Lubanga in the courtroom at the International Criminal Court.

© 2010 Reuters

(ハーグ)-国際刑事裁判所(以下ICC)が、コンゴ内戦における反政府武装勢力の指導者であるトマス・ルバンガ・ディロに対し、少年の徴兵および戦闘における使用について有罪判決を言渡した。この有罪判決は、コンゴ民主共和国(以下DRC又はコンゴ)をはじめとする多くの国での紛争で戦うことを強制された何十万人もの子どもたちに対する「法の正義」実現への最初の一歩である、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。同判決は、ルバンガと共同で訴追されているボスコ・ンタガンダを早急に逮捕する必要性を浮き彫りにしている。ボスコ・ンタガンダは、現在、コンゴ東部ゴマでコンゴ政府陸軍の将軍となって法の裁きを逃れ続けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ国際司法アドボカシー局長のゲラルディン・マッティオリ・ゼルツナーは「ルバンガに対する有罪判決は、コンゴでの残虐な戦争で戦うことを強制された多くの子どもにとっての勝利である。コンゴなどの国々の軍事指揮官は、子どもを戦争用兵器として使用することは、自らを被告席に導く重大な犯罪である、というICCの力強いメッセージに注目するべきである」と語る。

2002年から2003年までの間にイトゥリ地方で15歳未満の子どもを徴兵し、入隊させ、かつ、戦闘で活発に使用したルバンガの戦争犯罪について、ICCの裁判官は「合理的疑いを越えて」有罪であるとした。ルバンガは、反政府武装勢力であるコンゴ愛国者同盟の指導者であった。コンゴ愛国者同盟は、民族大虐殺、拷問、レイプ、子どもの大規模な徴兵(7歳の子どもも含む)など、多くの重大な人権侵害を引き起こした。コンゴ政府当局は、2006年3月にルバンガをICCに引き渡した。彼の裁判は2009年1月に始まった。

ルバンガの量刑と被害者への補償を確定するための審理が数週間以内に予定される見込みだ。今回のICCの判決と今後取られる措置について、今後ICCは、コンゴにいる被害者たちのコミュニティーにしっかり周知するよう、あらゆる必要な手段を取るべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

また、この判決は、ICC初の事件である本件について、ICC検察局の活動を厳しく批判する内容でもあった。裁判官らは、検察側が証拠を慎重に検討しておらず、そのため複数の証言の信用性を否定することにつながったと指摘。また、判決の中で、ICC検察局が被害者や証人と連絡を取ることを助けるいわゆる「仲介人」(“intermediaries”)についても触れられた。「仲介人」の一部が証人に嘘の証言をするよう指導してワイロを渡していた可能性があると弁護側が主張し、その実態が審理で検証されていた。

「ルバンガ事件は、ICC検察局スタッフが直接行った現場捜査のあらゆる場面で改善が必要であることを浮き彫りにしている。ICC検察局とICC裁判部全体は、法の下の裁きをしっかり実現するため、この初体験から重要な教訓を学ばなくてはならない」と前出のマッティオリ・ゼルツナーは語る。

ルバンガ裁判は、戦うことを強制された子どもの悲惨な体験に対する世間の認知度を上げた。ルバンガの率いた「コンゴ愛国者同盟」には非常に多くの子ども兵士がいたため、通称「子ども軍」と呼ばれていた。イトゥリ地方でのコンゴ内戦に関与していた全ての当事者が子どもを兵士として使っていた。子どもは今でもコンゴの武装勢力やコンゴ政府軍のメンバーにされており、コンゴの一部の地域では力づくを含めて、今も活発に子どもが徴兵されている。

戦争にかりだされている子どもの多くは、ウガンダの反政府武装勢力である神の抵抗軍(以下LRA)などによって、コンゴ東部キブ州やコンゴ北部での戦闘に関与させられている。LRAの指導者ジョセフ・コニーおよび彼の腹心オコト・オディアンボもまた、他の多くの犯罪のうち、子どもを拉致し、ウガンダ北部で戦闘に強制参加させた罪で、ICCから逮捕状を出されて指名手配されている。コンゴ北部で活動しているもう1人のLRA指導者ドミニック・オングウェンもまた、ICCから他の戦争犯罪と人道に対する罪の容疑で指名手配中である。LRAはコンゴ、中央アフリカ共和国および南スーダンの辺境国境地帯で人権侵害を続けている。キャーペーン・グループ「インビジブル・チルドレン」が先週公表したコニーの逮捕を呼び掛ける30分間のビデオは、今日までに8,000万以上の人びとが視聴した。

「ICCによるルバンガに対する有罪判決は、子どもを戦闘に送り込み続けているジョセフ・コニーへの強い警告になるに違いない。コニーなどICCから指名手配されているLRA指導者を逮捕するため、アフリカ諸国及びその他の国際的アクターたちは、その取り組みを至急強化すべきだ」と前出のマッティオリ・ゼルツナーは指摘する。

世界的には、子どもは少なくとも15の国で武力紛争に参加している。ルバンガの他に6人が少年兵の徴兵及びその使用の罪でICCに訴追されている。

国連、地元団体そしてヒューマン・ライツ・ウォッチは、ICC検察官が立件した事件に含まれていない、ルバンガの民兵組織が行った他の多くの重大犯罪についても調査・報告している。ICC検察官が立件したルバンガの容疑は限られた罪にすぎず、彼の戦争の結果被害者が経験した甚大な苦痛をしっかり反映していない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「少年兵の使用に関するこの判決は重要だ。しかし、ルバンガ率いるコンゴ愛国者同盟部隊が行った他の残虐行為の被害者はまだ法の下で裁かれていない。この判決がコンゴ愛国者同盟やコンゴの他の武装勢力が行った他の重大犯罪を無視する口実になってはならない。また、ンタガンダなど多くの戦争犯罪人を、より広い重大犯罪の容疑で訴追することが必要であることも示している」と前出のマッティオリ・ゼルツナーは語る。

コンゴ愛国者同盟が行った軍事行動の元責任者ボスコ・ンタガンダもまた、ルバンガにかけられた容疑と同じ、イトゥリ地方で少年兵を徴兵し使用した容疑で、ICCから指名手配されている。現在、ンタガンダはコンゴ国軍の将軍であり、コンゴ東部ゴマで自由に生活しており、最高級レストランやテニスコートで定期的に彼の姿が目撃されている。ンタガンダは現在、コンゴ東部における軍事活動の副司令官を務めており、彼の指揮下にある部隊は重大な人権侵害を行い続けている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは報告している。

「ルバンガが有罪となったのに、ンタガンダが逮捕されず自由でいることは、被害者に対するよりいっそうの恥ずべき裏切りである。コンゴ当局はンタガンダを直ちに逮捕し、ICCに引き渡さなければならない。」と前出のマッティオリ・ゼルツナーは語っている。

コンゴ関係のICC係属事件としては、現時点では、イトゥリ地方でコンゴ愛国者同盟に敵対した武装勢力の指導者2人について、もう1つの事件が係属しているに過ぎない。コンゴ東部の民間人は大規模な残虐犯罪の被害を受けているにもかかわらず、ICCの対応はあまりに限定的である。ICCがコンゴで蔓延する不処罰(インピュニティ)を終わらせるために意味ある貢献をするためには、ICC検察局は、特にコンゴ東部の武装勢力に武器を与え、資金供与し、また、命令を下している者たちに対してさらなる訴追を行うべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ルバンガ裁判は、ICCで判決段階までたどりついた初の事件。ICCは2003年に活動を開始した。コンゴと中央アフリカ共和国に関しては、他に2つ公判が進行中であり、さらに2つの事件について立件が固まっている(charges have been confirmed)。

 

初のICC公判で浮上した課題

ICCにおける最初の公判事件であるルバンガ裁判は、ICCの条約および手続きの解釈において新しい地平を切り開いた。これは、ICC条約で初めて導入された「被害者参加」(被害者が証人としてだけではなく裁判手続きに参加すること)が認められた初めての国際裁判である。被害者参加はこの裁判に建設的な貢献をしたものの、この初めての経験は将来の裁判に対する教訓ともなった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

身の安全に対する懸念から、ほとんどの証人は何らかの保護措置を受け、また、裁判の大部分は非公開審理で行われた。裁判は、ICCに関与した被害者や証人が危険な目に遭う事実及びICCが効果的な保護プログラムを実行する必要性を浮き彫りにした、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ICCにおける最初の裁判となったこのルバンガ事件では、多くの法律上の困難および手続上の疑問に取り組まなければならなかった。裁判の中で明らかになった問題の1つは、ICC裁判における仲介人(検察局の場合、被害者や証人と連絡を取ることを助ける個人や団体)の使用の問題である。ICCが、限られた資源の中で、異なる文化や言語を背景とするさまざまな国家の事態に対応することを考慮すれば、裁判所にとって、仲介人の使用は多くの場合、その職務を効果的に処理する上で不可避である。これらの仲介人は、ICCの活動に欠くことのできない貢献をすると同時に、その活動の中で重要な課題にも直面している。ルバンガ裁判は、仲介人とICCの関係をしっかり管理監督し、規制する必要性を明らかにした、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

裁判は様々な段階で遅延した。多くの関係者や被害者が、裁判が長引き過ぎていると懸念を表明した。ICCは、締約国からも、より効率的に裁判運営を行うよう圧力を受けている。

ICC初の公判となったルバンガ裁判から得られた教訓を、ICC当局は慎重に検討しなければならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ICCで審理中の他の事件は、すでにもう少しスムーズに進んでいる。

背景

イトゥリ地方は、コンゴでの破滅的な内戦の中でも最も激しい被害を受けた地域の1つである。イトゥリ地方にある豊かな金鉱山とその販売ルートをめぐる争い-そして、それが金銭、銃および権力をもたらしている-が、戦闘が起こる主要な要因であった。金をめぐる冷酷な戦闘の中、ルバンガ率いるコンゴ愛国者同盟などの武装勢力は、しばしば民間人を戦闘の標的にした。

ヘマ族とレンドゥ族の局地的な武力紛争が1999年に始まった。この局地的戦闘は、この地域を1999年から2003年まで占拠したウガンダ国軍及びコンゴ内戦によって悪化した。外国軍の支援の結果、地元の民兵組織は増大し、紛争の結果、イトゥリ地方全域で少なくとも6万人の民間人が殺された。被害者のほとんどは、特定の民族を狙った襲撃の際に殺害されている。

コンゴに加え、ICC検察官は、他の6ヶ国の事態(ウガンダ北部、スーダンのダルフール地方、中央アフリカ共和国、ケニア、リビアおよびコートジボワール)に対して捜査を開始している。検察官はまた、アフガニスタン、コロンビア、グルジア、ナイジェリアおよびホンジュラスを含むいくつかの他の事態に対しても予備調査を行っている。