今月中にも、日本の国会に提出される可能性のある「特定生殖補助医療等に関する法律案」(仮称)は、現状では、男性と婚姻していない女性への医師による不妊治療が禁止されます。同法律案が、独身女性や同性カップルに対する人工授精や体外受精(IVF)を非合法としているからです。このままでは、子どもを持ちたいと願う独身女性やレズビアン女性への差別が合法化されてしまいます。
日本では同性カップルの法律婚が認められていません。東京地方裁判は今年11月、憲法24条1項が結婚を「両性」のものと定義しているなどとして、同性婚が認められないことは違憲ではないとしました。6月にも、大阪地方裁判所が同性婚を認めないことを合憲としました。これらの判決は、札幌地方裁判所が2021年3月、同性婚を認めないことは「合理的な根拠を欠いた差別的な扱い」であるとし、違憲(憲法14条違反)とした判決とは対照的です。判断は分かれていますが、最新の上記11月の東京地裁判決は、日本が同性カップルを法的に認めないことは、その人権を侵害し、憲法に違反している状態とも判示しています。
日本にはこれまで、クィア女性や独身女性に対し、不妊治療の利用を明示的に禁止する法律上の規定はありませんでした。
人権活動家の茂田まみこさんと長村さと子さんは、提供された精子で息子を授かりました。ヒューマン・ライツ・ウォッチによるインタビューで、長村さんはこう語っています。
「もしこの法律が2年前にあったら、私たちがこの子を授かることはなかったでしょう。すべての女性が医療を受ける権利を享受できるようにしてほしいのです。私たちのような状況にある人たちに、その一部に子どもを持つことを禁止したところで、子どもが欲しいという気持ちそのものを止めることはできません。いっそう人目につかない方法が選ばれることになって、はるかに危険な方法で精子を入手することにつながるだけです。これはLGBTだけの問題ではありません。女性の医療と安全の問題なのです。」
法律案は、婚姻の有無、性的指向、性自認、ジェンダー表現にかかわらず、すべての女性が不妊治療を平等に受けられる内容に修正されるべきです。そして、クィア女性や独身女性が親になる方法について、養子や生殖医療に関する情報を含めて公的な情報をしっかり提供すべきです。そして、みずからが出産せずに子どもを持ったレズビアンが、その子どもの親であることを法律上明示的に認める、LGBTインクルーシブな親子法も必要になります。