Skip to main content
寄付をする

新型コロナウイルスの関連アプリがもたらす重大な人権リスク

感染拡大対策としてテクノロジー使用を検討中の政府への提言

© Getty Images

(ニューヨーク)– 新型コロナウイルス感染症(Covid-19)との闘いで各国政府が使用しているモバイル端末の位置追跡プログラムが、人権に重大リスクをもたらしている、としてヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、詳細な一問一答集を明らかにした。パンデミックを制御する上での有効性がまだ証明されていない数々のプログラムは、公衆衛生を隠れみのにした不必要かつ過度な監視措置につながる可能性を秘めている。

一問一答集「モバイル端末による位置追跡データとCovid-19」では、携帯電話ほかの端末から得られる位置情報や接近情報を、各国政府がどのように使用しているかを検証するとともに、これがプライバシー権におよぶリスクについて検証した。中国、イスラエル、韓国、米国、そのほか世界各国の政府がこれらのテクノロジーをどのように使用しているかを調査し、モバイル端末の位置追跡データを使用するツールやプログラムがもたらす人権リスクを評価するための提言と指針を明らかにした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのデジタル権利担当上級調査員デボラ・ブラウンは、「権利の制限のなかには、公衆衛生上の緊急事態ということで正当化できるものもあろう。しかしプライバシーを犠牲にして、未実証のテクノロジーのために個人情報を引き渡すよう人びとは要求されている」と指摘する。「パンデミックの封じ込めで社会活動を再開することは重要な目標だが、これは過度な監視なしにも実現できる。」

世界中の政策立案者にとって人命と公衆衛生をまもることはもっとも重要な関心事であるが、政府も民間も、実証もテストもされていないテクノロジーを促進・使用すべきではない。非常事態対応の長い歴史は、監視が導入された場合、過剰なのに目的は達成できないのが常で、ひとたび承認されれば、何かと理由がつけられて維持されることが多いことを示す。パンデミックが制御され、ワクチンが利用できるようになるまでの一時的な措置を意図したモバイル端末の位置追跡プログラムでも、拡大された監視体制として恒久化する可能性もある。

プライバシーの過度な妥協は、移動・表現・結社の自由といった諸権利が損なわれる入り口だ。携帯電話ネットワークのデータ分析により、きめ細かくリアルタイムでターゲットを定められることになり、政府はこれを利用して厳しい隔離措置を課すこともできる。これは、データの収集・保存・使用にかんして、透明性および意味ある規制がない場合に特に問題になる。中国政府ロシア政府などの強権的監視体制をすでに敷いている政府の手にかかれば、差別や弾圧が強まる可能性もある。

また、新型コロナウイルス感染症対策でモバイル端末による位置追跡に過剰に依存すれば、インターネットやモバイル端末テクノロジーに安定したアクセスを持たない社会から取り残されてきた人びとの健康と生活が脅かされかねない。移住労働者、難民、路上生活者といった人びとのコミュニティの一部は、アプリの精度に支障をきたすほど密集した状態で暮らしている。加えて、何十年にもわたって強権的監視と弾圧に苦しんできた人びとは、そもそもこうした追跡テクノロジーを全く信頼しない可能性も高い。

人工知能と人権担当上級調査員のエイモス・トーは、「モバイル端末による位置追跡は、パンデミックを2層対策としてしまい、特に貧しく弱い立場に立たされた人びとを取り残す恐れがある」と指摘する。「マイノリティなど社会から取り残されたグループからの有意義なインプットなしには、テクノロジー主導の対策は、ウイルスからの特に大きな被害に直面している構造的不平等を拡大する可能性が高い。」

新型コロナウイルス感染症の追跡が、国際人権基準の必要性と比例性の基準を満せるかについて重大な疑問が残る。各国政府はまず、このようなテクノロジーを使用する前にまず科学的に正当化できるか、また個人の感染リスクを誤認したり、社会に誤解を与えないかなどの、より根本的な問いに答えるべきだ。また、諸権利の侵害度合いがより少ないパンデミックとの闘い方についてもアセスメントするべきだ。たとえば、人が行う接触追跡や正確な検査・治療へのアクセスの拡大など、すでに実証されている封じ込め方法などだ。

ブラウン上級調査員は、「データテクノロジーを使った対策に移行する前に、私たちは基本的な問いに立ち返るべきだ。はたしてそれは機能するのか、自由や健康はどの程度犠牲になるのか」と述べる。「確かに素早い対応が求められてはいるが、パンデミックの中で性急にものごとを進めて破壊的結果をもたらすことは避けなくてはならない。」

GIVING TUESDAY MATCH EXTENDED:

Did you miss Giving Tuesday? Our special 3X match has been EXTENDED through Friday at midnight. Your gift will now go three times further to help HRW investigate violations, expose what's happening on the ground and push for change.
タグ