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イエメン:武装組織での子ども兵士の使用 止めよ

政府軍の少年兵が今、反政府勢力下で活動

(ニューヨーク)-イエメン軍が採用した少年兵らが現在、軍から離反した部隊によって、政府抗議デモを警備するために動員されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。米国政府をはじめとする各国政府は、兵士などの治安部隊要員として子どもを使用することを直ちに止めるよう、政府・反政府にかかわらず求めるべきである。

2011年2月にアリ・アブドラ・サレハ(Ali Abdullah Saleh)大統領に反対するデモが始まって以来、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、イエメン首都サヌア(Sanaa)で、18歳未満と見られる武装兵士数十名に遭遇した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは4月12日、サヌアで自らの年齢を14歳、15歳、あるいは16歳と名乗り、1年から2年の間軍で兵役に就いていたと話す兵士20名からの聞き取り調査を行った。その兵士たちは全員、イエメン軍第一機甲部隊の元隊員だった。第一機甲部隊を率いているのは、3月に反政府勢力に寝返り、政府抗議デモを警備するために部隊を配置したアリ・ムフシン(Ali Muhsin)将軍である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長代理ジョー・ストークは「イエメン政府は戦場に少年兵を配置し、これまでも非常に長い間、子どもを重大な危険にさらしてきた」と指摘。「サレハ大統領反対派は、デモ警備のために子ども兵士を使うなど、今後も少年兵を使い続けて、問題を持ち越すべきでない。」

20名の少年兵はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「自分たちはイエメン北部で断続的に起きている政府とフーシ派反乱勢力との紛争のために動員された」と話した。彼らのうち何人かは、「当初、親政府民兵組織の一員として闘っていたが、その後、フーシ派に対する作戦行動を率いていた第一機甲部隊に移された」と話した。少年兵は皆、AK-47突撃銃と拳銃を携行し、第一機甲部隊の制服を着ていた。

別の聞き取り調査では、第一機甲部隊所属の士官6名がヒューマン・ライツ・ウォッチに、「本部隊は15歳の者の採用を認め、より幼い子どもを採用する"特例"を設けることもしばしばである」と語った。

2月に始まった民衆蜂起に対し、政府は軍の部隊を展開して対応した。サヌアで平和的なデモを行っていた市民数十名が、襲撃者に射殺されるのを政府軍部隊はただ傍観していた。その3日後の3月21日には、ムフシン(Ali Muhsin)将軍は、彼の指揮下にある部隊とともに政府軍を離反して、反政府派勢力にくら替えした。以来ムフシン将軍は、首都の政府抗議デモ隊が政府軍や政府支持派から更なる攻撃を受けないよう警備するため、自分の部隊を配置している。

子どもを武装した治安要員として使用することは、子どもを重大な危険にさらす。児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)は、子どもの健康や発達に有害となるおそれのあるすべての労働への従事から子どもが保護される権利を認めている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、フーシ派との戦闘においてイエメン政府軍が少年兵を使用した事実を調査して取りまとめてきた。15歳未満の子どもを戦闘に動員するのは戦争犯罪である。子どもの権利条約の選択議定書は、子どもを武力紛争に関与させないよう、徴兵や強制的な採用、あるいは敵対行為への直接参加の最低年齢を18歳と定めている。イエメンは同議定書を2007年に批准している。

4月12日、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インタナショナル、オープン・ソサエティ財団、ワールド・ビジョンの4団体は、バラク・オバマ米国大統領宛の書簡において、米国政府の軍事支援を受けているイエメン政府を含む4カ国(コンゴ民主共和国・チャド・スーダン)に対し、少年兵使用をやめさせるべく積極的な対策をとってこなかったことを批判。オバマ大統領は2010年10月、当4カ国が、2008年米国内で成立した少年兵使用防止法(US Child Soldiers Prevention Act of 2008)に違反して、少年兵を使用しているにもかかわらず、軍事援助を続けることを認める免除措置に署名した。この少年兵使用防止法は、政府軍あるいは政府が支援する私兵や民兵組織が国際基準に違反して少年兵を採用若しくは使用している国の政府に対して、一定の軍事援助を停止することを米国政府に義務付けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは米国政府に対し、イエメン政府が少年兵の使用停止に向けた国連との行動計画の交渉に同意せず、子どもと武力紛争に関する国連特別代表による視察を認めないならば、イエメン政府への軍事援助を直ちに停止するよう強く求めた。米国政府は昨年イエメン政府への軍事援助として1億6,800万ドルを承認したが、そのうち3,500万ドルが少年兵使用防止法の規制の下では拠出禁止となるはずの援助である。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはイエメンを援助している世界各政府に対しても、イエメン政府が、政府治安部隊と支持派による平和的なデモ隊への攻撃を止めさせるとともに、襲撃事件(2月中旬以来少なくとも87名の人びとが殺害された)に対して信頼性の高い捜査を行うまで、軍事援助を停止するよう求めた。

「援助国の政府は、自分たちの武器弾薬が非暴力の平和的デモ隊に対して向けられないこと、そして子どもたちが発砲したり命を落とさないことを確実にしなければならない」とストークは述べる。「援助国は、イエメン政府及び反政府勢力に対し、武器が子どもの手に渡ることのないよう強く求めるべきである。」

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