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(ニューヨーク)-サウジアラビアは、公立学校の生徒を含む国内全ての少女たちが、学校でスポーツをすることを認めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。同国政府は、政府資金で運営される学校での女子スポーツの位置づけを正式に明確化し、教育のあらゆる段階で女子スポーツが活発化するための国家戦略を発表するべきである。

国営サウジ通信は2013年5月4日、私立学校の女子生徒について、同国教育省の強い規制の範囲内で、女子生徒が「適切な衣服」を着用し、かつ、サウジアラビア人女性指導員の監督下にある場合に限って、スポーツに参加することができると公表した。

「サウジアラビアの全女性と少女たちは、スポーツから得られる社会面・教育面・健康面での利益を享受できるようにならなければならない」とヒューマン・ライツ・ウォッチのグローバル・イニシアティブ局長ミンキー・ワーデンは述べた。「私立学校に関してこれまでの規制を撤廃できるのであれば、公立学校の女性と少女たちも同じ恩恵を受けられるべきである。」

2012年開催のロンドンオリンピックで、2人の女性が初めて、サウジアラビアを代表し競技に参加したものの、同国内で女性と少女たちはまだ自由にスポーツをすることができない。政府は私立学校に関する今回の表明に続き、公立学校における規制撤廃とその実施に向けての戦略を公表するべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

サウジアラビアは、政府が運営する学校において、女子がスポーツに参加するのを実質的に禁止している世界唯一の国だ。国による女性のためのスポーツインフラは存在せず、スポーツ用と指定された全ての建物、スポーツクラブやコース、そして専門トレーナーや審判も、みな男性向けに限られている。スポーツにおける女性と少女への差別は、同国内の様々なレベルにて今も以下のように存在している。   

● 公立学校での女子体育教育の不許可

● 女性向けジムとスポーツクラブへの免許発行拒否 

● サウジアラビア青少年の間でスポーツを振興させ、青少年スポーツの競技連盟を監督する青年福祉庁が、国営スポーツクラブへの女性の参加を認めないなど差別的な行いをしていること

● 同国のスポーツ組織の運営に女性が関わることが認められておらず、その結果、女子選手向けの競技会が存在しないこと

● 国内や中東地域、そして国際的な競技会に出場するサウジアラビア女子選手を、政府が資金的に支援しないこと

2012年のロンドンオリンピックでサウジアラビアを代表した女性2人は、柔道のウォジダン・シャハルハニ選手と陸上のサラ・アッタル選手だった。国際オリンピック委員会はその改革を称賛し、ジャック・ロゲ会長は「オリンピック史上初めて、全ての参加国選手団に女性選手が含まれることになった。それはジェンダー平等に向けた大きな推進力となる」と述べた。

私立学校の女子生徒のためのスポーツ教科を承認する可能性があることを、教育省は以前示唆していた。2011年12月に女子の教育担当のノーラ・アルファエズ副大臣は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに以下の書簡を送った

『本省は、女子学生向け体育教育を実施している学校を処罰する、如何なる規制的条項やルールを発効していない。実際に、私立学校の一部では、カリキュラムや課外活動の中にスポーツが取り入れられている。』

『本省は、学校における体育教育を、男子及び女子の健康維持において不可欠と考えている。よって、女子生徒への体育の授業は優先的な課題のひとつであり、本格的な検討が行われている。現在、男女の体育教育に関する国家戦略の枠組みのなかで、総合的な教育カリキュラムを制定しようとしている。まずはそのためのインフラ整備から始め、最終的には保健・栄養教育につなげていきたい。』 

サウジアラビア政府は、教育省が言及した健康上及び教育上の恩恵を、公立学校と同様に私立学校の女子生徒も享受できるようにするべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

政府は最近、家庭内暴力防止に向けた取り組みや、女性の司法修習生への弁護士免許付与など、ゆるやかな改革に着手している。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチが報告書「Perpetual Minors(永遠の未成年)」で詳述したとおり、サウジアラビアは生活のあらゆる面で女性を未成年者として扱う「男性後見人」制度を実施している。職場を含む公の場には、ジェンダーに基づいた厳格な隔離が存在。男性後見人の許可なしに、家庭を離れたり、医療を受けたり、公人としての活動を行ったり、運転することが禁じられている。

サウジアラビアの女性と少女全てに恩恵をもたらす政策を採用し、オリンピックの価値と原則を実現できるよう、国際オリンピック委員会は同国政府に働きかけるべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは長年同委員会に対し要請を続けてきた。この要請には、公立・私立関係なく、全ての少女への体育教育を導入するためのタイムラインやベンチマーク設定も含まれる。

「オリンピックへの扉がサウジアラビア女性にも開かれたことを世界は喝采した。しかし、何百万ものサウジアラビア人女性と少女たちは、未だに脇に追いやられたままだ」と前出のワーデンは述べた。「今こそ世界のスポーツ界は、サウジアラビアに対し、女性と少女たちみんなが自由にスポーツをできるよう働きかけるべきだ。」

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