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ビルマ:警察が学生デモ隊を警棒で殴打

過剰な強制力の行使と、警察の補助部隊による人権侵害の停止を 

(ニューヨーク)ビルマ警察は学生デモへの弾圧を止め、デモ隊に過剰な強制力を行使した職員を捜査すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

2015年3月10日、警察は棍棒を持った私服の現地補助部隊の加勢を頼み、経済の中心地ラングーン(ヤンゴン)の北にあるペグー管区のレッパダウンの街近くで200人ほどの学生デモ隊を暴力的に解散させた。マスコミ報道によると、学生と警察との暴力的な衝突は、ラングーンに通じる道路をふさいでいた警察のバリケードを学生デモ隊が突破しようとした際に起きた。警察は大勢の学生のほか、支援者と見なした仏教僧侶や地元住民も逮捕した。

「警察と私服の暴漢が学生を激しく殴打したことは、軍事政権時代の街頭での暴力事件を醜悪なかたちで蘇らせるものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「ビルマ政府は警察の人権侵害を停止させ、無責任な補助部隊を解散させるとともに、非暴力のデモを認めるべきだ。」

警察が学生デモ隊を弾圧し、地元の補助部隊を使って学生を捜索・逮捕する動きは、歴代のビルマ軍政が用いた不当な戦術の忌まわしい復活を思わせると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

一連の抗議行動は、全国教育法をめぐって各地の学生団体と教育省とのあいだで数ヶ月来高まる緊張が原因だ。学生指導者たちは、法案に学生側の意見が十分反映されておらず、より公正でインクルーシブな教育制度を提案したが、当局から無視されていると主張する。一部の政府当局者が仲介に動いたものの対立は解消できず、ビルマ全土で多数の学生団体が、各地の中心都市からラングーンに向けてデモを行った。

3月第1週、警察はラングーンに上京しようとするレッパダウンのデモ隊を停止させた。しかし当局は学生側に対し、3月10日午前11時に小集団に分かれてのラングーン行きを認めると伝えた。マスコミ報道によれば、学生たちは移動許可を得たので、警察と補助部隊は自分たちのラングーン行きを見守ると考えていた。だが大半の逮捕者はこのときに出ている。

警察は最近、学生デモ隊に強制力を不必要に行使していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。3月5日、警察は悪名高い「スワンアーシン」のメンバーと目される部隊(多くはビルマ語で「義務」と刺繍された赤い腕章をつけていた)の応援を受け、ラングーン市庁舎前でレッパダウンのデモ隊への連帯行動を展開していた学生や活動家を襲撃した。逮捕された8人には、元政治囚による著名な団体「88世代平和と開かれた社会」のメンバーもいた。翌日早朝に全員釈放されたが、警察から平和的集会法違反で起訴の可能性があると言い渡された。補助部隊を使った警察によるデモ隊の強制排除が行われたのは、2007年に仏教僧侶が主導したラングーンでのデモに対する暴力的な弾圧以来だ。

当局は大きな欠陥のある平和的集会法を用いて学生デモを威圧している。同法はすべての集会を地元当局の許可制とするが、学生による集会は多くの場合、事前許可なしで行われている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ビルマ政府は過剰な力の行使で責任を問われるべき者について捜査し、適切な訴追を行うべきだと述べた。「法執行官による強制力及び武器の使用に関する国連基本原則」は、法執行官は「強制力の行使に訴える前に、非暴力的な手段をできる限り適用する」と定めている。強制力の行使が避けられない場合、治安部隊は「そうした力を抑制的に用い、違反行為の重大さと達成すべき正当な目的に応じた行動をとる」べきだ。

ビルマ警察は長年にわたり深刻な人権侵害に関与している。危険な立場に置かれた人びとへの保護も怠ってきた。アラカン(ラカイン)州で2012年に起きた暴力事件では、ロヒンギャ民族ムスリムの居住区が標的となった。13万人が避難民となったが、大半がロヒンギャ民族だった。ムスリムへの暴力事件はそれ以後も全土で起きている。警察は効果的な介入を行っておらず、暴力事件に積極的に荷担したケースも多い。2013年にヨーロッパ連合(EU)は、ビルマ警察を人権尊重型の群衆管理と地域警備を行う組織に変えるプロジェクトに資金を拠出した。

「EUなど各国は今回の警察による暴力を徹底的に批判したうえで、非暴力デモを行う権利をビルマ政府が尊重しない場合には、支援を見直すべきだ」と、前出のアダムスは述べた。「ビルマの改革は日に日に不安定さが増しているように思われる。」

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