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(ニューヨーク)- シリア政府軍が先月アレッポで行った数十回の空爆により、子どもを含む民間人数百人が死亡しており、この攻撃は違法行為にあたると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。アレッポでは何か月にもわたり政府軍と反体制派武装勢力が膠着状態にあったが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、11月23日以降に政府軍が攻勢を強めた証拠を記録している。12月15~18日のアレッポ空爆がこれまでのところ最も激しい。

攻撃では住宅地区と商業地区が被害を受け、数十人単位の死者を出す場合が多い。軍事上の標的と思しき場所から外れている場合か、一帯でそうした標的を狙ったと形跡がほとんどない場合がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは被害者、目撃者、現地活動家、医療関係者に電話で話を聞き、その証言をインターネットに投稿されたビデオや写真に対する分析結果と照合した。またヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員は攻撃地点のうち3か所を訪問し、被害者と目撃者8人に話を聞いた。

「政府軍による先月のアレッポ空爆で、実に悲惨な状況が生まれている。成人男女、子どもの区別なく死者が出ている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ緊急対応部門調査員ウレ・ソルバンは述べた。「シリア空軍は犯罪的なまでに無能で、民間人に大量の犠牲者が出ることを気にかけていないか、民間人地区を意図的に標的にしているかのどちらかだ。」

ロンドンにあるシリア人権ネットワーク(SNHR)は、12月15~18日の死者数を調査し、民間人232人の死亡を確認した。大半が空爆によるものだ。シリアにある人権侵害証拠収集センター(Violations Documentation Center)は、今回の紛争による死者数を体系的に調査している。12月15~18日の空爆について死者206人(うち戦闘員2名)の氏名を確認した。

同センターは11月22日~12月18日のアレッポ全域での空爆の死者として433人を確認している。うち反体制武装勢力の戦闘員はわずか8人だ。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査はまた、同じ時期に、反体制武装勢力によるアレッポの政府支配地区への攻撃で民間人が死亡したことも示している。またこの攻撃が無差別的であり、したがって違法なものであると思われることを指摘した。  

最近の空爆は、2013年4月にヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した報告書『空から降ってくる死』での記録と同じパターンをたどっていると思われる。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの報告書で、政府軍が、当時の状況下では、民間人と戦闘員の区別不可能な戦争の手段・方法を用いているため、攻撃は無差別的で、ゆえに違法なものになっていると結論づけた。政府軍は、民間人や民間の建造物を意図的に標的としたと思われるか、明確な軍事目標を狙っていない場合があった。
先月ヒューマン・ライツ・ウォッチが記録した攻撃の大半が、アレッポとその北西40kmの街アル=バブの反体制武装勢力支配地区のうち少なくとも16地区を攻撃している。アル=バブは2012年7月以来反体制武装勢力の支配下にあり、アレッポの政府軍と戦う兵士を供給する場合が多い。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが記録した攻撃のなかには、軍事上の標的ともなるものに比較的近いものもあった。一例を挙げると、11月12日にアレッポでの攻撃で投下された爆弾1発で民間人12人が死亡した。爆弾は、反体制武装勢力の兵士が占拠する建物から約100メートルの地点に落ちた。しかしアレッポとアル=バブの住民は、先月の攻撃では、市内にあり場所もわかっている反体制武装勢力の基地やチェックポイントについては、まったく当たっていないか、大した損害も与えていないと言う。

攻撃の現場を目撃した、または直後に駆けつけた住民がヒューマン・ライツ・ウォッチに述べたところによれば、負傷者や死者に反体制武装勢力の兵士はいなかった。12月15日に負傷者100人以上を受け入れたアレッポの野戦病院の医師は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、負傷者に反体制武装勢力兵士が数人いたが、その日のうちに病院で亡くなった30人に兵士はいなかったと述べた。この医師はまた、運ばれてきた反体制武装勢力兵士が負傷したのは、家族の住む集合住宅に爆弾が落ちたからで、そのとき兵士たちは自宅で休憩しており、戦闘に加わってはいなかったと述べた。

目撃証言とマスコミ報道によれば、アレッポとアル=バブに先月投下された爆弾の多くは、爆発物と断片化を強める物(鉄くずや釘)を詰めたドラム缶だった。この通称「ドラム缶爆弾」がヘリコプターから投下されている。「ハラブ・トウディTV」のフェイスブック・ページに投稿された写真には、12月16日にヘリコプターからアレッポに投下されたと見られる潰れたドラム缶が映っており、こうしたドラム缶爆弾が使われているとの主張を支持するものと見られる。ヒューマン・ライツ・ウォッチでは、シリア空軍が過去にこうした兵器を用いたことを記録している。しかし決定的なビデオ映像はなく、爆撃地点に兵器の残骸も残されていないため、ヒューマン・ライツ・ウォッチは最近の攻撃で使われた武器を特定できない。

空爆後のインタビュー、ビデオ映像、写真によれば、多くの攻撃がかなりの損害を引き起こしており、1つないし複数の建物が完全に破壊されている場合もある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、軍司令官は、方針として、人口稠密地域では民間人の被害が予想されるため、広範な影響を持つ爆発型兵器の使用命令を下すべきではない、と考える。

反体制武装勢力側も、このところの攻撃でアレッポの政府支配地区内の民間人居住区にロケット弾や迫撃砲で無差別砲撃を行っており、国際法を侵害していると見られる。例えば12月4日、反体制武装勢力はアレッポの複数の民間人居住区に最低10発の地対地ロケットを発射し、少なくとも19人の死者を出した。このことを、当該地域の住民1人へのインタビューと、ヒューマン・ライツ・ウォッチが検討した写真とビデオ映像は示している。 

和平交渉は、シリア政府と一部の反体制武装勢力との政治交渉である通称「ジュネーヴⅡ」で、2014年1月22日にスイスのモントルーで予定されている。 
国連安全保障理事会は、シリア情勢を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、シリア政府に武器禁輸措置を課し、人権侵害に関与する同国政府関係者に制裁措置を行うべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「世界が和平交渉の可能性に注目しているさなかに、シリア政府は大量の火力を用いて民間人地区を攻撃している」と、前出のソルバン調査員は指摘。「外交官が政治的解決策を模索している以上、世界はこうした不法な民間人の殺害を黙って受け入れてはならない。」

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