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ザンビア:劣悪な刑務所環境  被収容者に深刻な健康被害

刑事裁判の遅延、過密収容、劣悪な処遇で、結核とHIVエイズの蔓延が悪化

(ルサカ)-「ザンビアの刑務所では、被収容者たちが、栄養失調、過密収容、不十分な医療ケアに加えて、レイプや虐待に苦しんでいる。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日、「刑務所の医療ケアとカウンセリング協会」(PRISCCA)、「南部アフリカ・エイズと権利連合」(ARASA)と共同で発表した報告書で述べた。本報告書は、裁判審理開始までに何年も、こうした劣悪な環境下に被収容者が置かれることもある実態を明らかにしている。

報告書「理不尽と病気の巣窟:ザンビアの刑務所に蔓延するHIVエイズ、結核、虐待」(135ページ)は、ザンビアの刑務所当局が、必要最低限の食物や衛生施設、居住設備提供の義務さえ放棄している実態を取りまとめている。加えて、ザンビアには、迅速な裁判審理と上訴を実施する体制もなく、拘禁をできる限り回避する制度も存在していない。刑務所の劣悪な環境と乏しい医療体制の結果、HIV/エイズや結核(しばしば難治性で薬剤耐性、致死率が高い)の蔓延を招いており、これが被収容者のみならず、一般市民の生命をも危険にさらす結果となっている。

「ザンビアの刑務所で、人びとは飢え、せまい監房に詰め込まれ、看守や被収容者同士の暴力にさらされている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのエグゼクティブ・ディレクターであるケネス・ロスは述べる。「未成年者、妊娠中の女性、未決囚、受刑者にかかわらず、悲惨な刑務所生活を余儀なくされ、かつ薬の効かない結核やエイズに感染するという、深刻な生命の危険に直面している。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする3団体は、被収容者の権利尊重と公共衛生の実現に向け、刑務所環境と医療体制、及び刑事裁判制度を直ちに改善するよう、ザンビア政府と友好関係諸国に求めた。

被収容者は、多くの場合、裁判審理が終わるまで何年も刑務所で過ごすことになる。ザンビアでは、刑務所に収容されている人びとのうち3分の1以上が、有罪判決を受けた受刑者ではなく、未決囚や、その他の法的措置を待つ人びとである。ほとんどの場合、そうした人びとに弁護士接見や保釈の選択はなく、裁判官との初回の面接をするためだけでも何カ月も待たされている。入管法違反容疑で収容された人びとも、多くの場合、適正手続きなきまま、長期間の収容所暮らしを強いられている。

このような刑事裁判の遅延も、超過密収容の原因ともなっている。未成年者、成人、未決囚、既決囚、入管法違反関連での被収容者などが、同じ施設にいっしょくたに収容されており、あまりに窮屈なため、座ったまま寝たり、順番に寝ることを強いられている。また、支給される食料も全然足りず、セックスとの引き換えと化しているのが現状だ。入浴施設は汚水などで大変不潔で、石鹸もない。囚人の多くは制服も与えられずにボロをまとい、シラミだらけの毛布で寝る。

このような劣悪環境のために、伝染病(特に結核及び薬剤耐性結核)が、囚人たち及び一般市民の健康に対する深刻な脅威となっている。結核菌が蔓延する結核隔離房の環境は生命にかかわる劣悪さだが、一般房よりすいているという理由で、結核治療を終えた後も結核患者と共に居残る者が多い。また、HIV罹患率も高く、最新の調査では27%に上る。一部の刑務所においては、HIV検査や治療の改善がなされているものの、特に小規模な地方の刑務所では、依然そのレベルに大きな隔たりがみられる。加えて、コンドームの使用禁止措置が、HIV感染予防を事実上不可能にしている。

「人びとが次々に死んでいます」--元被収容者で、現在は被収容者の権利活動家である「刑務所の医療ケアとカウンセリング協会」(PRISCCA)代表ゴッドフレイ・マレムベカ氏は述べる。「政府には、被収容者に対して人道的な処置を保障する義務があります。今のような環境で生きていける人間はいません。」

身体に対する虐待は、被収容者の病状を悪化させるばかり。看守の中には、日常的に被収容者を暴行したり、せまくて暗い房に裸にして押し込め、最低限の食事しか与えない者もいる。更には、その房を水浸しにして追い討ちをかける。また、被収容者同士の暴力沙汰も頻繁にあり、特に農場刑務所でその傾向が顕著だ。性的虐待も日常茶飯事で、未成年者が房内で成人によってレイプされることもしばしばある。

刑務所における医療ケアは、存在しないに等しい。「ザンビア刑務所サービス」が派遣した医療従事者は、1万5,300人の被収容者に対しわずか14人で、また、国内に86ある刑務所のうち、診療所あるいは病室を備えているのは、わずか15施設にすぎない。また、ほとんどの場合、被収容者は所外医療施設での受診を許可されることはない。医療資格のない看守や被収容者仲間による勝手な判断や、移動手段の不足、あるいはセキュリティー上の看守の個人的な懸念などが、その理由だ。

本報告書ではザンビア政府に対して、全86刑務所に医務官を配置することで、迅速に医療体制を改善するよう強く求めている。同時に、保釈、仮出所、拘束を回避する刑罰を活用することで、刑務所内の過密状態を緩和するよう訴える。その上、国際機関や援助国と協力して、HIVや結核の検査と治療を含む所内の医療サービス拡充、所外医療機関での受診アクセス改善、所内環境全般の改善と身体の虐待の中止、並びに刑事裁判の迅速化をザンビア政府に要請している。

「南部アフリカ・エイズと権利連合」(ARASA)代表のミカエラ・クレイトン氏は、「ザンビア政府は、刑務所内の環境保全や医療ケア改善に向けて、今こそ行動せねばならない」と述べる。「被収容者の健康状態改善は、引いては公衆衛生保護にも繋がるものだ。なぜなら、被収容者や刑務所職員たちは、町や村から完全に遮断されているわけではないのだから。囚人たちから司法による正義の実現や医療ケアを奪い取ることは、私たちの社会全体を危険にさらすことに他ならない。」

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