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国連:WHOが疼痛緩和と緩和ケアを前進させる 画期的決議

WHO執行理事会は、命にかかわる疾患に苦しむ患者の鎮痛剤利用を促進すべき

(ジュネーブ、2014年1月24日)世界保健機関(WHO)の執行理事会は2014年1月23日、画期的な決議を採択した。各国に対し、生命にかかわる疾患を抱える患者に鎮痛剤と緩和ケアの利用を保障するよう求めた。

今回の決議の対象は、ガンやHIVなどに起因する中程度または極度の痛みを経験して亡くなる毎年2,000万人の人びと、および痛みなどの症状を和らげるために疼痛緩和を必要とする毎年4,000万人の人びとだ。推計で毎年650万人が鎮痛剤をいっさい利用できないまま亡くなっている。そのほとんどが中低所得国の人びとだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの保健と人権プログラム上級調査員ディデリク・ローマンは「WHOの緩和ケアに関する決議は実に画期的だ」と指摘。「決議では、すべての国に対して、痛みや衰弱をもたらす症状で人びとが苦しむことが一切ないよう保障する義務があることを、あいまいな余地を残さずにはっきり示した。」

中程度または極度の痛みの大半は、モルヒネなど安価なジェネリック薬で治療が可能だ。より広い意味では、緩和ケアは、疼痛緩和だけでなく生命にかかわる疾患に苦しむ患者とその家族の生活の質(QOL)を向上させることもできる。多くの国で高齢化が進展し、心臓病、痴呆症、がんなど非感染症が増加していることから、緩和ケアは今後ますます重要になることが予想される。

しかし緩和ケアは、世界の大半の国ではいまだ利用が難しい。2011年に世界緩和ケア連合(Worldwide Palliative Care Alliance)が行った調査によると、調査対象国の74%で、緩和ケア体制がまったく存在しないか、存在しても人口のわずかな部分しか利用できない状態にある。

結果的に、数百万人が、疼痛や呼吸困難などの重篤な症状について治療を受けられず、不必要に苦しんでいる。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、インド、ケニア、メキシコ、セネガル、ウクライナなどを調査し、多くの患者にとって疼痛は極めてつらく、自殺を考えたり、実際に自殺企図したりする事例が後をたたないことを明らかにした。

執行理事会に提出した報告書でWHOは、緩和ケアへのニーズの増加には、持続可能な対応が必要だと指摘。そして各国政府に対して、緩和ケアを国の医療制度に統合することを推奨するとともに、統合を実施すれば、患者の生活の質を上げるだけでなく、不要な入院と医療サービスの利用を削減する点で、医療制度全体にメリットがあることも指摘した。

1月23日の議論は、WHO執行理事会が、緩和ケアを医療制度に統合する必要性を初めて論じた機会だった。これまでの議論では、緩和ケアを、がんやHIVなど特定疾患に提供することに焦点が置かれていた。しかしWHOが今回の報告書で指摘するように、緩和ケアはさまざまな健康状態の人びとが必要としている。たとえば、がん、心疾患、アルツハイマー病、多発性硬化症、結核などだ。

今回の決議は各国に対して、緩和ケアを医療制度に統合すること、医療従事者向け研修を改善すること、関連する薬(強力な鎮痛剤など)を患者が確実に利用できるようにすることを求めている。またWHOに対しては、緩和ケア提供体制の開発について加盟国に技術支援を提供することを求めた。

決議はパナマ政府が主導し、オーストラリア、チリ、ガーナ、リビア、マレーシア、パナマ、南アフリカ、スペイン、スイス、米国が起草した。ほかにも10数カ国が決議を共同提案した。

決議は5月の世界保健総会(WHO総会)で承認されて、最終的な形になる。

「今回の決議は、緩和ケア体制の改善に向けた工程表を提示するものだ」と、前出のローマン上級調査員は述べた。「各国政府が、期待される通りにこの決議に続けば、数百万人が無用な苦痛から解放される。」

決議文はこちら: http://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/EB134/B134_R7-en.pdf

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