A diamond necklace by Cartier, one of the most recent major jewelers to publicly boycott blood diamonds from Zimbabwe.

© 2007 Reuters

ジンバブエ東部のマランゲ・ダイヤモンド採掘場。ダイアモンドの違法採掘と密輸がはびこっています。それを止めるために派遣されたはずのジンバブエ国軍。でも実際には、腐敗したジンバブエ国軍は、自ら違法採掘と密輸から利益を得た上で、住民たちに虐待行為を行っています。

「逃げなくていい。ビジネスの話をしたいだけだ。」地元の鉱山労働者P.T.によると、採掘場に忍び込もうとして逮捕された夜、国軍兵士2人にこう話しかけられた、と振り返ります。

こうして、ジンバブエ国軍は、P.T.を含む23人の鉱山労働者からなる鉱山シンジケートを組織したのです。そして、鉱山労働者たちに、掘り出したダイヤモンドの利益の分け前を与えると約束しました。鉱山労働者たちは、2週間のうちに709グラムの工業用ダイヤモンドと17の宝石用ダイヤモンド原石を発見。しかし、兵士たちは、約束とは裏腹に、P.T.たち鉱山労働者に何の分け前も与えませんでした。

「それで文句を言ったら、兵士は俺たち全員を殴りつけて、作業を続けるよう命令したんだ」と前出のP.T.。「たまらんから逃げようとしたら、今度は発砲してきて、一番前を走っていた友達は死んでしまったよ。それでも夢中になってそのまま逃げ続けた。自分が撃たれていたことにも気がつかないでね」と、足の付け根を負傷したP.T.は続けます。

P.T.は成人ですが、マランゲ地区の鉱山労働者のうち約300人は未成年の子どもです。子どもたちは、空約束の誘惑に負けて警察が黒幕となる鉱山カルテルに引き込まれるか、無償の労働を強制されるかのどちらかです。ほとんどの場合、休憩や食料の配給もありません。こうした現状にたまりかね、P.T.含め100人以上が、ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員デワ・マブヒンガとの対面形式の聞き取り調査に応じました。そして、こうした鉱山労働者や地元住民は、恣意的な暴力や虐待を受けていると証言したのです。中にはP.T.の友人のように殺された人もいます。

P.T.は兵士による銃撃から命からがら逃げた後、付近の病院にかけ込みましたが、傷の手当を拒否されてしまいます。

「そこの婦長から、採掘場で撃たれたり負傷した人間の治療は行わないように、国軍から厳しく指示されていると言われたよ」とP.T.は証言。

マランゲ鉱山で発覚した人権侵害の実態と、いわゆる「血塗られたダイヤモンド(紛争ダイアモンド)」がジンバブエ政府の主要な歳入源であるという事実を考え併せた末、ヒューマン・ライツ・ウォッチはすぐさま、世界規模のダイヤモンド貿易制度対策を実現しようと乗り出しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、主に3つのステークホルダーに働きかけました。ひとつは、血のダイヤモンドの市場流通を監視する国際組織「キンバリー・プロセス認証制度(KPCS)」。もうひとつが、ティファニーやカルティエといった、大手ダイヤモンド小売店。そして、最後に、ダイアモンドの購入を考えている一般市民です。

まず最初に、マランゲのダイヤモンド採掘場で明らかになった人権侵害の実態を、世界に向けて公表しました。ヒューマン・ライツ・ウォッチが、「血塗られたダイモンド:ジンバブエ国マランゲのダイヤモンド採掘場での人権侵害」(62ページ)を発表したのは、2009年6月。その前に、マランゲという地名を聞いたことのある人はごくわずかでした。この地区は、ジンバブエの僻地にあるうえ、厳重に警備されているので、ここで秘密裏に行なわれる虐待行為は事実上誰にも知られていなかったのです。

次に着手したのは、前出のキンバリー・プロセスへの働きかけです。私たちは、南アフリカ共和国のヨハネスブルグでの共同記者会見で、この報告書を世界に向けて発表しました。そのタイミングを、諸国ナミビアでキンバリー・プロセスの年次会合が開催されているときに当てつけたのです。南アフリカ共和国中のメディアが、マランゲのダイヤモンド採掘場で起きている残虐行為について報道。その結果、報告書発表からたった3日で、キンバリー・プロセスが調査団をマランゲに派遣するに至ったのです。

キンバリー・プロセス調査団の調査結果も、ヒューマン・ライツ・ウォッチと同じ結論となりました。つまり、キンバリー・プロセスも、ジンバブエが規則違反を犯していると明らかにしたのです。ジンバブエが今後取るべき措置についてのキンバリー・プロセスの提案は、そのほとんどが私たちが報告書で提案した内容の繰り返しでした。その後、キンバリー・プロセスはハイレベルの監視員を指名し、ジンバブエ政府によるマランゲ採掘場の人権状況の改善計画の実行状況をモニターしました。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、このモニターのあり方についても助言を行ないました。

2009年後半、ジンバブエの政府高官がマランゲから国軍を撤退すると発表。しかしながら、私たちの現地での事後調査によって、これらがただのポーズに過ぎないことが明らかになります。

その後私たちは、消費者、小売店、そして宝石業界に焦点を当てたキャンペーンを次のステップとして展開しました。ジンバブエ産のダイヤモンドの世界的流通停止をこれら各方面に呼びかけて、特にマランゲ産出の原石のボイコットを求めたのです。ダイヤモンド鉱山会社や卸売業者、小売店への働きかけと教育的セミナーを通じて、今日に及ぶまで一連の成功を収めています。

ティファニーやカルティエも、ジンバブエ産の血塗られたダイヤモンドを公式にボイコットしました。しかし、ボイコットを決断したのは、ティファニーやカルティエだけではありません。ウルトラ宝石商も同様にボイコットを実施、ラパポート&レバー宝石商も、ジンバブエ産のダイヤモンドは販売しないと顧客にはっきりと保証しました。

そして今必要なのは、他ならぬあなたです。もしあなたが今、婚約指輪、イヤリング、時計といった宝石類の購入を考えているのならば、どうか必ず、それらがマランゲのような人権侵害を伴って発掘されたダイヤモンドでないと保証するよう、小売店に求めて下さい。決してP.T.のような人びとの搾取に加担することにならないように...。

それでもP.T.は、ジンバブエ東部の住民の中では幸運な方でした。マランゲでは傷の手当を受けることができませんでしたが、3日後に近くの街に移送され、医師によって命を救われたからです。

責任ある消費者として、P.T.やその他の人びとが被った虐待の主体である政府への資金援助を制止することが、あなたにもできるのです。さあ、私たちのキャンペーンに参加して、あなたの声を広げて下さい。