(ニューヨーク)–アフガニスタンで必要不可欠な社会サービスに対する支援国の支援が縮小している。その結果、女性に欠かせない医療へのアクセスがより困難になってきていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチが本日発表の報告書内で述べた。2021年9月11日までにアフガニスタンの駐留米軍を完全撤退させると、ジョー・バイデン米国大統領が発表したばかりだが、今後数カ月に更なる削減計画が発表される可能性が高い。
報告書「『子どもは4人ほしい—もし生き残れていれば』:アフガニスタンにおける女性医療へのアクセス問題」(全39ページ)は、アフガニスタンの女性や少女が医療を受ける際の壁、国際的な支援の縮小による医療制度の劣悪化を現状を調査・検証したもの。国際度ドナーの援助の縮小は医療へのアクセスや質に影響するため、すでに多くの女性や少女の生活に有害(時に生命を脅かすほど)な影響が及んでいる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利局暫定共同局長ヘザー・バーは、「アフガニスタンを支援する国々は、外国駐留軍が撤退することでタリバンがより広範な支配権を手にすることになるのかを見極めようと、待ちの姿勢に徹している」と指摘する。「しかしこうした現状は、安全とはいえないタリバン支配地域でも、支援団体がなんとかこれまで提供してきた必要不可欠の社会サービス資金を削減することの言い訳にはならない。」
本報告書の作成にあたり、ヒューマン・ライツ・ウォッチは3月と4月に、アフガニスタンで56人に聞き取り調査を実施した。対象者は自身の医療経験を語った女性34人、医療分野で働くアフガン市民18人(公衆衛生相を含む)だった。
この20年間アフガン政府は、医療などの重要な社会サービスの提供において、国際社会の支援に依存してきた。しかし、こうした支援はここ数年縮小し続けており、今後はこの傾向が加速する可能性が高い。2013年、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会加盟国は、アフガニスタンの医療および住民の援助に1億4,100万米ドルを拠出したが、この数字は 2019年までに26%減の1億500万ドルになった。
短期的にアフガン政府が自給自足に移行できる可能性はほとんどない。国家予算の75パーセント超が国際社会のドナー支援で賄われているのが現状だからだ。2020年は主に新型コロナウイルス感染症パンデミックによる景気後退が原因となり、持続可能な歳入が前年比で2.8%減少した。
各病院は基本的な医療品の支払いに必要な資金の不足により、以前は無料だった医療品代を請求するようになった。多くの患者はこうした料金や、遠く離れた医療施設に行く交通費さえも支払う余裕がない。出生前健診や熟練者による出産アシストなど、いくつか重要な指標となる分野の進展は停滞しているか、そうでなければ後退している状態だ。
首都カブールの北東部に位置するカピサ州のある医師は、「タリバンの支配下にあり、人びとは貧しく、仕事もありません」と語る。「診療所は地元住民のいる場所から遠く離れたところにあるので、[出産する女性]が死ぬか、赤ちゃんが死んでしまうことも多々あります[後略]。みな、当センターや公立病院にやって来るための交通費さえ持ち合わせていないのです。それに公立病院だって無償ではありません。」
女性や少女は、医療や家族計画に関するもっとも基本的な情報を得ることにさえ苦労している。現代的な避妊方法へのニーズは満たされておらず、出生前・産後健診もしばしば利用できない状態で、現代的なガン治療や不妊治療、メンタルヘルスケアでも同様だ。子宮頸がんや乳がん検査といった通常の予防ケアもほとんど耳にすることはなく、出産の大部分は未だ専門家の立会いもなく行われている。
現代的な避妊方法へのアクセスが十分ではないために、女性はしばしば望むより多い子どもを育てており、関連医療も不足していることから妊娠自体にリスクが伴う。加えて、現代的な技術をもってすれば本来より安全なはずの医療は受けられない。したがって、妊産婦と乳児の死亡率は依然として非常に高いままだ。
発表された駐留米軍の撤退に加えて、その他のNATO加盟国も米国と足並みを合わせて駐留軍の撤退を計画をしている。聞き取り調査に応じた人びとは、タリバンが自分たちの暮らしをますます支配するようになること、すでにひどい暴力レベルがエスカレートすることへの恐れを訴えた。タリバン支配の拡大および暴力の高まりが、女性の保健を含むアフガニスタンへのドナー支援に影響を及ぼしているのだ。
アフガニスタン支援国は女性や少女のための医療などにおいて、火急のニーズを最優先することが重要だ。米国ほかアフガニスタンに軍隊を駐留させている国々は、援助の必要性と在留軍撤退の決定が全く別のものであることを前提に、支援提供へのコミットメントを検討・評価する必要がある。アフガニスタンのニーズの高さと緊急性を十分に理解すべきであり、国際的支援の必要性がかつてないほど高まっている今、政治的、安全保障上の進展を理由に撤退を正当化してはならない。
バー暫定局長は、「この重要な瞬間に、家族を養うか自らの健康のための医療を受けるか、どちらかしかないという残酷な場面にしばしば直面しているアフガニスタンの女性を見捨てるという選択はない」と述べる。「医療制度への国際的な資金援助は生きるか死ぬかの問題であり、縮小されるたびに女性が犠牲になっていくことだろう。」