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国連安保理:シリアにおける法の裁き 実現の機会 

新決議には国際刑事裁判所への付託 盛り込むべき

(ニューヨーク)-現在国連安保理において、8月21日にシリアでおきた化学兵器使用をめぐる決議案の採択を協議中である。本決議には、国際刑事裁判所(ICC)への付託を含むべきだ。シリアの事態を同裁判所に付託することは、化学兵器攻撃ほか、同国内戦の全当事者による残虐行為の被害者に正義をもたらす重要な一歩となろう。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法プログラム局長リチャード・ディッカーは、「化学兵器を封印するのみで、それを使用した責任者を訴追しないというのでは、犠牲者に対する侮辱だ」と述べる。「国際刑事裁判所への付託は、内戦勃発後にシリアで犠牲になった何万もの人びとに弔いの正義をもたらすのに、きわめて重要である。」

シリアは国際刑事裁判所条約(ローマ規程)の締約国でないため、国連安保理は同裁判所に管轄権を付与せねばならないことになるだろう。なお、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの付託過程について、一問一答集(Q&A)を新たに作成した。

フランスの初期決議草案には国際刑事裁判所への付託が含まれていた。しかし、協議の過程で政治的譲歩として、当該条項が削除されることが憂慮される。

国際刑事裁判所への付託は、国際法に抵触する重大な犯罪(戦争犯罪や人道に対する罪も含む)は決して容認されず、深刻な結果を伴うことになる、という強力なメッセージを、シリア内戦の全当事者に送ることになろう。

直近の安保理協議は首都ダマスカスで起きた化学兵器攻撃をめぐるもので、この攻撃は政府軍によってなされた可能性が高いと、ヒューマン・ライツ・ウォッチ他は考えている。しかし、政府軍や武装組織ならびに反政府勢力は、他にも通常兵器を用いた数多くの重大な侵害行為も犯している。

8月21日にグータで起きた化学兵器攻撃は、1988年にイラクで当時のサダム・フセイン政権がクルド系住民に対して行った攻撃以来、もっとも大規模な化学物質の使用だった。グータ入りした国連調査団は、サリンを搭載した地対地ロケット弾が使用されたと結論づけている。これはヒューマン・ライツ・ウォッチによる調査結果とも一致する。

2年間続いているシリア内戦による民間人への打撃は甚大である。国連のシリア情勢に関する調査委員会の最新報告書は、内戦の全当事者が戦争犯罪に加担しており、これには処刑や無差別攻撃も含まれ、また政府軍は人道に対する罪も犯していることを明らかにしている。600万人超のシリア人が自宅から避難しており、うち200万人超は近隣諸国で暮らしている。

国際刑事裁判所への付託に加えて、安保理はすべての有償軍事援助と軍事支援に対し、制裁措置を発動すべきだ。これには、広範な人権侵害に加担しているシリア政府と反政府武装勢力への技術訓練・支援も含まれるべきだ。

安保理はまた、国境をまたいだ援助の拡大を支援すべきだ。加えてシリア政府に対し、人道支援に全面的に協力し、人道支援組織や国連調査団へ無制限なアクセスを許可するよう、圧力をかけるべきだ。

反体制派支配地域では、様々な武装勢力が援助関係者の安全を守ろうとしておらず、人道援助が思わしくない状況にある。安保理は反体制派に対し、各武装勢力が自らの支配地域において、救援車両・人員の安全な活動を保障するための働きかけを行うよう、要請すべきだ。

15の安保理理事国のうち6カ国(フランス、英国、ルクセンブルク、アルゼンチン、オーストラリア、韓国)が、国際刑事裁判所への付託支持を公に表明している。米国および中国は未だ考えを示していない。ロシアは、付託が時期尚早であり、逆効果になるだろうとして反対している。

これまで計64カ国が、国際刑事裁判所への付託を安保理に要請した。

国連人権高等弁務官も、シリアの事態を国際刑事裁判所に付託するよう、これまで幾度も安保理に勧告している。潘基文国連事務総長も今年2月、「国際刑事裁判所へのシリアの事態付託が、いくつかの加盟国からの要請が引き金となり議論に発展したこと」を歓迎した

前出のディッカー局長は、「ロシアや米国などの理事国は、シリアにおける戦争犯罪の加害者が誰であるのかについて同意する必要はない。しかし、こうした犯罪の不処罰はいかなる国にも拒絶されてしかるべきだ」と述べる。「眠っている子どもに毒ガスを浴びせたり、そのほかの残虐行為を犯すような人間が自由の身ではなくなった時にこそ、世界はより安全な場所となるだろう。」

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