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(ニューヨーク)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、リビアの大半を掌握しているリビア国民評議会に対し、武力紛争中の性暴力の訴えを捜査すべきである、と述べた。同時に、被害者に対する医療や治療の提供、支援の必要性についても指摘した。

リビア民主化を支援すると約束した国々の首脳-通称「リビアの友人(Friends of Libya)」-が、今週国連で、リビアの将来について議論すべく集まる。会合では、各国首脳は、性暴力への対処を優先事項に据えるべきだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの女性の権利局長リースル・ガルンソルツは、「リビア国民評議会は、性暴力の訴えを捜査し、事件が葬り去られないようにする義務がある」と述べる。「リビアでは、レイプが社会的汚名と考えられている。それにもかかわらず、一部の女性や男性が名乗り出た。勇気をもって訴えを行ったこうした人びとは、犯人が法の裁きにかけられるのを欲している。その希望を踏みにじるべきでない。」

紛争中の性暴力の全体像は未だ不明のままだ。理由の一部は、レイプを恥とするリビア社会にあるが、被害者が犯罪を公表した際に直面するかもしれない危険にもある。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、2011年2月〜5月に起きた明らかな集団レイプと性暴力事件を調査してとりまとめた。内訳はカダフィ軍部隊によるものが9件、未特定の犯人によるものが1件となっている。

調査した事件の被害者は、22歳〜41歳までの男性3名と女性7名。すべての被害者が集団レイプ(うち1件は少なくとも7名の犯人によって)にあったと主張している。

被害者のひとりは犯人の姿を説明することができなかったが、他の9名は加害者を「兵士」「制服姿の男たち」「迷彩服の男たち」と特定した。

被害者たちは、自宅から拉致されたり、路上で逮捕された時の状況と、レイプされ暴行を受けた時の様子を説明してくれた。中には、刺されたり、頭髪を引き抜かれたり切られたりしたと訴える人もいた。犯人たちに、銃やほうきの柄といった異物を挿入された、と話す人もいた。

S.A.(女性、34歳)は、制服の男3人が2月に彼女のアパートに押し入った時の様子を次のように証言した。

「私はひとりで家にいたんだけど、 寝室に連れ込まれて殴られたわ。それから2人がレイプし始めた。泣いて、『お願い止めて、私は母親よ。子どもが2人いるの』って言ったけど、彼ら一緒になってレイプしたのよ・・・。血が出て、そこら中血だらけだった。」

A.G.(女性、39歳)は、4月に妹とレイプされたと話す。カダフィ軍の兵士が彼女の兄弟を探しにきた時のことだった。

「ものすごく怖くて叫んだら、私たちに銃を押しつけてきたの。何もかも壊した後、部屋にそれぞれ私たちを押し込んで、のしかかってきた。私は叫んで、妹の悲鳴も聞こえたわ。彼らは大勢いて、順番にレイプした・・・。4、5人だったかしら。終わった後、ひとりが、カラシニコフ(自動小銃)からナイフを外して、私の体や太ももをひっかいて切りつけたわ。血がたくさん出て気絶してしまって。気がついたあと、どのくらい気を失っていたのか検討もつかなかった。体中に切り傷や擦り傷があったけど、妹も同じようだったわ。」

N.H.(女性、23歳)は、5月に自宅から拉致されてレイプされたと証言。彼女は「軍人の輩」に顔を殴られ、車に引きずり込まれた時の様子を次のように説明している。

「動こうとするたびに殴られた。悲鳴も上げられなかったし、叫ぶこともできなかったからあきらめたわ。私はジーンズとTシャツを着ていたけど、彼らがTシャツを破いてブラジャーをむしり取り、ジーンズもはぎ取ってレイプしたのよ。4人で代わる代わるね。引き抜かれるような、剥がされるよな感じだった。それぞれが最悪の方法でレイプした。処女だったのに。気が遠くなってきても彼らは止めなかった。体中から血が流れるのを感じたわ。」

M.G.(男性、39歳)は、4月に28歳の弟とともに性的暴行を受けた。軍服姿の5人の男に自宅から拉致され、カダフィ軍が使っていた場所に連行された。M.G.はその男たちに肛門をレイプされた時の様子を次のように証言した。

「拷問部屋があって、電気ショックを使っているようでした。腕を縛られぶら下げられて、木の棒やビン、銃でレイプされたんです。カラシニコフの銃身を使ってね。撃ったばかりだったのか銃は熱くて、それを挿入されました。弟も同様です。」

元カダフィ政府軍兵士でもうひとりの男性被害者(22歳)は、デモに参加してカダフィの写真を焼いた2月17日に逮捕された。その後3日間拷問され、性的暴行を受けた時の様子を証言した。

カダフィ軍が大規模または組織的にレイプを行ったという主張について、ヒューマン・ライツ・ウォッチは確認できていない。しかし、被害者が負う社会的烙印、報復への恐怖、性暴力被害者が受けられる支援の欠如ゆえに、被害の訴えが実際の数より少なくなっている可能性はある。

前出のゲルンホルツは、「リビアで性暴力についての証拠を収集することは、これまで困難を極めてきた」と述べる。「社会的烙印とタブーを伴う複雑な環境ゆえに、人びとは、被害を告白しにくい状況におかれているのだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、リビア国民評議会に対し、「リビアの友人」の支援を受けながら性暴力被害者に対する支援を即時開始するよう要請している。これらの支援については、被害者の秘密性とプライバシー保持を優先する必要がある。同時に、身体的損傷の治療、性感染症の薬物投与、妊娠中絶関連の医療ケアも行うべきだ。カウンセリングと社会的支援サービスも緊急課題といえる。

リビアでのレイプにまつわる社会的烙印を考慮すれば、被害者へのケアは、性や生殖、妊娠ケアをはじめとする他の医療サービスにさりげなく組み込まれるべき、というのがヒューマン・ライツ・ウォッチの考えであり、勧告でもある。

前出のガルンソルツは、「医療ケアを受けた性暴力の被害者が、更なる社会的烙印を負わないよう、特別の配慮が必要だ」と指摘する。

医療従事者は、性暴力の被害者を救済する訓練を受けるべきだ。可能であれば、被害者が、支援の内容と方法の確立に関与すべきだろう。

また、性暴力被害者が必要とする保護も国民評議会は確保すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた女性の何人かは、自分たちがレイプされたと家族に知れた場合の身の安全について、不安を訴えていた。たとえば前述のS.A.は、夫に医者に連れていってもらって以来、義理の兄弟に脅されていると証言している。

「家族の家に帰ってきて部屋に1人でいたら、家族がお盆に載せた食事を持ってきて、出ていった。その後、義理の弟がやってきて、 『自殺するか、そうでなかったら俺たちがお前を自殺したか事故が起きたってみえるように殺すかだよ。誰かが銃を掃除中に事故ってお前が死ぬ、みたいにさ』って、そう言ったのよ。」

ガルンソルツは、「私たちが話をした被害者は、緊急に医師の治療などの支援を受ける必要がある。起きてしまったことに向き合う助けになるはずだし、被害者の安全を確保することにもなるだろう。そして、私たちがまだ会っていない、更に多くの被害者が存在することも確かだ」と述べる。「リビア国民評議会と国際社会が、極めて弱い立場にあるこれらの人びとに注目し、その必要に応える適切な支援を展開することが肝要だ。」

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