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(ポルトープランス)-本日発表の報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは、ハイチの国内司法制度の下で元独裁者ジャン=クロード・デュバリエ(元大統領)を訴追することは、過去ハイチで起きた多くの最悪の人権侵害に向き合って取り組む歴史的第一歩になろう、との見解を示した。

報告書「ハイチ、負の歴史との対面:ジャン=クロード・デュバリエ事件」(全47ページ)は、事件に関する法的・実質的な疑問点を検証し、デュバリエ政権下で行われた重大な人権侵害を国際法に基づき調査・訴追する義務がハイチ政府にあると結論づけた。本報告書は、同国政府によるこうした裁判の遂行能力、時効問題、デュバリエ個人と人権侵害犯罪の関与などの側面も取りあげている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ法律顧問リード・ブロディは、「デュバリエ裁判は、ハイチ史においてもっとも意義深い刑事裁判となりうる」と指摘。「同国における現行法制度の脆弱性ゆえ、公正な裁判を遂行する試練は計り知れないものとなる。しかし、国際的な協力によってこれを乗り越えることも可能だ。」

デュバリエは、25年近くに及んだ亡命生活の末、今年1月6日にハイチに帰国。現在、経済犯罪及び人権犯罪で立件されており、捜査が開始されている。

1971年から86年まで続いたデュバリエ独裁は、組織的な人権侵害に終始した。何百人もの政治囚が「死の三角地帯」と呼ばれた刑務所網に収監され、虐待や超法規的処刑により殺害された。同政権下では独立系の新聞やラジオ局が繰り返し閉鎖され、ジャーナリストは暴行や時には拷問の犠牲となった他、投獄や国外追放の憂き目にあった。

ハイチ国内法下では、部下が犯した罪の「共謀者」、あるいはそうした罪を防いだり、罰しなかった「上官」として、デュバリエの法的責任を問える可能がある。この種の責任追及は、同国法廷による1994年ラボトー(Raboteau)大虐殺の責任者の訴追にも適応された。結果として、1991年から94年まで同国を支配した軍事政権のリーダーであるラウル・セドラ将軍を含む数名の幹部が、有罪判決を受けたのち一転して無罪となっている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが検証したある事件では、100名以上のジャーナリストと活動家が、1980年11月28日に一斉逮捕されている。うち数名は拷問を受け、多くは国外追放処分となった。ポルトープランス警察署所長は後に、デュバリエが「ジャーナリストたちはお前の好きなようにしていい」と言ったと証言。一方でデュバリエはニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して「反政府の陰謀を阻止する義務に応えたまで」と述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、時効により捜査を止めることはできないと指摘。ハイチは米州人権裁判所の判断に法的に拘束されるが、その米州人権裁判所は、重大人権犯罪を捜査・訴追する米州人権条約上の国家の義務に照らし、国際法に規定される重大な人権侵害については時効は適用されない、と繰り返し判示してきている。しかも、デュバリエ政権下で犯された多くの「失踪」事件については、被害者の所在が明らかにされるまで時効起算は開始されない。

25年から40年前に起きた重大犯罪のかどで元国家元首を捜査し、裁判にかけるのは容易ではない。脆弱なハイチの司法制度下ではなおさらである。同国政府はデュバリエ政権下で起きた主要事件に焦点を絞り、限られたリソースを最大限に生かすべきだ。加えて、諸外国政府や国際機関がそうした取り組みを、専門的な技術支援により支えねばならない。

前出のブロディは「デュバリエに対する公正な裁判は、過去のハイチで続いてきた『不処罰』終焉の始まりとなりうる」と述べる。「この裁判の実現に国際的な支援が果たせる役割は大きい。」

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