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中国:天安門事件の弾圧 30年後の今日も続く

犠牲者への不正義続く、でも粘り強く闘い続ける活動家たち

Dong Shengkun weeps as he recalls being present at the scene seen in the photo when tanks ran down students taking part in the 1989 pro-democracy protests during an interview in Beijing on April 28, 2019.  © 2019 AP Photo/Ng Han Guan

(ニューヨーク)– 1989年6月に民主化を求めるデモをしていた大勢の人びとを虐殺したことについて中国政府は責任を取るべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。中国政府当局は天安門事件を想起しようとする活動家や当時の犠牲者の家族に対する嫌がらせをすべて止めるべきである。

天安門虐殺の30周年記念日に、ヒューマン・ライツ・ウォッチは長年途方もない抑圧を受けながらもさらなる自由と正義を求めて声を上げてきた人びとのプロフィールを発表する。

「天安門虐殺から30年経った今も、中国当局は当時の残虐行為を認めようとも、犠牲者やその家族を公正に扱おうともしていない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当調査員であるヤチウ・ワンは述べた。「天安門事件の隠蔽と中国全土での弾圧強化を前に、活動家たちは人権を求めて戦う決意をいっそう固めている」

天安門事件30周年を前に、当局は事件を記念する動きを未然に防ぐために厳戒態勢を敷いている。

 

  • 5月下旬以降全国で、当局は活動家たちに監視下での「休暇」をとらせるため地元を離れるよう強制している。北京では5月28日、活動家のフー・ジャア(胡佳、Hu Jia)氏が自宅のある北京から300キロ以上離れた港町の秦皇島市に連れて行かれた。
  • 5月下旬以降、当局は「天安門の母」のメンバー数人を自宅軟禁にしたり、移動や通信を制限したりしている。「天安門の母」は天安門虐殺の犠牲者の遺族が組織する非政府団体で、息子が殺されたジャン・シャンリン(Zhang Xianling)氏(81)やディン・ズィリン(丁子霖、Ding Zilin)氏(82)もメンバーである。
  • 四川省の警察は5月17日、天安門虐殺に触れる写真をツイートしたとして独立の映画製作者デン・チュアンビン(鄧傳彬、Deng Chuanbin)氏を逮捕した。
  • 安徽省の警察は5月16日、反体制派で天安門事件にも参加したシェン・リャンチン(Shen Liangqing)氏を「喧嘩を売り騒ぎを起こした」として逮捕した。
  • 4月、四川省の裁判所がチェン・ビン(陳兵、Chen Bing)氏に三年六カ月のを宣告した。氏は天安門虐殺の日付である「89.6.4」と同音となる「銘記八酒六四」という酒を製造、販売した容疑でフ・ハイル(符海陸、Fu Hailu)氏、ルオ・フユ(羅富誉、Luo Fuyu)氏、ジャン・ジンヨン(張隽勇、Zhang Jinyong)氏と共に2016年5月に逮捕された。チェン・ビン氏以外の三人は執行猶予となったが、釈放の際に警察は三人に電子監視装置を常に手首に付けておくよう求めた。

 

天安門虐殺は、中国のインターネットにおいて未だにもっとも検閲の対象となる項目の一つである。2019年にトロント大学と香港大学が行った研究によれば、虐殺に言及する少なくとも3,237語のキーワードが検閲されている。当局は4月、カメラメーカーのライカの宣伝動画を各ウェブサイトから削除するよう求める検閲命令を出した。動画は有名な「戦車男」の映像を使っていた。同月、1990年の香港ポップス曲『人の道(Human’s Path)』が、歌詞が天安門事件に間接的に言及しているだけであるにもかかわらず、アップル・ミュージックを含む中国のインターネット上の各音楽配信ショップから消去された。

1989年の民主化デモ関与を理由に投獄されていた最後の一人とされるミャオ・デシュン(苗徳順、Miao Deshun)氏は2016年に解放されたが、下記の通り、当時の参加者の多くは民主化運動を続けたために再び投獄中だ。

 

  • リウ・シャンビン(劉賢斌、Liu Xianbin)氏は北京の中国人民大学の学生として天安門広場でのデモに参加した。四川省の裁判所は2011年3月、政府を批判する記事を出版し政治問題を取り上げる行事を企画したことが「国家政権転覆扇動」に当たるとして氏に10年の刑を宣告した。1991年には、氏は弾圧に対する抗議が「反革命」に当たるとされて30カ月の刑を宣告されていた。また中国民主党を組織しようとしたため99年から2008年まで「国家政権転覆扇動」の罪で投獄されていた。
  • チェン・ウェイ(陳衛、Chen Wei)氏は北京理工大学の学生として天安門広場でのデモに参加し、1990年12月まで投獄された。2011年、中国政府当局に批判的な記事を書いたことが「国家政権転覆扇動」に当たるとして四川省の裁判所に9年の刑を宣告された。92年から97年までは、中国自由民主党を設立しようとした罪で5年間投獄されていた。
  • チェン・ビン(陳兵、Chen Bing)氏はチェン・ウェイ氏の双子のきょうだいで、四川省の西南石油大学の学生として北京の学生に連帯して現地でデモを組織した。2019年4月、氏は天安門事件を記念する酒を作った罪で三年六カ月の刑を宣告された。
  • チェン・シ(陳西、Chen Xi)氏は1989年当時、貴州省貴陽市の金筑大学の事務職員だった。氏は全国に広がった民主化運動を支援するため貴陽市で愛国民主連合を設立し、そのため3年間投獄された。貴陽市の裁判所は2011年、中国共産党を平和的に批判した氏に「国家政権転覆扇動」の罪で10年の刑を宣告した。1995年から2005年までは、中国民主党を組織したために10年間投獄されていた。
  • ファン・チ(黄琦、Huang Qi)氏は天安門事件当時成都で働くビジネスマンで、現地でのデモに参加したり学生活動家に財政援助をしたりしていた。のちに「六四天網」という人権ウェブサイトを設立した。氏は「国家機密を外国に不法漏洩した」として2016年11月以降拘束されている。2000年から05年までは「国家政権転覆」の罪で、また2008年から11年までは「国家機密の不法保持」の罪で投獄されていた。氏は複数の健康問題に苦しんでいるが、適切な医療を受けることを認められていない。
  • リ・ビフェン(李必豊、Li Bifeng)氏は1989年当時、成都で詩人として活動しており、北京の学生を支援するため現地でデモを組織した。のちに「反革命」の罪で5年の刑を宣告された。四川省の裁判所は2013年、冤罪が疑われる「契約詐欺」の罪で氏に10年の刑を宣告した。氏は1998年から2005年まで詐欺罪で7年間投獄されていた。多くの人権団体は、氏は実際には四川省全域での労働者による大規模な抗議行動を警察が暴力的に解散させたことを国際人権団体に伝えたために訴追されたのだと考えている。
  • ジョウ・ヨンジュン(周勇軍、Zhou Yongjun)氏は中国政法大学の学生だった1989年当時、天安門広場でのデモの指導者の一人だった。人民大会堂の階段に跪いて政治改革を始めてほしいと党指導者に訴える3人の学生の写真があるが、氏はその3人のうちの1人である。のちに2年間投獄された。2018年8月、広西省の警察が氏を逮捕し、「国家政権転覆扇動」の容疑で起訴した。それ以前に、氏は1998年から2001年まで労働改造所に3年間収容され、また2010年から15年までは詐欺罪で四川省の刑務所に5年間投獄されていた。
  • チェン・シュチン(Chen Shuqing)氏は1989年当時浙江省の杭州大学の大学院生で、杭州市でデモに参加していた。「国家政権転覆」で有罪となり、2014年9月から10年6カ月の刑に服している。2006年から10年までは「国家政権転覆扇動」の罪で4年の刑に服していた。どちらの有罪判決も中国共産党を批判する記事をインターネット上で出版したためである。

 

天安門虐殺は、1989年4月に学生や労働者をはじめとする人びとが表現の自由、説明責任、腐敗の終わりを求めて北京の天安門広場のほか中国の諸都市で平和的な集会を始めたことが引き金だった。次第に強まる抗議行動に対し、政府は1989年5月に戒厳令を宣言することで応じた。

6月3日と4日に軍が発砲し、平和的なデモ参加者や居合わせた無数の人々を殺した。北京では、軍による武力行使に対して軍の車列を襲ったり車両を燃やしたりした市民もいた。虐殺に続いて政府は全国で弾圧を行い、「反革命」のほか社会秩序擾乱や放火などの容疑で数千もの人を逮捕した。

中国政府は虐殺について責任を認めたことはなく、政府関係者の法的責任を追及したこともない。事件の捜査や、殺害された人のほか負傷や「失踪」した人、投獄された人についての情報開示も行おうとしたことがない。殺害された人の遺族を中心として組織された非政府団体「天安門の母」は、民主化運動の弾圧によって北京などの都市で殺された202人の詳しい情報を明らかにしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、習近平国家主席率いる中国政府に対し、天安門事件の30年に際し事件に関連して起きた人権侵害に対処するよう求める。中国政府は具体的には以下を行うべきである。

 

  • 表現の自由、結社の自由、平和的集会の自由それぞれを享受する権利を尊重し、天安門事件の公式解釈に異議を唱える個人に対する嫌がらせや恣意的拘禁をやめること
  • 「天安門の母」のメンバーに面会および謝罪すること。事件による死者全員の氏名を公表し、遺族に適切な補償を行うこと
  • 天安門事件について独立した公開調査の実施を認め、調査の結果と結論を直ちに一般に公開すること
  • 天安門事件との関係が理由で国外追放されている中国国民の自由な帰国を認めること
  • 平和的なデモ参加者に対する殺傷能力のある武器の不法使用を計画または命令した政府および軍の関係者全員を捜査し、適切に訴追すること

 

「天安門運動の精神は、より公正な中国を求めて闘う当時の参加者、そしてより若い世代の活動家の心の中で燃え続けている」と前出のワンは述べた。「習近平国家主席は、途方もない迫害を受ける恐れがある中でさえも、説明責任と人権に対する人びとの要求は強いままであることを認めるべきである」

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