A prisoner covers her face while sitting outside a room that she shares with 15 other women prisoners in March 2010. Women in Afghanistan face serious barriers to obtaining custody of their children in the event of a divorce. Several women told Human Rights Watch that when they left prison they would have to choose between returning to an abusive husband with custody of their children or never seeing their children again. Most planned to return to their husbands.

© 2010 Farzana Wahidy

(カブール)-アフガニスタン政府は、「道徳犯罪」容疑で拘束中の約400人の女性や少女たちを釈放するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表した報告書内で述べた。米国や日本をはじめとする援助国は、カルザイ政権に対し、実際には犯罪者ではなくむしろ被害者である女性や少女たちに対する不当な投獄をすぐ止めるよう求めるべきだ。

全120ページの報告書「『逃げるしかなかった』:『道徳犯罪』ゆえに投獄中のアフガニスタンの女性・少女たち」は、「道徳犯罪」の容疑で有罪とされた女性や少女たちを収監中の3か所の刑務所と、3か所の未成年者拘禁施設で行った58回の聞き取り調査を基に作成された。アフガニスタンの未成年者拘禁施設に拘束されている少女たちのほぼ全員が、「道徳犯罪」容疑で拘束中。刑務所で服役中の女性の約半数も、同罪の容疑。それらの「犯罪」は通常、違法な強制結婚或いは家庭内暴力から逃亡したことを指す。投獄されている女性や少女たちの中には、レイプ或いは売春を強制させられて、ジナ(婚姻外性交渉)の罪で有罪判決を受けた者もいる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのエグゼクティブ・ディレクターであるケネス・ロスは「タリバーン政権崩壊から10年も経つのに、女性や少女たちが家庭内暴力や強制結婚から逃がれたことを理由として、未だに投獄されているのは衝撃的だ。例え自分の家庭からであったとしても、危険な状況から女性たちが脱出する自由は否定されるべきではない。カルザイ大統領とアフガニスタンの同盟国は、この人権侵害と差別を伴う不当な行為を止めるよう、断固とした行動をとるべきである」と語る。

2001年のタリバーン政権の崩壊で、アフガニスタンの女性の権利は新しい時代を迎えた。教育や妊産婦死亡率、雇用、そして公職や政府内での女性の役割には大きな改善が見られた。しかし、国際社会がアフガニスタンへの関与を大きく減らそうと動き出している現在、女性や少女たちが「道徳犯罪」の容疑で投獄されているという事実は、アフガニスタンの女性と少女が今も直面している困難と将来への不安を示唆する出来事である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、強制結婚から逃げ出した後に逮捕された多くの少女たちから聞き取り調査を行ったほか、虐待を行う夫や親族から逃げ出したために逮捕された多くの女性からも話を聞いた。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた女性たちの中には、必死の思いで警察に助けを求めて駆け込んだ結果、保護されるどころか逮捕されてしまった者もいた。

許可なく家から逃げ出す「家出」は、アフガニスタンの刑法では犯罪ではない。しかし、アフガニスタンの最高裁判所は、逃げた女性や少女らを「ジナ」の罪を犯した犯罪者として取り扱うよう、裁判官に指示してきた。アフガニスタン法上は、ジナの罪を犯した者に対し、15年以下の刑を科すことが出来る。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた女性や少女らは、強制結婚(未成年者を含む)、殴打、刃物による傷害、火傷を負わせる行為、レイプ、強制売春、拉致、殺害の脅迫などの人権侵害にあったと口々に語った。こうした人権侵害に対して、刑事訴追や処罰は勿論、捜査すら行われていないのが現実だ。

19歳の女性パルワナ・S(仮名)は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、夫と義母から暴行を受けたので逃げだしたところ、「家出」を理由として有罪判決を受けた、と言う。「私は独立して夫と離婚するつもりです。“夫”という言葉が大嫌い。私の人生は夫のせいで真っ暗よ・・・。監獄をはじめ(私に起こるはずのことを)全部分かってたら、川に飛び込んで自殺していたはずだわ。」

「道徳犯罪」の容疑を掛けられた女性や少女たちは、あらゆる局面で女性に不利な司法制度と格闘しなくてはならない。警察は夫や親族の申立のみに基づき、彼女たちを逮捕する。検察官は女性たちの無実の訴えを裏付ける証拠を無視する。裁判官は弁護士不在の状態で得た「自白」や、読み書きが出来ない女性に読み聞かせることも無く「署名させた自白」だけを根拠に、多くの場合有罪判決を下す。有罪判決を受けた後、女性は長刑を科されることが多い。10年以上の刑となった事例もある。

2009年に成立したアフガニスタンの「女性への暴力根絶法」は、女性への暴力を刑事犯罪としている。しかし、「道徳犯罪」の容疑で女性から自由を奪うことに執心している警察官、検察官、裁判官は、多くの場合、容疑を掛けた女性が虐待された証拠を無視する。

前出のエグゼクティブ・ディレクターのロスは「裁判所は、『犯罪』者だとして女性を投獄する一方、本当の犯罪者-彼女たちを虐待した犯人-を野放しにしている。法律が女性への暴力を犯罪と定めているにもかかわらず、女性たちにとっては、自らが被った恐ろしい人権侵害に対してさえも、検察官が肩をすくめる以上のことは期待できない現状にある」と語る。

「道徳犯罪」に対する不当な起訴は、刑務所へ投獄されたり、未決拘禁されている、約400人の女性や少女たちはもちろん、遥かに多数の人びとにとっても重要な問題である。女性や少女たちが強制結婚や家庭内暴力から逃げても、辿りつく先が牢獄しかないという現実は、虐待に耐えている人びとにとって、政府に助けを求めたとしても、与えられるのは救済ではなく処罰明確なメッセージとなっている。

女性たちは、家庭内暴力の被害に遭うだけでなく、男性にだけ離婚を宣言することを認める一方で、女性から離婚を申し立てることを著しく困難にしている時代遅れの離婚法ゆえに、さらなる困難に直面している。アフガニスタン政府は、2007年に「アフガニスタンの女性のための国家行動計画」でこうした法律を改正すると定め、専門家委員会が、女性の権利改善に向けた新しい家族法を起案した。しかしながら、当新法は、成立へ向けた動きが全く見られないまま、2010年以来政府によって棚晒しにされ続けている。

前出のケネスは「アフガニスタンの女性を2級市民に貶めている法律を全面改正するという約束を政府がしてから、かなりの時間が経過している。離婚する権利を否定して、女性に人権侵害を耐えろと強要する法律は、時代遅れだけでなく、残酷だ」と語る。

差別的な現行法を維持し、「道徳犯罪」に対する裁判で適正手続きや公正な裁判が侵害されている実態に対処していないアフガニスタン政府は、国際人権法上の義務に違反している。国連の専門機関と特別報告者は、アフガニスタンの「道徳犯罪」を廃止するよう求めてきた。国連の女性に対する暴力に関する特別報告者は、「女性や少女らを差別し、彼女たちを拘束し、残虐で非人間的かつ品位を傷つける刑罰を科すジナ関連法を含む、複数の法律の廃止」をアフガニスタンに求めている。国連子どもの権利委員会も、アフガニスタンに「いわゆる犯罪としての道徳違反規定を撤廃し、道徳違反を根拠に拘禁されている子どもたちを釈放するよう求めている。

前出のケネスは「アフガニスタン政府と日本を含む国際パートナーは、女性の権利を保護すると共に、今後、女性の権利保障に関する後退がないよう、緊急に行動を起こすべきだ。カルザイ大統領、米国、日本などの政府や関係機関は、10年前にアフガニスタン女性にした大胆な約束を破るべきでない。『道徳犯罪』での投獄をなくし、女性の権利向上を支えると表明した約束を実施するべきだ」と語る。