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(2015年8月4日)イラクのドホークでは、道行くドライバーたちにあることを思い出させるポスターの数々がまだ貼られています。昨年8月3日、過激派組織イスラミックステート(以下IS)がシンジャル山周辺で、クルド系少数宗派ヤジディ教徒に対し、大規模な攻撃を展開したことです。結果、ヤジディ教徒の一般市民が何千人も犠牲になり、囚われた女性たちがIS戦闘員の性的快楽のためにその身を売られてしまいました。

ISの動画のひとつに、サリフ・バラカットさんという老人の姿があります。2人の親族が押す手押し車の上に座り、IS戦闘員に何かを懇願したあと、薬の袋をつかもうとする映像です。

その後の彼の命運は、数カ月後に判明しました。昨年12月に、クルド人自治区の治安部隊ペシュメルガと地元ヤジディ教徒によるボランティア部隊が、Sununeの町を奪還。その際、町の溝に、朽ち果てた3人のなきがらと手押し車を発見しました。

その後、更にむごたらしい真実が明るみに出ます。町のすぐ西側で37人の犠牲者が見つかったのです。

ISがこの37人の身分証明書を持ち去ってしまったのみならず、遺骨も動物たちに荒らされてしまい、被害者たちの身元はわかっていません。付近に住んでいた少年カーン・スールさんは、かつて自宅のドアを開けるのに使っていた鍵が遺骨とともにあるのを確認しました。しかし、かき集められてドホークの法医学センターに送られた遺骨のどれが、自分の父親のものであるかを特定するには、大変なDNAテストを行うしかすべがありません。

集団埋葬を検証する国際的な専門家による支援は、今回の殺害現場の証拠の保存・分析をしているクルド当局のもとにまだ届いていません。わたしは、Sununeとそこから更に北のBardiyaにある7つの現場を訪れました。しかし地元住民は、Hardanにある戦線付近には、多ければ更に6つの集団埋葬地があると言います。更に、いまだISの掌握下にあるシンジャル山南部地域にも、12の埋葬地が存在するとしていて、これらの現場では遺体が放置されたままです。

ISによる拉致から逃れ、ペシュメルガが支配する地域に逃げてくるヤジティ教徒の女性や少女もまだいます。ドホークのジェノサイド委員会が、これら女性・少女から拉致やレイプなど証言を聞き取り、記録を残しています。でも、被害者の多くにとって、日常を取り戻すことは困難なままです。

なぜなら、そのためには4つの書類-食糧配給カード、住民票、身分証明書、国籍証明書-が必要だからです。

住民登録にあらかじめ氏名が記載されていれば、新しい住民票を取得することはそう難しくはありません。しかし、国籍証明書の取得は困難で、何カ月も待たされるか、もしくは首都バグダッドの役人にわいろを渡さねばならない、と人びとは口をそろえます。しかも、男性親族の証明書がなければ、彼女たちは新しい証明書を取得できない可能性があるのです。しかし、男性親族が行方不明になっていたり、殺されているケースは少なくありません。

ヤジティ教徒に対してISが行った重大犯罪から1年が経つ今、国際社会はもっと生存者に救いの手を差し伸べねばなりません。イラク当局に対しては、新しい身分証明書の発行スピードを速めるよう要請するとともに、遺族たちのためにも、大量殺人の証拠を保存し、遺骨を特定するための専門家を派遣する必要があるでしょう。

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