A mural in Xinjiang reads "Stability is a blessing, Instability is a calamity," Yarkand, Xinjiang Uyghur Autonomous Region, China on September 20, 2012. 

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(ニューヨーク)- 中国政府は、親が恣意的に拘禁されたために、新疆ウイグル自治区の児童養護施設に収容されている子どもたちを親族のもとへ返すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

フィナンシャルタイムズ紙AP通信は、親が拘禁されているチュルク系イスラム教徒の子どもたちが、親族から引き離されて政府系養護施設に収容されていると報じている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2018年9月に発表した新疆ウイグル自治区の大量拘禁に関する報告書でもこうしたケースを詳細に指摘した。中国の「暴力的テロ猛撃キャンペーン」のもと、同自治区の不法な政治再教育収容所に収容されているチュルク系イスラム教徒は100万人と推定されるが、強制収容や刑務所に恣意的に拘禁されている数ともなるとはっきりしていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中国担当部長ソフィー・リチャードソンは、「中国当局は、新疆ウイグル自治区の政治的被拘禁者たちの子どもの一部を政府系施設に残酷なかたちで収容している」と指摘する。「これは、物質的な幸福の名の下に、チュルク系イスラム教徒の子どもを親族から引き離す、政府のひどいプログラムの一環にほかならない。」

2016年11月、新疆ウイグル自治区の陳全国(Chen Quanguo)中国共産党委員会書記は地方関係当局に対し、当該地域の開発イニシアチブの一環として、2020年までにすべての孤児を施設に収容するよう命令。その命令には、以前は「ばらばらに」親族がケアしていた孤児の「集中」(集中收养)、ならびに「生活水準を向上させる」ための施設収容が含まれていた。

地域の方針では孤児を「両親を失った、または両親が見つからない子ども」と広く定義しているが、一部の地域ではこれに拘禁されていたり、投獄されている両親の子どもも含まれる

2017年1月に施行された新疆ウイグル自治区の地域内実施政策は、政策が孤児とする子どもを積極的に政府系養護施設に「導く」よう、地元政府職員に奨励している。具体的には既存施設の収容可能な定員を満たしたり、施設を改装、または新たに建設したりするというものだ。メディアの報道によると、新しい施設の一部は100人超を収容可能だという。政府の目標は、2017年〜2020年の間に、同自治区の「孤児」の施設収容率を24%から100%にすることだ。

地域政策はその対象を「施設入所を希望する」子どもと一般的に描写しているが、同意についての詳細には言及していない。政府機関が決定に際して考慮する希望が子ども本人のものを意味するのか、親かはては親族のものなのかは不明だ。また、こうした同意あるいは決定への異議申立てをめぐる手続きも明確ではない。

2017年9月の地方政府の報告によると、保護者が施設送りを希望しなければ、子どもはそのままとどまれるとしている。しかし、満たさなければならない厳しいノルマを割り当てられた地方自治体が一部にある。ジムサル県では政府職員に対し、2017年10月までに30人の孤児を施設に送るノルマが課された。キュネス県では政府職員が同様に、2017年11月までに60人の孤児を施設に収容することを命じられ、そうでなければ不利な立場に置かれることになると伝達されている。バイリンゴン・モンゴル自治州では、ある政策報告がこれらのノルマを果たす難しさを認めている。「孤児の保護者は祖父母などの血縁者であり[中略]保護者は子どもの施設送りを望んでいない。保護者と子どもたちは長期的に離れ離れになることを望んでおらず、施設が子どもにとって安全な場所だと信じてもいない。」

中国の養子縁組法第4条は、孤児を「14歳未満の両親を失った子ども、両親が見つからない子ども、特別な困難から子育てができない両親の子ども」と定義している。未成年の保護に関する国内法第43条には、民生部(訳注:総務省)が設置した児童養護施設に孤児をケアする責任が定められているものの、政府当局が親族から子どもを引き離して政府系施設に収容することや、そのための法的手続きについて定めた国内法は存在しない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチなどがこれまで文書化してきたたように、新疆ウイグル自治区に暮らすチュルク系イスラム教徒の少数民族共同体の文化的アイデンティティに対する政府の継続的な攻撃に照らすと、家族・親族の希望に反して子どもが施設に収容されているという報告は特に憂慮すべきものである。学校ではすでに子どもたちが宗教を学ぶことを禁じられ、北京語教材の使用が推奨されて民族固有の言語が徐々に消滅しつつある。イスラム教に関する宗教的な実践も同様に圧縮されてきた。

中国政府も批准している子どもの権利条約の前文は、子どもの成長および福祉にとって家族こそが自然な環境であると謳う。同条約は各国政府に対し、「児童がその父母の意思に反してその父母から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件として適用のある法律及び手続に従いその分離が児童の最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない」ことを保障するよう義務づけている。このような決定が、親の虐待または放置など、一定のケースで必要となることはあるだろう。

しかし、代替的養育の手配が必要な場合でさえも、近しい血縁者による養育が優先されるべきだ。家族の養育から子どもを引き離すことは通常、最終手段であり、可能な限り一時的かつ最低限でなければならない。政府職員は自分の意見を言える子どもに自由に表現する権利を確保し、自らに関係する意思決定を保障する必要がある。子どもの意見は年齢や成熟度に応じて適切に配慮されるべきだ。

代替養育に関するすべての決定は、望ましい状況が十分に考慮されなくてはならない。具体的には原則として、これまで暮らしていた居住地に可能な限り近いこと、子どもの家族との連絡や再統合を促進すること、教育・文化的および社会的生活の中断を最低限にとどめることなどがある。

この数カ月間に、新疆ウイグル自治区における大規模かつ組織的な人権侵害に関する情報が伝わったため、国連機関や各国政府ほかが中国政府の政策について懸念を表明していた。米国は、同自治区の各関係者や組織への制裁措置の発動を検討中だ。ドイツとスウェーデンはウイグル系中国人の本国送還を一時的に停止している。しかし各国政府は、重大な人権侵害の証拠を収集し、責任を問うための国際的グループを設置して、より強力な措置をとっていく必要がある。

リチャードソン中国担当部長は、「新疆ウイグル自治区の子どもたちを不必要に政府系養護施設に収容することで、当中国政府の「猛撃」で子どもが受けたトラウマを当局がさらに悪化させている」と指摘する。「これまで同自治区における中国政府のふるまいに憤りを覚えなかった各国政府も、今度こそ、その方針を即時変更し、これら政策の長期間におよぶ害を少しでも軽減するよう、中国政府に強く求める時がきている。」