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中国:中国政府は訪中するビルマ最高指導者に選挙と責任追及を求めよ

人権より優先される中国の対緬投資・貿易

 (ニューヨーク) - 中国政府は、ビルマ軍政の最高指導者タンシュエ上級将軍の今回の訪中をとらえて、開かれた総選挙を行い、重大犯罪の真相解明と責任追及(アカウンタビリティ)を果たすよう強く求めるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。タンシュエ上級将軍は2010年9月7日火曜日から4日間の日程で北京と上海を訪問する。中国の温家宝首相は、今年6月にビルマを訪問した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理ソフィ・リチャードソンは「温家宝首相は、欠陥のある11月の総選挙の問題と真相解明と責任追及(アカウンタビリティ)の問題に触れずに、ビルマ軍政幹部を勢いづかせてはならない」と述べる。「中国政府は『いつも通り』の対応ではなく、他国と共に力強く永続的な変化を求めてビルマに強く働きかけるべきだ。」

ビルマでは11月7日に20年ぶりの総選挙が行われるが、選挙に至るプロセスが国際基準を満たさないことを懸念する声が各国の間で大きくなっている。軍政は恣意的逮捕や不公正な選挙関連法により反体制派のほとんどを選挙から排除しており、現行の規定では、選挙後の議会の下でも軍政が支配を維持することが保証されている。今回のタンシュエの訪中は、インド訪問の2週間後に行われるもので、現軍政=国家平和発展評議会(SPDC)による総選挙プロセスに対する国際社会の支持を取り付け、両国間の経済・安全保障面での関係を強化することが目的だ。

ビルマには長年の内戦の過程で、広範かつ組織的な国際人道法違反行為が発生しているとの報告について、国連がハイレベルな調査を実施すべきとの主張に、多くの国が賛同する中で、今回の訪問は行われる。米国、イギリス、オーストラリア、カナダ、チェコ共和国、スロバキアの各国は、ミャンマー(ビルマ)の人権状況に関する国連特別報告者トマス・オヘア・キンタナ氏が3月に行った提案への公式な支持を表明している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは欧州連合と欧州各国の政府に対し、国際調査の実施を支持するよう呼びかけている。

中国とビルマ軍政との関係はここ20年以上にわたって深まり、中国は国連の場でビルマの有利になるように大きな影響力を行使してきた。その一方でビルマが持つ豊富な天然資源とインド洋への戦略的な出口へのアクセスを手にしてきた。中国はビルマに海軍艦艇、戦闘機、大砲やトラックなど様々な武器や軍用品を供給しており、現在もビルマの主要な兵器調達先だ。このところ中緬国境では、ビルマ政府と、政府と不安定な停戦合意を結ぶ二つの非国家武装組織-ワ州連合軍(UWSA)ならびにカチン独立機構(KIO)-との間で緊張が高まっている。2009年8月には、ビルマ治安部隊とコーカン人(中緬国境に住む漢人)民兵組織との間で戦闘が起き、37,000人が中国雲南省に避難した。

「中国はビルマから利益を得ると共に、ビルマの不安定な軍政支配からも距離を取りたがっている」とリチャードソンは指摘する。「中国政府が対ビルマ政策を根本的に見直さないなら、抑圧的な政権の庇護者という評価にさらに磨きをかけることになりかねない。」

中国はビルマと緊密な経済関係を有しており、二国間の国境貿易から大型の水力発電および石油開発プロジェクトまで幅広い。中緬貿易は年間30億ドル(約2,550億円)近いとされ、国境貿易も急増中だ。全体的な取引量は、両国間で大型のエネルギー売買契約によって激増することが予想される。

中国の主要な国営企業・中国石油天然気集団公司(CNPC)子会社の中国石油天然気(ペトロチャイナ)は2008年12月に、ビルマのアラカン(ヤカイン)州沖合のシュエ・ガス田から天然ガスを購入する契約を結んだ。最近、CNPCは伝えられるところによると、最終的にはビルマを横断し中国国内に到達することとなる主要なパイプライン2本の建設に着工した。うち1本がシュエ・ガス田からの運搬に使われる。この建設はビルマ過去最大級のインフラ整備事業だ。

中国によるビルマの巨大石油事業と大規模な水力開発事業には中国企業も関与しており、こうしたプロジェクトがビルマ国民に与える悪影響(強制移住の可能性など)が深刻に懸念されているとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。

「中国政府の対ビルマ政策は、責任ある大国という看板と矛盾するものだ」と前出のリチャードソンは述べた。「支援対象を、人権侵害を繰り返す軍政幹部からビルマ国民へと変えれば、中国はビルマに有する権益・利益をよりうまく確保することができる。」

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