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イラン:バハイ教徒に対する迫害

数十人が容疑を明らかにされないまま身柄拘束 幹部は死刑犯罪の容疑で起訴

(ニューヨーク) - イラン政府はバハイ(バハーイー)共同体(バハイ教の信者集団)への嫌がらせと恣意的拘束を直ちに停止すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

2月10日、11日にバハイ教徒13人が拘束された。これに先立つ1月初めには13人が逮捕されていた。政府は1月に逮捕された13人については最近の反政府デモの実施に関わったと主張。2月に逮捕された13人については容疑をまだ明らかにしていない。一連の逮捕は、政府が広く行っている反体制派の活動家に対する弾圧の一環だ。

「イラン政府は、昨年6月の大統領選挙後の政情不安を口実としてバハイ共同体を攻撃していると見られる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは述べた。「イラン政府は組織的なバハイ教迫害を続けており、今回の一連の逮捕劇は、最新の迫害事例といえる。」

イランでは、ユダヤ教徒、キリスト教徒、ゾロアスター教徒の信仰共同体は憲法で認められているものの、イラン政府はバハイ教を認めておらず、信徒をシーア派イスラームへの背教者と見なしている。1979年のイスラーム革命以後、イラン政府は、教育や雇用の機会を制限するなどバハイ教徒を差別する様々な政策を実施している。

ジュネーブのバハイ国際共同体(BIC)国連事務所によれば、2009年10月以降、テヘラン、マシュハド、サーリー、ヤズドで、イラン当局は少なくともバハイ教徒47人を拘束。2008年5月、政府によってテヘランのバハイ共同体の幹部7人が逮捕され、現在も拘束が続いている。裁判は今年1月12日に始まったが、4月10日に延期された。

司法権はバハイ共同体の幹部7人を公安関係の様々な容疑で起訴。外国勢力のためのスパイ活動、反体制プロパガンダ、違法組織の創設と拡大、国際社会でのイスラーム共和国のイメージの毀損、「地上の悪」の拡散(訳注:反体制派弾圧に用いられる容疑の一つ)などだ。大半の容疑で死刑判決が下される。拘束中の男性5人と女性2人に対して認められた接見は、この1年半に家族と弁護士の面会が制限付きで許可されただけだ。

2月10日に逮捕されたひとりがアラーオッディーン・ハンジャーニーだ。イラン人権擁護協会によれば、情報省職員は同日午前2時30分頃、テヘランにある氏の自宅を家宅捜索し、コンピュータ1台と宗教関係の資料など所持品を押収し、本人の身柄を拘束した。ハンジャーニーは、現在テヘランで訴追されているバハイ教幹部7人の1人であるジャマーロッディーン・ハンジャーニーの息子。情報省職員は、1月にアラーオッディーン・ハンジャーニーの娘も逮捕した。アラーオッディーン・ハンジャーニーの逮捕から数時間以内にあと7人のバハイ教徒が逮捕された。最近起きた反政府デモへの関与が容疑とされた。2月11日に、情報省職員はバハイ教徒5人をテヘランの自宅で逮捕。拘束中のこの13人のうち、未だにひとりも立件・起訴(charge)されていない。

1月3日には情報省職員がバハイ教徒13人の自宅に踏み込み、全員を拘束。うち3人は、これからはデモに参加しないと表明したために釈放された。2月10日に逮捕された人びとのほか、1月3日に逮捕されたもののその後釈放された1人も2月10日に再度逮捕された。

1月12日の報道発表で、アッバース・ジャアファリー=ドウラトアーバーディー検事長は、1月3日から拘束されているバハイ教徒10人が「[シーア派の宗教記念日の1つで、12月27日に行われた]アシュラでの騒動を組織し、海外にこの騒動の写真を送った」容疑で立件されていると述べた。これに先立つ1月8日の発表で同検事長は、数人の自宅から当局が武器と弾薬を発見したと主張。他方で、逮捕された人びとがバハイ教徒であることは逮捕の理由とは関係ないと述べた。治安部隊はアシュラ当日のデモに関与したとして数百人のイラン市民を逮捕したと言われている。

当局は1月3日に逮捕された人びとをキャラジのゴハルダシュト刑務所に拘束しており、弁護士の接見を許可していない。BICによると、うち数人が、逮捕されてから何週間も経った後にやっと家族との面会を許可された。

BICの指摘によれば、バハイ教徒60人が現在も身柄を拘束されており、この他90人が釈放はされたものの、裁判の対象となっている。最近数カ月で、バハイ教徒99人が様々な罪で有罪とされている。容疑として挙げられたのは、公安を乱す行為、イスラーム共和国に反する教育、反体制プロパガンダ、違法な集団や組織の結成、イスラームの神聖な施設への侮辱などだ。これらの人びとは、判決に対する不服申立中のまま釈放されている。BICによると、この他大勢のバハイ教徒が治安当局者や情報省職員から呼び出しを受け、身柄拘束はないものの尋問を受けているとのことである。

2月11日にテヘランで逮捕されたバハイ教徒5人は以下の通り。タラーネフ・ガヌーニ、ナグメフ・ガヌーニ、シャイダ・ユーセフィー、アーリヤー・シャドメフル、リヤーズ・フィルーズマンディー。

2月10日の被逮捕者は以下の通り。アラーオッディーン・ハンジャーニーのほか、以下の人びと。アシュカーン・バッサリー、マリア・エフサン・ジャファル、バシル・エフサニー、ロミナー・ザビヒャーン、フータン・シスタニー、シミン・ガッファリー、ペドラム・サーネイー。

1月3日の被逮捕者は以下の通り。メフラーン・ロウハーニー、ファリド・ロウハーニー、バーバク・モバーシェル、レヴァ・モバーシェル・ハンジャーニー、 パヤーム・ファナヤーン、ジヌース・ガザンファリー・ソブハーニー、アルティン・ガザンファリー、ニキャブ・ホヴェイデイー、エブラーヒーム・シャードメフル、ザヴォシュ・シャードメフル、ネガール・サベット、モナー・ホヴェイデイー・ミサギー、ナシム・ビーグラリー。ネガール・サベット、モナー・ミサギー、ナシム・ビーグラリーは1月3日に釈放されたが、モナー・ミサギーは2月10日に情報省に再度呼び出され、逮捕された。

裁判が1月12日に始まったバハイ教幹部7人の氏名は以下の通り。ファリバー・カマラバディー、ジャマーロッディーン・ハンジャーニー、アフィフ・ナーイーミー、サイード・レザーイー、マフヴァシュ・サベット、ベフルーズ・タヴァッコリー、ヴァヒード・ティズファフ。

背景

イランでは政府の規制によりバハイ教徒は表立って信仰を実践することができない。このため同国のバハイ教徒は、バハイ共同体が存在する大部分の国のように全国精神行政会(NSA)を設置・運営することができない。その代わりに「イランの友ら」と呼ばれる非公式の調整組織を設置している。訴追されている7人の信者は、この組織の幹部6人と書記1人だ。

ハイファ(現在はイスラエル領)には、バハイ教の開祖バハーオッラー(バハオラ)の廟があり、オスマン帝国領だった1868年以降バハイ教の行政的中心地となっている。ハイファとその一帯の場所がバハイ教の聖地とされたのは、イスラエル建国の相当前のこと。しかしイラン政府はこのつながりをしばしば取り上げて、イランのバハイ教徒が、同国と敵対関係にあるイスラエルのためにスパイ活動を行っている、と非難の口実に使う。

先日、国連人権理事会でイランの人権状況に関する審査が行われ、同国内のバハイ教マイノリティに対する政府の処遇に関し、加盟国から多くの懸念が示された。しかし、イラン政府はこれらの懸念を否定。イラン国連代表部のモハンマド・ジャヴァード・ラーリージャーニー代表は2月15日に「イランでは、バハイ教徒という理由で訴追されることは一切ない」と述べた。そして同国政府は、他の加盟国が行った「バハイ教に対する差別と憎悪の挑発の停止」に関する勧告を拒否した。

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