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スリランカ:タミル・イーラム解放のトラが本拠地で民間人を虐待

強制徴兵と移動制限が人びとの生命を危険にさらす

(ニューヨーク)-スリランカの分離独立派タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)が、北部の本拠地ワンニに住むタミル人に、強制徴兵や過酷な強制労働、同地からの移動制限などを課して民間人の生命を危険にさらしている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書で述べた。

17ページの報告書「閉じ込められ、虐待される民間人たち:ワンニでのLTTEによる虐待」は、LTTEが支配地域に住むタミル人に残虐な人権侵害を行っている実態を詳細にまとめている。タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)は、タミル人国家の独立を求めて25年に渡り戦い続けている反政府武装組織である。

「LTTEはタミル人のために戦っていると主張するが、実は、ワンニの民間人の苦しみの多くの原因はLTTE自身にある」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは述べた。「LTTEは、タミル人のために戦いだと言っておきながら、政府軍の前進で支配地域を失う中、肝心のその人々への虐待を悪化させている。」

政府軍攻勢が続く中、LTTEは、支配地域に住む民間人に対する圧力を増してきた。LTTEは自分たちの支配地域から民間人が逃げ出さぬよう強制的な通行管理を長く行なってきたが、現在では、医療の緊急事態を除き、人々がワンニの外に出る事を完全に禁止。避難民たちが政府支配地域に避難することを禁止するこのLTTEの政策のため、避難民たちは、必要不可欠な人道援助にアクセスすることが非常に困難になっている。2008年3月以降、わずかに約1000名しか本紛争地域からの避難に成功していない。

「基本的人権たる移動の自由を認めず、数十万という人々をLTTEは危険な戦争地域に閉じ込めている。」と、アダムスは述べた。

LTTEは長いこと兵士の強制徴集を行なってきた。最近、子どもを含む若い男女のLTTE軍への強制徴集が激増。LTTEは、支配地域で長く続けてきた「1家族1名」の強制徴集政策を、最近さらに過酷に変更。現在では、時に、1家族につき2名、場合によってはそれ以上の家族の入隊を強制している。

「LTTEの強権的支配の下に閉じ込められた一般のタミル人たちは、兵隊として強制徴集され、前線近くで危険な仕事をさせられている」とアダムスは述べた。

国際的な圧力の高まりなどにより子ども兵士の徴兵は減少していたが、最近の情報によると、LTTEがワンニでの子ども兵士の徴兵を再び強化している。LTTE幹部は、学校に通う14歳から18歳の子どもたちにLTTE軍への入隊を強く要求してきた。LTTEは、多くの場合、17歳の子どもを軍事訓練に送る。子ども兵士を徴集している事実が人権保護団体に報告されてしまう前に、その若者が18歳になり、子ども兵士とは見なされなくなるのを明らかに計算に入れているのである。

「昨年、LTTEは1990年生まれの子どもを徴兵した。今は、1991年生まれの子どもを徴兵している。」と、ワンニからの人道援助機関のある職員はヒューマン・ライツ・ウォッチに述べた。「LTTEは一家の身分証明書を見て、その年齢の若者を徴兵する。軍に参加させたい年齢の子どもたちが逃げてしまった場合には、その少年少女が入隊するまで、もっと幼い子どもや父親を徴兵する。」

過去25年間、LTTEは膨大な数の民間人を殺害し、スリランカ内外で政治的暗殺を実行し、自爆攻撃を行なってきた。少数民族タミル人コミュニティー内でLTTEに政治的に反対する勢力のほとんどを組織的に抹殺し、多くのジャーナリストやライバル組織のメンバーの殺害を実行。LTTEは支配地域で恐怖政治を行い、表現・結社・集会・移動の自由といった基本的人権を否定してきている。

本報告書「閉じ込められ、虐待される民間人たち」の中で、ヒューマン・ライツ・ウォッチはLTTEに以下を求めている。

● LTTE支配地域から移動する民間人に対する妨害をやめ、安全を求めて政府の支配地域に移る権利も含め民間人の移動の自由を尊重すること。

● LTTE軍入隊のための強制徴集を止め、拉致による徴集及び強制的徴集をすべてやめること。

● 18歳未満の子どもの徴集を全てやめ、軍事作戦で子どもを使用するのを止め、軍にいる全ての18歳未満の兵士及び徴集時には子どもで現在は18歳以上となった兵士をすべて解放すること。

● LTTEが「ボランティア」であると称する労働も含めて、人権を侵害する内容の強制労働や無給の強制労働をすべてやめ、全ての家庭にLTTEへの労働力を提供するように要求するのを止め、対する塹壕掘りやえんぺい壕作りなど軍事行動に直接関係する労働を民間人に強制することを止めること。

● 人道援助機関と国連機関に対するLTTE支配地域への安全かつ妨害なしのアクセスを認めること、そして、人道援助要員若しくは国連スタッフとして働くワンニの住民を含む人道援助機関及び国連の全要員の安全を保障すること。

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