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ASEAN:ミャンマー国軍の人権侵害に歯止めをかけるために行動を

関係国政府は、対象限定型制裁や武器禁輸を支持すべき

Activists protest the Myanmar military coup during an ASEAN summit in Jakarta, Indonesia, April 24, 2021.  © 2021 Tatan Syuflana/AP Photo

(ニューヨーク)― 2022年11月に開催されるアジア諸国の首脳会合に出席する各国政府は、ミャンマー国軍による広範な人権侵害に対処するため、制裁強化などの措置を支持すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。各国政府は、ミャンマー国軍の外貨収入源を遮断し、武器と航空燃料の禁輸を行う新たな措置に合意することが求められる。

東南アジア諸国連合(ASEAN)は11月10日から13日までの予定で、カンボジアでASEAN首脳会議と、米国、EU(欧州連合)、日本などの対話パートナーとのサイドミーティングを開催する。ASEAN首脳会議の後には、インドネシアでG20首脳会議とアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催される。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのエレイン・ピアソン アジア局長は「ミャンマー国軍は今も残虐行為を行っているのに、ASEAN諸国などはそれをただ傍観している」と述べた。「ミャンマー国軍を非難し、国軍が行動を改めたり、民主化に向かってほしいと望むだけでは足りない。もっと強い行動が求められている。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2021年2月のクーデター以降の国軍による広範かつ組織的な人権侵害(超法規的処刑、拷問、不法な投獄など)は、人道に対する罪と戦争犯罪にあたると指摘している。国軍はまた、表現・結社・平和的集会の自由への権利に厳しい弾圧を行っている。

ASEAN加盟国および志を同じくするG20とAPECの首脳は、ミャンマー国軍に対し、進行中の人権侵害への対抗措置についての強いメッセージに合意すべきだ。制裁は、政治囚の釈放、民間人への攻撃の停止、民政の確立に向けた措置など、明確な指標と結びつけられるべきである。

2021年4月24日にジャカルタで行われた前回の首脳会議で、ASEAN9カ国首脳とミャンマー国軍トップのミンアウンフライン上級将軍は、同国での暴力の即時停止、全当事者の対話、特使の任命、ASEANによる人道支援、特使がミャンマーを訪問し全当事者と会談する、という「5点合意」で一致した。数日後、ミャンマー政府はこの合意を「提案」と呼び、この1年半は、ミンアウンフラインは合意事項のほぼすべてを破る一方で、国軍に反対する何百万ものミャンマー国民を弾圧する目的で、全土での残虐な弾圧を監督しているのである。

10月の欧州議会の決議では、「5点合意は何の成果にもつながっておらず、ASEANに対し、ミンアウンラインの率いる国軍が信頼できるパートナーではないことを認めるよう求めるものである。ASEANとその加盟国に対し、NUG(=国民統一政府。文民組織)との間でミャンマーの危機に関する新しい合意の締結に向けて協議するとともに、その新しい合意には、今後の危機を持続可能かつ民主的に解決することを目的とする、強制メカニズムを与えることを求める」と指摘されている。

マレーシア、インドネシア、シンガポールなどASEAN数カ国は、合意の失敗を認めている。マレーシアのイスマイル・サブリ・ヤコブ首相は9月の国連総会での演説で、「ASEAN「5点合意」の実施に実効性のある進展がないことにマレーシアは失望している。(略)現在の形では、ASEAN「5点合意」はこれ以上続けられない」と述べた。そして、新たな「洗練された」合意が「より明確な枠組み、時間枠、最終目標に基づいて」設定されるべきだと述べた。

同様に考えるASEAN加盟国は、現行のアプローチの見直しに向けてASEANを導くべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。ASEANはすでに高レベル会議に国軍代表の参加を認めておらず、8月の外相会議では「ネピドー当局の限られた進展とコミットメントの欠如に深く失望した」と述べている

参加した各国外相は、ミャンマーの進捗状況を総意により評価し、「ASEAN憲章第20条に基づいて」、ASEANとしての次の措置を決めることを公約した。第20条は憲章の重大な違反や不遵守を定めている。ASEANは見直しの一環として、「人びと本位の、人びとを中心とするASEAN」という公約を守るために、ミャンマーの資格停止を検討すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ASEAN首脳は、中国とロシアから武器を購入するミャンマーに対して、国際的な武器禁輸を行う国連安保理決議への支持も表明すべきだ。

また、ASEANは、国軍の収入を対象とした経済措置の強化への支持を表明すべきである。その大半は米ドル、英ポンド、ユーロ建てで支払われたり、保有されたりしている。

クーデター以来、米国、EUはじめ複数の政府は、ミャンマー国軍と国軍が所有する企業に対して一連の対象限定型制裁を行っている。2月、EUはミャンマー国軍が所有するミャンマー石油・ガス企業公社(MOGE)への追加制裁を決めたが、米国と英国はこの動きに加わっていない。

米英両国の政府は、国連での措置強化も追求していない。英国政府は10月から国連安保理理事国に対ミャンマー決議案を配布し始めたが、中ロ政府の反対が確実なため、英国政府をはじめとする賛成派は議論を進めていない。ミンアウンフラインはクーデター後3回ロシアを訪問し、ロシアは軍用機、燃料、武器の対ミャンマー輸出を増やしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチとの会談で、米国やEUによる対国軍制裁には効果がなく、国軍の行動に影響を与えていないと主張する各国高官もいる。しかし、これまでに課された制裁は、国内で国軍が支配する国内企業や、国外の制裁が及ばないミャンマー国内の銀行で集められ、保有されている収入を主な対象とするものだ。天然ガスや鉱業から得られる何億ドルもの外貨収入は、タイ中国、マレーシア、シンガポール、その他のASEAN諸国の企業を経由して、引き続き国軍の銀行口座に流入しているのである。

特に中国企業は、国有企業も含めて、何億ドルものガス、金属、宝石や貴金属を購入し続けている。国軍はこうした外貨収入を武器、資材、航空燃料の購入に充てることで、軍事作戦での不法な攻撃を行うことができるのである。

ASEAN各国政府は、制裁を支持し、その実施を支援し、また国軍とのパイプを使って、制裁緩和に必要な措置を伝えるべきだ。この点では、外交と経済の両面でミャンマーに近いタイ政府が特に鍵となる。ASEANとその対話パートナー、そしてASEAN後に開かれるG20各国も、マネーロンダリング防止法を含む他の経済的な制限措置を、国軍が支配する銀行口座についていっそう厳格に適用することに合意すべきだ。ミャンマー国軍が支配する企業や組織は、シンガポールやタイなどの銀行に外貨口座を保有している。

「ミャンマー国軍への制裁の有効性は、強力な国際的制裁が実施されてから見定められるべきだ」と、前出のピアソン局長は述べた。「関係国政府は、人権侵害を行うために使用されているすべての資金源を国軍から遮断することが求められているのである。」

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