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タイ:出稼ぎの外国人労働者が殺人、恐喝、労働権侵害に直面

今年2月の労働許可更新締め切りが、労働者搾取の引き金になる恐れ

(バンコク)-本日発表された報告書でヒューマン・ライツ・ウォッチは、国外からの出稼ぎ労働者とその家族に対する、警察の不当な扱いや差別的な法律・政策を即刻中止するようタイ政府に求めた。現在100万人以上の外国人労働者が、2月末までに「国籍照合」プロセスに登録するか、さもなくば即刻国外退去という状況にある。これは、この先の更なる外国人労働者虐待の引き金となりかねず、同政府はこのプロセスが公平な形で実行されるまで、登録締め切りを先延ばしすべきだ。

本報告書「トラから逃れてもワニが待っている:タイにおける外国人労働者の搾取と虐待の実態」(124ページ)は、ビルマ、カンボジア、ラオスといった近辺諸国出身の82人の外国人労働者に対する聞き取り調査を基にして作成された。殺人、拘禁中の拷問、恐喝、性的虐待、それに人身売買、強制労働、団体活動制限といった労働権侵害など、タイ国内の出稼ぎ労働をめぐる広範で深刻な人権侵害の実態を、これらの証言が浮き彫りにしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは、「外国人労働者はタイ経済に大きく貢献しているにもかかわらず、虐待と搾取からの保護は最小限にとどまっている」と述べた。「これらビルマ、カンボジア、ラオスからの人びとは悪徳公務員や警察、節操のない雇用主、暴漢の手にかかり、ひどい痛手をこうむっている。外国人労働者をいくら痛めつけても、何も起こらないとタカをくくっているのだ。」

タイ政府が、2月末までに外国人労働者が「国籍照合」プロセスに登録しなければ、逮捕するか国外退去に付すると決定したことから、人びとは差し迫った脅威に直面している。タイ国内の出稼ぎは、80%がビルマからのものだ。同国での民族的・政治的対立問題により、ビルマ出身の外国人労働者は特に危険な状況にある。しかも、この「国籍照合」にかかる費用は2、3カ月分の給料に当たり、ビルマ出身の外国人労働者にとってはとても支払える額ではない。

タイ政府による非現実的なこれらの取り決めは、複雑で一貫性のない「国籍照合」プロセスも含め、ビルマへの大規模な強制送還へつながる恐れがある。これが元となって、根の深い人権・労働権侵害という結果を招きかねない。

警察は何の処罰を受けることもなく、外国人労働者を虐待している。ビルマ人労働者がヒューマン・ライツ・ウォッチに証言したところによると、ラノーンで警官が、繰り返しビルマ出身のある若者の胸を蹴って殺したという。若者が警察の取調べに応じなかったのが、その理由だった。

「多くのビルマ人がその様子を見ていたけど、誰も助けようとはしなかった。皆警察を心から恐れているから、殺害についても何も言わなかったのよ。警察に目撃したことを伝えた人間もいないわ」と目撃者であるビルマ人女性は語った。「目の前で起こったことを見て、私たちはいつも、タイ警察におどおどしていないといけないんだって感じた。ビルマ人の誰もかれも、この国では何の保証もないんだって感じたの。」

地元警察や関係当局は、人びとからの被害申告を無視したり、適当にあしらうのが常となっている。外国人労働者たちは仕事先を変えたり、指定地域外へ移り住んだり、数人と会合を開くことを厳しく制限されており、これに加えて、州条例や国内法が権利主張のための団結を禁じていることが追い討ちとなって、人びとは搾取や不当な扱いに対して脆弱な立場にある。

もう一人の証言者がヒューマン・ライツ・ウォッチに伝えたところでは、武装した男二人が仕事場のゴム工場で、夫を彼女の目前で射殺し、その後彼女をレイプした。警察は、犯人たちを割り出すどころか、捜査をすることさえもなかった。

「私はビルマからの出稼ぎに来た人間です。だから警察はおかまいなしなんです。夫と私は取るに足らない外国人労働者で、ここでは何の権利も持たないってことなんです。」

外国人労働者は常に、警官による恐喝におびえている。外国人労働者は、警察につかまると、釈放と引き換えに警察から現金や貴重品を要求されることが常となっているからだ。一回の恐喝で、1~7カ月分の稼ぎを失うこともめずらしいことではない。

前出のアダムズは、「関係当局者や警官の多くは、外国人労働者を歩くATMさながらに扱っている」と述べた。「外国人労働者の搾取・虐待は構造的な問題で、彼らはことあるごとに、外国人労働者から搾取し、虐待するシステムの一部に過ぎない。」

州知事が発した州条例の中で、外国人労働者の立場をより脆弱なものにする問題点には、次が挙げられる。例えば、携帯電話やバイクの使用禁止、厳しい移動制限、労働者集会の違法化、夜間外出禁止など。これらの厳しい法律は、外国人労働者の国間移動をタイ政府が、経済的、環境的、政治的なグローバル化現象の一部としてではなく、国内の治安問題とみなしていることの表れといえる。

「もしアビシット政権が真に改革派なのであれば、これらの州法令を即刻廃止すべきだろう。外国人労働者を囚われの身にして仕事場に縛りつけ、外部世界との接触を完全に絶ち切ってしまう法令なのだから」と、アダムスは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはタイ政府に対して、警察と他の関連当局による外国人労働者への虐待行為を調査するための独立・公平な委員会の設立を求めた。この調査委員会は、証人召喚、証拠提出要求、そして権力濫用に対する刑事訴追・民事責任追及の勧告などの権限を有するべきである。定期的に報告書を作成し、公にすることも肝要だ。

「タイにいる外国人労働者にとって、人生はあまりに不確かで危険だ。死に物狂いで窮地を抜け出したと思ったとたん、また次がやってくるといった具合に」とアダムズは述べた。「外国人労働者は、タイにあることわざの生きた証なのだ-トラから逃れたと思ったら、お次はワニ-外国人労働者の命はそれほどはかない。」

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