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赤道ギニア:ユネスコの恥ずべき賞

オビアン賞を巡る法的疑問と人権保護上の懸念

 

(パリ)-赤道ギニアのテオドロ・オビアン・ンゲマ・ンバゾゴ大統領が資金拠出し議論を呼んでいる賞について、ユネスコが授与すると決定したのは、多くの人びとを失望させると共に無責任なものであると、7つの市民団体が本日、批判した。同大統領は、33年間権力の座に就き続け、汚職と弾圧で悪名高い政府を率いている。同賞の授与式は、2012年7月17日の予定。

同賞授与を巡る採決で、賛成33票、反対18票、棄権6票と賛否が分かれる結果になったことを踏まえ、ユネスコ執行委員会は3月8日、「ユネスコ・赤道ギニア生命科学研究国際賞」と名称が変更された同賞を承認し、ユネスコ事務局長のイリーナ・ボコバ氏に同賞の速やかな授与に向け取り組むよう強く促した。ユネスコ法制局は、同賞の資金源を巡ってさまざまな問題点があることから、ユネスコの内部規則では賞の実行は不可能であると助言していたが、採決はそれを無視した形だ。

「同賞を巡って一連の重大な法的、倫理的な問題があることを考えれば、この賞の授与は、ユネスコにとって全く恥ずべき無責任な行為である。オビアン大統領の汚れきったイメージを糊塗するのに、ユネスコが利用されるのを許すだけではなく、ユネスコへの信頼を損なう危険をも、ユネスコ自身が冒している。」と人権保護NGO「赤道ギニアに公正を」議長のツツ・アリカンテ氏は批判した。

同賞の授与に反対した代表委員たちへ宛てた7月12日付の書簡の中で、ボコバ事務局長は、執行委員会における採決を受けての法的見解について、『懸念が残る』と結論付けつつ、それでもなお、執行委員会の決定に従い、同賞の授与をせざるを得ないと述べた。同賞の授与に反対した代表たちは翌13日、書簡に返答し、ユネスコには「賞に関する違法性の疑惑が一片の曇りもないよう」拠出資金への疑惑を完全に解明する「法的な受託者としての義務がある」と抗議した。

世界のなかでの地位向上を図る一環として同賞を推し進めてきたオビアン大統領が、賞の授賞式に出席するかどうかは、式次第を見る限りはっきりしない。同賞は当初、2008年に「ユネスコ-オビアン賞」として承認された。しかし、同大統領の人権侵害に塗れた経歴とマネーロンダリング疑惑を批判していた、アフリカや中南米の著名な知識人、作家、ジャーナリスト、ノーベル賞受賞者、科学者、保健医療専門家、市民社会団体が、オビアン大統領の名を冠した賞に怒りの声を挙げ、それを受けて彼の名前が賞から外された経緯がある。

オビアン大統領の家族に対し、フランスやスペイン、米国で、汚職の捜査が継続していることも、同賞の資金源に関する疑惑につながっている。NGOアソシエイション・シェルパとトランスペアレンシー・インターナショナルのフランス支部は、当局による汚職捜査の範囲について、同賞へのオビアン大統領の寄付300万ドルも対象に含める形で継続するよう、フランスの裁判官に対して要請している。

大統領とその家族が、大規模な汚職とマネーロンダリングを行っているという重大な疑惑は、現在様々な司法機関によって国際的に調べられている。オビアン大統領の後継者と目されている長男のテオドロ・ンゲマ・オビアン・マンゲ(通称・テオドリン)氏は、フランスでの汚職とマネーロンダリング事件に関係して、7月10日にフランスの裁判官から国際逮捕状を発行され指名手配されている。

オビアン大統領は2011年10月にテオドリン氏を、赤道ギニアのユネスコ常駐代表部顧問に指名したが、これは起訴からの免責特権を与える狙いだった可能性がある。また今年5月にはテオドリン氏を、同国憲法では想定されていないポストである同国第2副大統領に任命した。テオドリン氏のフランスでの弁護士は、『彼は第2副大統領の地位にあるので、逮捕状は無効だ。』と主張している。

フランス当局は、オビアン大統領の家族が使用していたパリの豪邸を2度にわたって家宅捜索し、テオドリン氏が所有する数千万ユーロ相当のぜいたく品を大量に押収した。

米国司法省は別の捜査で、テオドリン氏が農林大臣という政府の要職を乱用し、2000年から2011年の間に、高級品購入資金として3億ドル以上の金を脅し取り資金洗浄したという疑惑について、詳細に述べた告発状提出している。そのなかには、ブラジルやフランス、南アフリカ、米国内での総額1億3300万ドル相当の資産のほか、ルノワールや他の巨匠による4500万ドル相当の絵画も含まれている。

フランスと米国でのテオドリン氏の弁護士たちは、こうした疑惑を否定している。

テオドリン氏のこうした暮らしぶりや、『人類の生活の質の向上に貢献する』という同賞の掲げる目標は、原油資源が豊富でありながら、貧困や人権侵害、汚職がまん延し社会サービスが不十分な赤道ギニアの現状とは、全く対照的であると市民社会団体は述べた。

ユネスコの中核的な使命は、報道の自由や、情報共有を保護・促進させることにある。しかし、赤道ギニアではそれとは対照的に、表現の自由と報道の自由が日常的に抑制されている。政府はまた、予算や歳出に関係する基本的情報を非公開にしている。

「赤道ギニアの一般市民は、国の富や指導者の豪勢な暮らしを、分かち合えたことはない。貧困にあえぐ市民が祝うとしたら、ユネスコ賞ではなく、テオドリン氏の逮捕状である」と前出のアリカンテ氏は述べた。

声明を出したのは以下の7団体

アソシエイション・シェルパ

ジャーナリスト保護委員会

コラプション・ウォッチ

赤道ギニアに公正を

グローバル・ウィットネス

ヒューマン・ライツ・ウォッチ

ワン

 

赤道ギニアにおける人権問題の背景

赤道ギニアは石油資源に富む西アフリカの国だが、一方で政府高官に汚職が横行し、国民1人当たりの富を踏まえれば、貧困者の割合が突出して高い国でもある。ほとんどの一般市民は、電気や安全な飲料水、良質な教育や医療といったサービスを安定的に受けられない。

国連の2011年人間開発報告書によれば、赤道ギニアの1人当たり国内総生産(GDP)は31,779ドルにのぼるのに、人間開発指数では187ヶ国中136位に位置している。その結果、赤道ギニアは、経済ランキングと人間開発スコアの格差が、国際的にみても飛び抜けて大きい国となっている。同国の劣悪な社会指標の一つとして、子どもの死亡率の高さも挙げられる。5歳になる前に死亡する子どもが、8人に1人に近い比率に達する。

しかし政府は巨大で目につきやすいインフラ事業を優先し、国際社会への印象付けを狙っている。例えば2011年6月のアフリカ連合首脳会議を主催するため、8億3000万ドルかけて豪勢なシポポ総合施設を建設した。

政府は反対意見を唱える者を脅迫し沈黙させようとしている。政権に批判的な立場の重要人物が何人も、ここ数ヶ月の間に不当に拘留されている。たとえば、広く尊敬される医師で人権保護活動家でもある、ウェンセスラオ・マンソゴ博士も、あいまいな容疑で4ヶ月間拘留されていた。マンソゴ博士は独房からユネスコ代表団に書いた手紙で、同賞を廃止するよう強く求めた。彼は有罪判決を受け、その後6月5日にオビアンから恩赦されたが、巨額の罰金、診療所の廃止命令、数年間の医師免許停止を受けたままで、『人間生活の質改善に寄与する』ことを目的に掲げる、同賞の偽善を浮き彫りにしている。

政府は、ユネスコ賞に反対する国際的な市民社会団体に対し、『誹謗中傷、偏見、デマ』を使って赤道ギニアのイメージを『汚そうと思っている』、『人種差別主義者』『新植民地主義者』『元来の赤道ギニア反対論者』というレッテル貼りを試みてきた。

同賞の背景

ユネスコ-オビアン・ンゲマ・ンバゾゴ生命科学研究国際賞は、2008年10月にユネスコ執行委員会によって創設された。同賞に反対する世界的なキャンペーンが起こったことを受け、ボコバ事務局長は2010年6月、同賞はユネスコの評価に重大な危機をもたらすと述べ、執行委員会に再考を要請した。執行委員会は2010年10月、同賞の無期限停止を決定した。

ボコバ事務局長はオビアン政権側に『寛大さの証し』として同賞を取り下げるようアピールしてきたが、オビアン大統領はその復活に向けて圧力を掛け続けた。執行委員会は2011年10月に停止を継続。その後2011年11月に赤道ギニア政府は、同賞の名称に『オビアン大統領の名を冠しない』ことに、大統領は『譲歩する』意向であると公表した。執行委員会の多数派は3月8日に採決をし、新しい名称のもとで同賞を承認した。

しかしながら、同賞の資金源についての疑惑は、未解明のまま残っている。賞はもともと、オビアン・ンゲマ・ムバソゴ生命保持基金から資金拠出される予定だった。赤道ギニア政府は2012年2月9日、同賞への資金は国庫から拠出されるとユネスコに通知した。

ユネスコの法律顧問は3月2日の法的見解で、当初のユネスコ-オビアン賞は、公表された資金源泉と実際のそれとの間に『実体上の矛盾』があるために、『もはや実施不可能』であり、それは名称を変更しても同じである、と結論付けた。

同賞が正式に承認された後、ボコバ事務局長は同賞の資金源について継続する懸念を踏まえ、法的なセカンド・オピニオンを求める意向であると述べた。報じられるところによると、その法的セカンド・オピニオンは、事務局長は執行委員会の指示に従って同賞を実施するようユネスコの規則で義務付けられている、と断定する内容という。

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