑者に対し、長期の身体拘束をして自白を迫る「人質司法」が、長年批判されてきた。
3月には、4人の元被拘禁者が、保釈を却下して長期の未決勾留を認める現行法は憲法違反であるとして、東京地方裁判所に前例のない訴訟を提起した。
東京高裁は5月、画期的な判決を下した。典型的な「人質司法」の事例である大川原化工機事件について、捜査と起訴の違法性を認めた。
この事件では、社長を含む3人がえん罪で1年近く不当に拘束された。顧問の相嶋静夫氏には勾留中に胃がんが見つかった。しかし、8回の保釈請求はいずれも認められないまま相嶋氏は亡くなり、強い批判を呼び起こした。
判決確定後、警察・検察は内部検証を行った。8月に発表された報告書の示した改革は限定的で、長期勾留、証拠捏造や違法な取り調べなどの警察による不正に対する問題解決にはならず、取り調べの録音・録画の拡大などにも至らなかった。
本稿執筆時点で、最高裁判所は保釈のあり方について検討する研究会を行う予定であると報道されている。
庇護希望者と難民
出入国在留管理庁は依然として難民の認定をしない傾向が強い。2024年には、12,373人が難民認定を申請したが、認定されたのは190人だった。335人が「人道的な配慮」を理由に在留を認められた。また、1,661人が2023年に導入された補完的保護対象者認定制度の対象とされた。
法務省は3月、難民認定を3回以上申請した17人を、改正出入国管理及び難民認定法(改正入管法)に基づいて2024年6月以降に強制送還したと発表した。
移住労働者の権利とゼノフォビア
過去最多の移住労働者が日本で暮らし、働く一方で、訪日外国人観光客の人数も毎年過去最高を記録している。7月の参議院選挙では外国人受け入れが大きな争点となり、右派政党はゼノフォビア(外国人嫌悪)の言説を用いて支持を獲得しようとした。高市新首相は10月、外国人政策を担当する閣僚ポストを新設した。
女性の権利
世界経済フォーラム(WEF)のグローバル・ジェンダー・ギャップ指数など国際指標によると、日本は依然として顕著なジェンダー格差を抱えている。同指標によると、日本は先進7ヵ国(G7)のうち、同ランキングで最下位で、その主な理由は政治及び経済分野での女性のレプリゼンテーション(意思決定層への参画)が不十分なことである。外務省は1月、国連人権高等弁務官事務所に対し、日本の国連任意拠出金のうち、女性差別撤廃委員会への配分を行わないよう伝達した。この伝達は、同委員会が2024年、皇位継承者を男性に限ると定めた皇室典範を改正すべきと勧告したことを受けたものだ。
性的指向と性自認
トランスジェンダーの権利に対するバックラッシュの中でも、日本のLGBT運動は前進を続けた。2023年の画期的な最高裁判決にもかかわらず、国会は人権を侵害する内容の性同一性障害者特例法の改正を再び見送った。一方、婚姻の平等を求める運動は進展した。日本各地で提訴されたすべての同性婚訴訟について高裁判決が出そろい、6件のうち5件が違憲判断という結果となった。早ければ2026年中にも最高裁の判断があるとみられる。
子どもの権利
子どもの権利分野での改革は2025年に進展を見せた。3月、国会は公立高校の授業料相当額を所得制限なしで無償化することを決定した。これにより、2019年に導入された幼児教育無償化と合わせ、3歳から高校までの公教育が無償化された。
6月には、国会で改正スポーツ基本法が成立し、国および地方公共団体に対して、暴力、性的な言動、指導者などの優越的な関係を背景とした言動などに、措置を講じることが求められるようになった。依然として、体罰などの子どもの虐待があらゆるレベルのスポーツで蔓延している。
経済的・社会的・文化的権利
最高裁判所は6月、厚生労働省が2013年から2015年にかけて行った生活保護費の引き下げを違法とし、「裁量権の範囲の逸脱又はその濫用」であるとの判決を下した。この中で、生活保護費の一部を最大10%引き下げたのは、誤った計算に基づいており、受給者の実際の生活費支出を反映していなかったとの判断が示された。この判決は、経済的・社会的・文化的権利を守るために司法が果たすべき監視機能の重要性を改めて示したといえる。
生活保護制度は、憲法に保障された「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利の実現を目的としている。2025年3月時点で、約200万人が生活保護を受給している。しかし、生活保護に対するスティグマや容易に利用できない仕組みにより、実際の受給者は本来対象となるべき人の約2割でしかないと言われている。