以下の一問一答集(Q&A)は、リビア政府軍と多国籍軍間、および政府軍とリビア反体制派グループ間の武力衝突事態における国際人道法(戦争法、戦時国際法)の適用に関する質問と回答をまとめたものです。このQ&Aは、紛争の当事者、および影響を及ぼす立場にある関係者に、法的指針を提供する目的のもと作成されました。なお、このQ&Aはいずれの紛争当事者による戦争行為について、その正当性や適法性について言及するものではありません。

何の権限によりリビアに飛行禁止区域が設定されたのか?

リビアでの飛行禁止区域設定の内容は?

リビアではいずれの国際人道法が適用されるのか?

戦争法(戦時国際法)の基本原則とは?

空中戦/空爆にも戦争法(戦時国際法)が適用されるのか?

飛行禁止区域に適用される戦争法(戦時国際法)規定の内容とは?

武力攻撃の対象となり得るターゲットは何か?

安保理決議1973で武力攻撃の対象となり得るのはどのような目標か?

居住区において戦闘行為に及ぶ当事者たちの義務は何か?

武力攻撃前にいかなる予防措置をとる必要があるか?

戦時においては、空港、道路、発電所などのインフラを攻撃対象とすることが許されるのか?

多国籍軍はリビアのラジオ局やテレビ局を攻撃することが許されるか?

「人間の盾」はどのような場合を指すか?

戦争当事者の人道援助機関に対する義務の内容は?

国際人権法は今もリビアで適用されるのか?

誰に対し、国際人道法違反の責任を負わせられるか?

何の権限によりリビアに飛行禁止区域が設定されたのか?

2011年3月17日、国連安全保障理事会(安保理)は、賛成10・反対0・棄権5で、国連憲章第7章に基づきリビアに「飛行禁止区域」を設定することを認める国連安保理決議1973を採択しました[i] 。同決議は、「停戦の即時成立および文民に対するあらゆる暴力および人権侵害の停止」を求めるものでもあります。リビア政府に対しては、国際人道法などの国際法に基づく義務の遵守を呼びかけるとともに、「人道支援の迅速かつ支障のない通過」を確保するよう求めました[ii]

リビアでの飛行禁止区域設定の内容は?

決議1973は、文民保護のためリビア空域内におけるすべての航空機の飛行を禁じています(パラ6)。また国連事務総長およびアラブ連盟事務総長に通知を行った国連加盟国に対し、飛行禁止区域を強制するために軍事力を行使することを認めるという強力な権限を与えています(パラ8)。 

決議は、「ベンガジを含むリビアにおける攻撃の脅威の下にある文民及び文民居住区を保護する目的」として"必要なあらゆる措置を講じる"権限を、決議の執行国に認めています(パラ4)。また、「リビア領内のいかなる場所においてもあらゆる形態の外国軍の占領」を禁ずることを明記しました(パラ4)。したがって決議の執行国は、対空砲台や、軍事航空管制基地、接地中の航空機、軍事補給基地その他の軍事目標を含む広範囲な軍事標的に対する武力の行使を認められたことになります。

安保理決議1973は、飛行禁止区域は「飛行の唯一の目的が、医療及び食糧物資、人道支援要員および関連援助を含む、援助の提供および促進、またはリビアからの外国国民の避難のような人道的な飛行には適用されないものとする」と定めています。また、「リビア国民の利益のために必要であるとみなされたその他の飛行」については、加盟国にその権利を認めるよう求める内容となっています(パラ7)。

リビアではいずれの国際人道法が適用されるのか?

決議1973に基づいて活動する軍隊およびリビア政府軍の間で行われる戦闘行為は、国際紛争における戦時国際法(国際人道法)に準拠します。適用可能な国際法には、「1949年のジュネーブ諸条約」と慣習戦時国際法があります。リビアおよび戦争行為に関わるる殆どの国々(仏、英を含む)が「1977年のジュネーブ諸条約の追加議定書」の締約国でもあります。米国はこのうち第1追加議定書の締約国ではありませんが、その殆どの規定を国際慣習法を反映しているとして受け入れています。戦争の手法や手段について定める第1追加議定書は、慣習戦時国際法が最も明瞭な形で集積された法律集といえるものです。 

リビア政府軍と反政府軍の戦闘行為は、非国際的武力紛争(内戦)に位置づけられます。非国際的武力紛争は、ジュネーブ諸条約の共通第3条の規定およびその第2追加議定書、さらに慣習戦時国際法に準拠します。

戦争法(戦時国際法)の基本原則とは?

戦時国際法は、それが国際的紛争であるか内戦であるかに関わらず、戦時の不必要な負傷や犠牲を最小限に抑えること、とくに文民およびその他の非戦闘員を武力紛争の惨禍から保護することを目的としています。戦時中のすべての紛争当事者による戦争行為(その手段と手法)を規制するものなのです。その基本原則は、紛争当事者は、いかなる場合においても戦闘員と文民とを区別しなければならないということです。文民および民用物は、いかなる場合においても攻撃対象としてはならないのです。紛争当事者らは、文民および民用物に対する被害を最小限に抑えるための実行可能なすべての予防措置を講じることを求められ、不均衡な文民被害が生じるような攻撃や、文民と非戦闘員を区別しない攻撃を慎まなければなりません。

さらに国際人道法は、非戦闘員(文民、拘束された戦闘員、傷病兵等)に対する基本的な保護を保障します。このような非戦闘員に対しては、とくにその殺害、残酷な待遇、拷問等とともに、個人の尊厳を貶めたり侮辱するような暴力行為が禁じられています。 

空中戦/空爆にも戦争法(戦時国際法)が適用されるのか?

戦時国際法(戦争法)は空中戦にも適用されます。ただし、個別の規定の適用について、たとえば民用物をその攻撃対象としないことについては、陸戦とは異なる実践的な保護措置が必要となります。たとえば、航空機が軍事目標でないことを確保するための実行可能なすべての予防措置をとるには、視認による確認や、通信による警告への対応、赤外線及び電子識別信号の解析、識別モード、航空機の番号および編成、高度、速度などの飛行特性等を考慮しなければならなくなります[iii]。   

飛行禁止区域に適用される戦争法(戦時国際法)規定の内容とは?

飛行禁止区域の強制は、武力紛争におけるその手法と手段において、戦時国際法(戦争法)に準拠しなければなりません。戦時国際法には、軍用機、ヘリ、地上の標的など、軍事目標に対する攻撃しか認められないことが明記されています。文民や、民間航空会社、その他民間機などの民用物に対する攻撃は禁止されているのです。   

民用物は、それが軍事目標となった時点で、正当な攻撃目標となります。すなわち、当該施設が軍事行動に貢献し、その破壊、確保あるいは無力化が、確実な軍事的優位を構成する場合などがそうです。これには、民間機など、通常なら民用物とされるものに対する軍事力の行使などが含まれます。目標物の実態について疑問の余地がある場合、その目標物は民用物であると推定されなければなりません。

したがって、民間機は、飛行禁止区域に入らないよう、その進路を妨害されたり、強制的に引き返すよう求められたりします。ただし、仮に民間機が飛行禁止空域に侵入したからといって、民用物でなくなったり、攻撃から保護されなくなるわけではありません。英軍事マニュアルによれば、「見かけ上民間機と思われる機体に対する攻撃は、それ自体が攻撃部隊の一員として出撃しているという合理的な確証があって初めて、最後の手段として許されるもの」となっています[iv]

文民を攻撃目標とできるのは、その文民が「直接敵対行為に参加している場合」に限られるわけです。飛行禁止区域の場合、「直接敵対行為に参加する」とはすなわち、軍用機あるいは民間機を軍事作戦のために飛行させているか、電子戦に関わっているか、航空機にミサイルや爆弾などの兵器や軍需品を積載しているか、軍事作戦に参加する直前の軍用機の修理または整備を行っていること等が挙げられます。

武力攻撃の対象となり得るターゲットは何か?

戦時国際法(戦争法)は、紛争当事者に許容される戦闘行為の手法と手段を制限し、文民及び拘束された戦闘員を尊重及び保護することを求めます。この国際法上の原理となるのが、「文民の除外(civilian immunity)」と「『区別』の原則(principle of "distinction")」です。国際人道法は、武力紛争における一定の文民被害は避けられないと認識する一方で、紛争当事者らに対しては、戦闘員と文民を区別すること、ならびに戦闘員およびその他軍事目標のみを標的とすることを課します。文民は「敵対行為に直接参加した」時点で、攻撃から除外される権限を失います。

戦争法は、民用物の保護をも義務づけます。民用物とはすなわち、軍用物ではないものすべてを指します。民家、アパート、信仰対象、病院、学校、文化的記念物等の民用物に対する直接の攻撃は、それらが軍事目的で使用されていない限りにおいて、禁じられています。民用物は、それが軍事目標となった時点で、正当な攻撃目標となります。すなわち、当該施設が軍事行動に貢献し、その破壊、確保あるいは無力化が、確実な軍事的優位を構成する場合などがそうです。これには、通常なら民用物とされるものに対する軍事力の行使などが含まれます。目標物の実態について疑問の余地がある場合、その目標物は民用物であると想定されなければなりません。

戦争法は、無差別攻撃を禁じています。無差別攻撃とはすなわち、軍事目標や文民または民用物を区別なく攻撃することです。無差別攻撃の例として、特定の軍事目標を標的としない攻撃や、特定の軍事目標を標的とすることが不可能な兵器を使うことが挙げられます。禁止されている無差別攻撃の種類の1つに、「地域爆撃」があります。地域爆撃とは、迫撃砲その他の手段により、軍事目標のみならず文民や民用物が密集している地域の中に明白に物理的距離が置かれた複数の軍事目標が存在する場合に、その地域自体を一個の軍事標的として攻撃することです。

他に禁止されている攻撃手法として、「比例性原則」に反する攻撃があります。比例性原則に反する攻撃とは、攻撃によって得られる軍事的利益と、巻き添えとなる文民の被害あるいは民用物の損壊が、著しく不均衡となるような攻撃を指します。

安保理決議1973で武力攻撃の対象となり得るのはどのような目標か?

リビアにおける飛行禁止区域の設定は、飛行機やヘリを含むすべての航空機に対して空域飛行の自由を認めないことを意味します。戦時国際法(戦争法)では、リビア政府軍の軍用機、あるいは軍事作戦に使用されている非軍用機(たとえば、リビア軍兵士を運ぶ民間輸送機など)に対する攻撃のみが許されています。

しかし、決議1973は、飛行禁止区域の設定のみならず、文民を保護するための「必要なあらゆる措置を講じる権限」を認めています。したがって、飛行禁止区域を強制するために、たとえば対空防御施設や軍用補給所、その他軍事目標物等、幅広い範囲の軍事目標に対して軍事力を行使することを認めています。      

ですから、飛行禁止区域を強制する国々が仮に、同空域内を飛行するすべての航空機に対し、それが軍用であるか民用であるかを問わずに無制限に攻撃を加えると宣言することは違法です。

居住区において戦闘行為に及ぶ当事者たちの義務は何か?

国際人道法(戦争法)は、市街地での戦闘を禁止していません。しかし、文民が多くいるほど、紛争当事者らは文民に対する被害をより少なくする義務を負います。

戦争法では、紛争当事者はその軍事作戦中は常に文民被害を減らし、「実行可能なすべての予防措置」を講じて文民の犠牲や民用物の損壊を最小限に抑えることが求められます。これらの「予防措置」には、実行可能なすべての手段を講じて攻撃の対象が軍事目標であり文民や民用物でないことを確認し、可能なかぎりにおいて、攻撃に関する「効果的かつ早期の警告を行う」 ことが義務づけられています。

居住区に展開した部隊には、人口密集地帯に軍事目標となるものを配置せず、そうした軍事目標からは文民を排除するよう努力することが求められます。交戦当事者は、文民を軍事目標や作戦に対する攻撃の盾とすることを禁じられています。ここでの「盾」とは、文民を意図的に利用して軍隊や軍事領域を武力攻撃の対象から除外する行為を指します。

同時に、これによって攻撃側が文民に対する被害の責任を逃れるわけであはりません。正当な軍事目標を居住区の近く又は内部に配置したのが紛争の相手側の責任であるとしても、それによって民間人に与える危険を考慮する義務から攻撃側が免責される訳ではないのです。

武力攻撃前にいかなる予防措置をとる必要があるか?

すべての紛争当事者には、文民およびその他の非戦闘員について、その生命、健康と安全を守る義務があります。軍事施設やその他の軍事目標を標的とすることは許されますが、文民被害を避けるための実行可能なすべての予防措置を講じる必要があり、また文民を標的にしたり、無差別攻撃を行ったり、得られる軍事的利益に対して想定される文民被害が不均衡であるような攻撃は禁じられています。軍隊の司令官は、攻撃の標的を軍事目標に絞るとともに、偶発的な文民被害を最小限に抑えるような手段の攻撃を選択しなければなりません。相当の文民被害が生じる危険性を回避できないほどの精度の低い兵器であって、それゆえに軍事目標に標的を絞ることができないのであれば、そのような兵器は実用を禁止されます。文民に対する意図的な攻撃は、あらゆる場面において禁止されています。犯意を以て文民を攻撃する個人は、戦争犯罪に問われます。  


戦時においては、空港、道路、発電所などのインフラを攻撃対象とすることが許されるのか?

空港、道路や橋は、実際に軍事目的で使用された場合は攻撃対象としての軍事目標になり得る民用物です。このような場合においても、比例性の原則は適用されます。紛争当事者らは、文民に対する短長期的な被害を軍事的利益に対して比較しなければなりませんし、文民被害を最小限に減らす手段を講じなければなりません。 それでも文民被害が軍事的利益を上回るのであれば、そのような攻撃は実施してはならないのです。このような場合に想定される要素の一つとして、特定の道路や橋の破壊が、その他の代替ルートに比べて軍事的輸送を妨げる効果が高い場合が挙げられます。つまり、攻撃したインフラが攻撃者の軍事行動に「効果的に寄与するもの」であり、その破壊によって「確実な軍事的優位をもたらすもの」である場合です。あるいは、それらの破壊が文民に不便を生じさせ、さらには戦争を逃れて安全な地域に避難する行為までも阻害してしまう攻撃なのか、比較しなくてはならないのです。

軍隊だけでなく一般市民にも供給される電力施設などは、軍事目標となりえます。その一方で、電力の喪失は、冷蔵や衛生、病院施設その他の現代生活に不可欠なものすべてに波及するなど、市民生活に甚大な影響を及ぼすことが想定されます。都市生活においては、正に「市民生活に欠くべからずもの」と言っても過言ではないでしょう。つまり、非常に特別の場合や、短期的な被害に留めることのできる方法でないかぎり、禁止される攻撃だと言えます。実際、一般市民にも供給されている電力施設を攻撃するのではなく、その攻撃を軍事施設そのものに対して行うか、軍事施設に供給している電力区画に絞って行うなどのより限定的な攻撃でも、同様の効果をあげることができることが多いのです。

多国籍軍はリビアのラジオ局やテレビ局を攻撃することが許されるか?

軍事通信に使用される放送施設に対する軍事攻撃は、戦争法上適法な行為です。文民の士気を低下させる、もしくは文民を心理的に苦しめることを意図した民間テレビ局やラジオ局への攻撃は、禁止されます。民間テレビ局やラジオ局は、軍事目標としての基準を満たしている場合のみ攻撃が許されます。すなわち、そうした民間放送局が、「軍事行動に効果的に寄与」する方法で使用されている場合、そして攻撃当時にその破壊が「確実な軍事的優位を導く」場合です。リビア政府の放送施設であれば、例えば、リビア政府軍が軍の命令を送るために使用されているなど、リビア政府軍の軍事行動を具体的に進めるために使用されている場合には、軍事目標になります。しかし、民間放送施設は、単にカダフィ大佐のプロパガンダを放送しているというだけでは、合法的な軍事目標とはなりません。

士気を低下させるための文民攻撃が違法であるのと同様に、専ら世論形成を担う施設を攻撃することは許されませんし、直接的な軍事作戦に寄与していない施設の攻撃も違法です。

通信施設が軍事通信の送信に使用されたことにより、正当な軍事目標となった場合でも、当該攻撃において比例性の原則が尊重されなければいけません。多国籍軍は、このような攻撃を行うにあたっては毎回必ず、民間人へのリスクを検討し、そのリスクが予想される軍事的利益を上回ってはいないことを確認しなくてはなりません。都市部の建物に対しては、いつでも可能な限り攻撃の事前警告を行なうなど、特別な予防措置をとる必要があります。

「人間の盾」はどのような場合を指すか?

戦争犯罪のひとつである人間の「盾」(遮蔽 shielding)とは、特定の地点、地域又は軍隊が軍事行動の対象とならないよう除外させるため、意図的に文民を利用することと定義されています。すでに述べたとおり、人口密集地域の内部または付近に軍隊、武器、弾薬を置くことはそれ自体が違法ですが、軍事行動を阻止するために文民を意図的に使う場合に限って、人間の「盾」を使用したことになります。

対立する紛争当事者は、「人間の盾」を利用している軍事目標を攻撃することは許されますが、比例原則に合致しているかを確認する必要があります。つまり、攻撃により失われる文民の生命および財産が、攻撃により予想される軍事的な利益を上回っていないかどうか、比例性の原則により確認する義務があるのです。いわゆる「自発的」な「人間の盾」- つまり、軍事攻撃を阻止するために軍事目標を意図的に囲んでいると主張している民間人、又はそう主張しているとされる民間人 - についても、比例原則の検討に付されます。

戦争当事者の人道援助機関に対する義務の内容は?

国際人道法上、紛争当事者は、人道支援を必要とする人びとに対し、公平に分配される援助を迅速かつスムーズに許可するとともに、これを容易にする義務を負っています。交戦当事者は、救援活動の実施を許可しなくてはならず、恣意的な理由で承諾を拒むことは許されません。当事者は、物資に武器が含まれていないかを確認するなど、人道支援物資の内容や物資配布をコントロールするための措置をとることは許されます。しかし、救援物資供給を意図的に妨害することは禁止されています。

また、国際人道法上、交戦当事者は、人道援助を行う上で不可欠な人道援助関係者の移動の自由を確保する義務があります。こうした移動の自由は、軍事の必要性が高い場合、一時的に限って制限することができます。

国際人権法は今もリビアで適用されるのか?

人権法は、戦争法が適用される武力紛争の間も適用されます。リビアは、市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR、自由権規約)や拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約や人及び人権の権利に関するアフリカ憲章を含む複数の国際人権条約の締約国です。国際人道法で定められる文民の権利と同様の権利の多くが、これらの条約にも定められています(例えば、拷問や品位を傷つける取扱いの禁止、差別禁止、公正な裁判に対する権利など)。

「国民の生存を脅かす」公けの緊急事態が公式に宣言された場合には、自由権規約上の権利に対する一定の制限が認められています。しかし、公けの緊急事態における権利の逸脱措置(derogation)は、すべて例外的かつ一時的な性質のものでなければならず、かつ、「事態の緊急性が真に必要とする限度」に限られなくてはなりません。一定の基本的権利(例えば、生命に対する権利や拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱いを受けない権利など)は、公けの緊急事態を含むいかなる時にも尊重されなくてはなりません。

誰に対し、国際人道法違反の責任を負わせられるか?

2011年2月26日、国連安全保障理事会は安保理決議1970を採択してリビアの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託し、リビアにおける2011年2月15日以降の戦争犯罪や人道に対する罪を訴追する権限を国際刑事裁判所(ICC)に与えました。本決議は、リビア以外でICC規程の締約国ではない国の国民は、安保理に設立又は権限を与えられたリビアにおけるオペレーションに起因するあらゆる行為について、ICC管轄権の対象外にあると定めています。3月24日現在で、決議1973に基づく軍事作戦への参加を事務総長に通知している12ヶ国のうち、米国、アラブ首長国連邦、カタール、ウクライナを除くすべての国がICC規程の締約国です。これらICC規程非加盟国4カ国を含めた全ての国が、戦争犯罪に関与した自国軍の兵士を訴追する国際法上の義務を負っています。

犯意ある国際人道法の重大な違反は戦争犯罪です。ジュネーブ諸条約の条項や、国際刑事裁判所(ICC)規程や他の法源に「重大な違反」として掲げられる戦争犯罪は、意図的、無差別、過剰な攻撃により民間人を殺傷する行為、人質を行為、人間の盾を使用する行為、集団処罰を科す行為などの多様な犯罪を含んでいます。また、個人は、戦争犯罪の援助、促進、ほう助、教唆ばかりでなく、戦争犯罪行為の未遂についても刑事責任を問われる可能性があります。

戦争犯罪行為の計画または教唆も個人の責任となりえます。司令官や文民の指導者も、戦争犯罪行為の実行を知り、又は戦争犯罪が行なわれると知るべきであったにも拘わらず、戦争犯罪行為を防ぎ、もしくは罰するために十分な措置を取らなかった場合、上官責任として戦争犯罪で訴追される可能性があります。

 


[i] Chapter VII of the UN Charter sets out the Security Council's powers to take military and nonmilitary action to "restore international peace and security."

[ii] UN Security Council Resolution 1973, S/RES/1973 (2011), is available at http://daccess-ods.un.org/TMP/8632805.94348907.html .

[iii] For a detailed analysis of these issues, see HPCR, "Manual on International Law Applicable to Air and Missile Warfare," 2009, available at http://www.ihlresearch.org/amw/manual/.

[iv] UK Ministry of Defence, Manual of the Law of Armed Conflict (Oxford:Oxford University Press, 2004), para.12.58.2.