Djiboutians walk past a billboard showing President Ismael Omar Guelleh ahead of presidential elections on April 8.

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(ロンドン)- ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、ジブチ共和国政府は非暴力で政府を批判する人びとや野党勢力に対する組織的な取締りを停止すべきであると述べた。同国の大統領選は今年4月8日に予定されているが、政府は2月以降にすべてのデモ活動を禁止しており、平和的な抗議を行なった者や、野党指導者たちを恣意的に逮捕・訴追している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長代理ロナ・ペリガルは「ジブチで選挙が近づくにつれ、自由で公平な選挙を可能にする権利の数々が踏みにじられている」と指摘。「同国の平和的な抗議者を理由に、市民の基本的権利を政府が拒否する正当性はない。」

ジブチ政府は2月18日に平和的な抗議デモを暴力に訴えて解散させ、参加者や見物人の多くを逮捕した。以来、抗議デモの妨害を繰り返し行っている。指定地域内でデモを行った後に国立競技場に向かって行進していた参加者たちを、治安部隊が力づくで逮捕した。

2月18日のデモは、イスマイル・オマール・ゲレ大統領の3期目出馬を認める憲法改正に抗議するものだった。野党勢力もまた、現行の不透明な選挙制度が大統領と与党に有利に働いているとして、これに反対している。

そのデモで逮捕された人びとの中には、野党勢力の3人の指導者もおり、1日拘束された。政府は3人を煽動罪で訴追しようとしているが、未だ実現していない。その日には100人以上が逮捕され、威示行為と違法デモの容疑で訴追された。

同月27日には、約80人が出廷した。そのうち40の案件を裁判官が棄却、訴訟手続も白紙に戻したが、モハメド・バルカト・アブディラヒ司法大臣がその裁判官を退け、新たな裁判官を指名。被告側弁護士らがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによると、新裁判官は早急に25人の被告に有罪判決を下し、刑務所に拘禁された。そのうち2人は医療処置を必要としていたが、医師へのアクセスを却下された。残りの人びとは拘束されたままとなっている。同国の主要な人権団体であるジブチ人権連盟(LDDH)によると、これらの人びとを含め、同国には71人の政治囚が存在する。

野党勢力は大統領選までの毎週金曜日にデモを予定していた。しかしながら、2月25日にデモはなかった。競技場広場、過去のデモ会場、それに続く道路にかなりの数の警察官が配備されていたためである。翌月3日、ヤシン・エルミ・ボウ内務大臣が、2月18日のデモでの暴力を理由に翌日のデモ開催を却下した。

3月2日、政府はNGOデモクラシー・インターナショナル(DI)を国外退去処分にした。米国務省国際開発局(USAID)が後ろ盾の国際選挙監視団体であるDIは、それまで、大統領選の準備に向けてジブチ政府に専門家を派遣して支援していた。追放理由を政府は、DIが野党勢力の"煽動"活動を支援する違法団体であるため、としている。

野党勢力に対する嫌がらせは、選挙が近づくなかで続いている。3月11日、関係当局者が4人の政治家を検挙し、首都郊外に連れ去った。彼らが予定していた抗議集会の数時間前のことだった。政府が逮捕状を持っていた兆しはなく、同日夜には4人とも解放されている。この日、結局デモは行われなかった。

ゲレ政権が公平な選挙の実現を不可能なものにしているとして、野党勢力は大統領候補を推薦せずに、事実上のボイコットに出た。政府はこれを野党本部前での3月25日の抗議デモ不許可の理由に使った。抗議デモは、野党勢力が候補者の推薦よりもむしろ、一部の政府政策に対し意見を表明するものであった。しかし内務大臣は、候補者を推薦した政党のみが2週間の選挙期間中に公けの集会を開催できるとの見解を示した。

抗議デモ活動の包括的な禁止は、表現の自由を謳うジブチ憲法第15条に矛盾する。また、ジブチが締約国となっている市民的政治的権利に関する国際規約(B規約)第19条と21条にも反する。同条約上、ジブチは表現の自由と平和的な集会を許す義務を負っている。

前出のペリガルは、「野党指導者たちに嫌がらせをしたり、脅しをかけたり、抗議デモの許可をしないのは、目に余る権力の乱用だ」と述べる。「平和的な抗議は民主主義社会の中心にある、必須の権利である。」

ジブチの大統領職は1977年のジブチ独立以来、世襲による権力継承を行ってきた。99年に大統領となったゲレ氏は、大統領職についた唯一の人であったおじのあとを継いだ。ゲレは反対派が選挙をボイコットした2005年に再選された。反対派の有権者に対して自由なアクセスが許されておらず、選挙制度の性質上、不正は容易だった。

2005年4月、ゲレ大統領は再選後すぐ、フランスの新聞社ルモンドに対して2期目以降まで大統領の任期を延ばすような憲法改正は支持しないとした。2008年には、選挙制度が不公平であるとする反対派の野党各党が選挙をボイコットしたため、ゲレ大統領の連立政権は全議席を獲得した。2010年4月には、議会は大統領の任期期限を撤廃するよう憲法を改正した。

来る選挙にゲレ大統領に対する対抗馬を立てないと反対派が意向を固めたため、大統領選での唯一の対立候補として残っているのは、憲法裁判所前所長のモハメッド・ワルサマ・ラグア氏のみである。

2010年の終わりには、DI(デモクラシー・インターナショナル)が政府に対して、独立した選挙委員会を設立するよう求め、それができない場合最低限の国際基準を満たすよう、今の不透明な選挙制度を改革するよう求めた。

ジブチには独立したメディアは存在しない。政府が国内の唯一の新聞、ラジオ局、テレビ局を運営している。独立した新聞のル・ルノーボは、編集者が名誉毀損で起訴され亡命した後、2007年に廃業になった。

ジブチの主たる人権団体として、ジャン・ポール・ノエル・アブディ氏に率いられたジブチ人権連盟(LDDH)がある。ノエル・アブディ氏は、人権活動を理由として、何度となく逮捕されている。彼は現在、暴動に参加した容疑で起訴されており、本件により15年の刑に処せられる可能性がある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ノエル・アブディ氏がそのような暴動に参加したということを証明する信憑性のある証拠を確認してはいない。ノエル・アブディ氏は、健康上の理由で釈放されたが、起訴されている状態にかわりはない。

フランス政府とアメリカ合衆国政府は、ジブチに軍事基地を有しており、ジブチ政府に対して多額の援助を行っている。いずれの政府も、最近の一連の出来事やジブチの人権状況の悪化について公に批判をしていない。