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中国:新疆ウイグル自治区で根拠のない投獄が急増

ウイグル系をはじめとするイスラム教徒に過酷で不当な刑が下されている

A perimeter fence around what is officially known as a” vocational skills education center” in Dabancheng in China's Xinjiang region, September 2018.  © 2018 Reuters/Thomas Peter

(ニューヨーク)–中国の新疆ウイグル自治区で近年、ウイグル系をはじめとするイスラム教徒に対して長期刑を求める根拠のない訴追が増えていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。中国政府が2016年後半に抑圧的な「暴力的テロ猛撃キャンペーン」(严厉打击暴力恐怖活动专项行动)をエスカレートさせて以来、当該地域の政府の刑事司法制度下で言い渡された有罪判決の数は25万件超にのぼる。

新疆ウイグル自治区当局の厳しい情報管理の結果、アクセスできる判決などの公式文書はわずかだが、こうした事案のうち60件近くをヒューマン・ライツ・ウォッチが分析したところ、真の犯罪といえる行為を犯していないにも拘わらず多くの人びとが有罪判決を受け、投獄された実態が明らかになった。これら公式な訴追は、違法な「政治教育」施設での恣意的な拘禁とは異なる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中国担当上級調査員の王松莲(Maya Wang)は、「中国政府の『政治教育』収容所は国際社会の怒りをよんだが、公式の司法制度による新疆ウイグル自治区のムスリムの拘禁・投獄にはわずかな注目しか集まっていない」と指摘する。「新疆ウイグル自治区の刑務所にいる受刑者の大半は、日々の生活を営み、宗教の教えを実践したことで有罪判決を受けた普通の人びとだ。合法性は塗り固められたベニヤ板にすぎない。」

増える訴追、多くに言い渡される長期

中国政府の公式統計によると、2017年に新疆ウイグル自治区で刑事罰を宣告された人の数が劇的に増加し、続く2018年にさらに増加した。このことは、2019年にNGOや中国人権擁護者ネットワークニューヨークタイムズ紙が報告している。

Source: China Law Yearbooks, Xinjiang Regional Yearbooks and Xinjiang Court Annual Work Reports

中国政府の統計によると、新疆ウイグル自治区の裁判所は2017年に9万9,326人、2018年には13万3,198人に判決を言い渡した。2019年の統計は発表されていない。

被害者家族の証言や公式文書をもとに被拘禁者8000人超の事案を文書化したNGOである「新疆ウイグル自治区被害者データベース」は、2019年に刑を宣告された人の数はその前の2年間のそれに匹敵する可能性が高いと推測している。判決の年がわかっている178件のうち、2019年に判決を受けた人の数は2017年及び2018年の平均とほぼ等しい。

比較可能な公式判決をめぐる数字は、2019年に新疆ウイグル自治区でさらに数万人規模が刑を宣告された可能性があることを示す。
 

2017年のもう1つの変化は、政府統計によると、長期刑を下された人の数が劇的に増加したことだ。それ以前に5年以上の刑が占める割合は全体の約10.8パーセントだったが、 2017年には87%にのぼった。

同様に、「新疆ウイグル自治区被害者データベース」のデータのなかで、刑期がはっきりしている312人は、「猛撃キャンペーン」中の有期刑の平均は12年半ということが明らかになった。なお、この数字に終身刑を下された6人は含まれていない。
 

「猛撃キャンペーン下の恣意的投獄

新疆ウイグル自治区のムスリムの大量投獄の恣意的な側面を鮮明に表す事例の1つに、2018年9月に昌吉回族自治州において、「分離主義」で終身刑を言い渡された回族ムスリムJin Huaide氏(47歳)の件がある。昌吉回族自治州中級人民法院は、同氏が「繰り返しかつ違法に」コーラン研究のための海外旅行を組織したり、バングラデシュやキルギスタンなどの国の宗教家を新疆ウイグル自治区に招待したり、2006〜14年に当該地域で宗教会合を開いていたとして有罪判決を下した。当局は、同氏が国境を越えたイスラム教への改宗運動の一種「タブリーギ・ジャマート」への参加を他者に推奨したと非難した。

同氏の活動が刑事犯罪に相当するという証拠は、公に入手可能な範囲では存在しない。しかし裁判所は、氏の活動が「外国の宗教勢力の中国への浸透を促進」し、かつ「イスラム教が世界を統一し、最終的にはカリフ制を確立するという考えを強化」して、その結果「国家を危険にさらした」と判断した。

同氏は2015年にも同じ行動のために、「社会秩序を乱すために群衆を集めた」として7年の刑を宣告されたが、検察官が2017年に判決に異議を申し立てさらなる重罰を求めて当該判決に異議申し立てを行い、再審の結果、終身刑の判決が下された。これに先立つ2009年には、コーランを20数人以上の回族およびウイグル系の子どもに教えたことで18カ月間投獄されていた。
Jin Huaide氏の事案とは別に、「新疆ウイグル自治区被害者データベース」で他に6件の事案が、一部は被害者家族から提供された情報で明らかになった。

  • ウイグル系のNebijan Ghoja Ehmet氏は、他者に「ハラームとハラールとは何か」(イスラム教では禁止または許可されているもの)を伝えたとして、「民族の憎悪と差別を扇動した」として10年の有罪判決を言い渡された。
  • 回族系のHuang Shike氏は、2つのWeChatグループで他者にコーランを説明したとして、「インターネットの違法使用」のため2年の有罪判決を言い渡された。
  • カザフ系のAsqar Azatbek, Kazakh氏は、カザフスタン・中国国境近くの水力発電プロジェクト周辺を、訪れたカザフ当局者を見せたとして、「スパイと詐欺」罪で20年の有罪判決を言い渡された。
  • 回族系のNie Shigang氏は、ウイグル系住民100人超がエジプトの親族に送金するのを助けたとして、送金はテロ活動のためという関係当局の主張が認められ、「テロ活動の支援」と「マネーロンダリング」で15年の有罪判決を言い渡された。しかし、控訴審では裁判所が「テロ活動の支援」罪は犯していないと判断し、「マネーロンダリング」で5年に減刑した。
  • カザフ系のNurlan Pioner氏は、70人超に宗教教育したとして「治安混乱と過激主義」で17年の有罪判決を言い渡された。
  • カザフ系のSerikzhan Adilhan氏は、ライセンスなしで17万4,600人民元(2万7,000米ドル)相当の紙巻たばこを販売したとして、「違法事業」を営んでいた罪で3年半の有罪判決を言い渡された。この判決は、7件の有罪判決のうち、中国の公式データベースに記録されていてアクセスが可能な唯一の判決だ。


起訴状、収監通知、漏えいした公式文書、家族との公式通信など、51の事案に関して入手可能な情報から、これらの事案において、ウイグル系よびカザフ系個人の大半が、「民族的憎悪を扇動する」、「ケンカを売ってトラブルを引き起こす」、そして「過激な」のコンテンツを視聴するといった、曖昧で広範な犯罪で投獄されていることがわかる。

そのような関連文書の1つで、ウイグル系家族4人が拘禁された事案の起訴状からは、中国政府が「テロリズム」および「過激主義」という言葉を危険なほど広範に使用していることが明らかだ。4人は家族のひとりを訪問するため、2013年と2014年にトルコへ旅行し、2019年1月に訴追された。中国政府当局は、Erkin Emetという名の男性で、在トルコの大学講師がテロ組織に所属しており、家族が彼に渡した現金(2,500米ドル)と贈り物(ウイグルの伝統楽器ドタール、金の指輪、そして基本的な生活必需品など)は、当該家族が「テロを支援している」証拠だと主張した。2019年に4人に下された有罪判決を知ったEmet氏によると、氏の兄弟姉妹の1人もさらに含めて、11〜23年の刑を言い渡されたという。

これらの判決及びそのほかの情報によれば、新疆ウイグル自治区の裁判所が真の犯罪といえる行為を犯していない多くの人を有罪とし、投獄したことを示唆している。

 

「猛撃キャンペーン下で適正手続はなし

新疆ウイグル自治区の「猛撃キャンペーン」は、チュルク系イスラム教徒や汎イスラム主義など、国家が規定したものに準拠しない宗教的および政治的思想を「イデオロギーウイルス」として標的にしている。キャンペーンには当該地域の全人口に対する大規模監視および政治的教化が含まれる。当局は、不当で広範な基準(海外に家族がいるかどうかなど)に基づいて、人びとの考えや行動、人間関係を評価し、「矯正」方針を決定。あまり問題視していない違反者は政治教育収容所送りか、自宅軟禁といったその他の形態による移動制限下に置く。これまでの中国政府の行動に照らせば、公式な刑事司法制度で対応しているのはより重大な事案であることを示唆している。

「猛撃キャンペーン」は、中国政府当局の定期的かつ政治的な「反犯罪」作戦の典型だ。当局が警察・検察・裁判所に対して、迅速かつ厳しい刑罰を科すために協働するよう圧力をかける。結果、略式の裁判や多数の事案の短期間処理、中国法が保障する基本的な手続き上の権利の停止などが行われる。

これと同様の力学が新疆ウイグル自治区の「猛撃キャンペーンを特徴づけているように見える。報道機関が、刑事司法制度関係者を含む新疆ウイグル自治区の公務員に対する圧倒的な労働圧力について報じている。ある記事には、警察官・検察官・裁判官が食事や睡眠の時間も取れず、休日も返上状態にあると書かれていた。2018年にヒューマン・ライツ・ウォッチは、2016〜18年に新疆ウイグル自治区の政府系収容所に収監されていた人びとに聞き取り調査を行ったが、自分自身及び被収容者らは、自白するよう拷問され、弁護士にアクセスできないと訴えた。ラジオ・フリー・アジアは、おざなりで、家族が傍聴することもできない非公開の裁判で人びとが判決を言い渡されていると報じている。

国際的な圧力は、中国政府が「政治教育」収容所から被拘禁者を一部釈放することに貢献した可能性がある。新疆ウイグル自治区での大規模な恣意的拘禁を否定した中国政府は、「法の支配」に従って当該地域を統治していると主張。が、多くの人びとが家族に所在を知らされることもなく強制的に失踪・拘禁・投獄されており、釈放されても継続的な監視や移動の制限、そして一部は強制労働の対象となっている。

王 中国担当上級調査員は、「新疆ウイグル自治区での独立した調査のために、中国政府に対する国際的な圧力をエスカレートさせる必要がある」と指摘する。「それが不当に拘禁または投獄されたすべての人びとにとって、釈放への最高の希望になる。」

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