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キューバ:ラウル・カストロ議長も、批判者たちを弾圧・投獄

オバマ政権は禁輸措置をやめ、効果的な多国間政策をとるべき

(ワシントンDC)-ラウル・カストロ政権は、基本的な自由を行使した人びとを投獄している。そして、フィデル・カストロの統治時代に投獄された多くの政治犯を今も投獄したままだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日公表したレポートで述べた。キューバの弾圧的システムを解体するどころか、ラウル・カストロ議長はそれを維持しフル稼働させている、とレポートは報告している。

本報告書「新しいカストロ、同じキューバ」(123ページ)はラウル・カストロ政権が刑法の「危険」条項違反での処罰に急激に依存を強めている実態を明らかにしている。「危険」条項は、個人が犯罪を実行する前に、将来犯罪を行う可能性があるという疑いに基づいて、当局に個人を投獄することを許している。キューバの社会主義規範と対立する行為を「危険」と定義するこの「危険」犯罪条項は、明らかに刑事司法の政治化である。

「権力を掌握して3年。ラウル・カストロ議長は、兄と全く同じくらい残虐になってきた。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアメリカ局長ホセ・ミゲル・ビバンコは語った。「政府を敢えて批判するキューバ人は、絶え間ない恐怖の中で生活している。自分の意見を表明すれば、投獄される可能性があるのを知っているからだ。」

キューバへの事実調査ミッションと60を超える念入りな聞き取り調査に基づいて、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、基本的人権を行使したために「危険」条項に違反とされて投獄された、40を超える事件を取りまとめた。

ラモン・ベラスケス・トランゾ(Ramón Velásquez Toranzo)は、人権保護と政治犯の釈放を求めてキューバ全域の平和行進に出発した人物。2007年1月に「危険」条項違反とされ、逮捕されて懲役3年の刑に処された。

レイムンド・ペルディゴン・ブリト(Raymundo Perdigón Brito)は、政府による人権侵害を調査した記事を書き、外国のウェブサイトに掲載したジャーナリスト。2006年12月に「危険」条項違反とされ、懲役4年の刑に処された。彼は服役中、看守によって繰り返し暴行され、隔離拘禁されている。

ラウル・カストロ政権は、言論の自由を沈黙させ、労働者の権利をつぶし、ありとあらゆる批判的意見の表明を犯罪にするため、他にも、さまざまな厳しい法律を利用している。それらの法律を適用されて、人権活動家、ジャーナリスト、その他市民運動団体のメンバーたちが裁判にかけられている。しかも、裁判では適正手続きを無視され、組織ぐるみで行なわれる残虐な尋問や弁護士の拒絶、茶番裁判などがはびこっている。

アレクサンダー・サントス・フェルナンデス(Alexander Santos Hernandez)は、2006年に「危険」条項違反を問われ、懲役4年の刑に処された政治家。彼はヒューマン・ライツ・ウォッチに「[警察に]午前5時50分、家で寝ていた時に逮捕されて、その朝の8時30分には、すでに刑を宣告されてたんですよ。」と語った。サントスは弁護士を付けることを認められず、しかも下された裁判は、裁判が行われる2日前の日付となっている。

政治囚たちは、様々な人権侵害を被っている。強制的な思想再教育、長期にわたる隔離拘禁、重病にも拘らず医師による診療を不認可とするなどの被害にあっている。

ラウル・カストロ政権は、投獄以外の人権侵害も行なっている。たとえば、暴行・短期拘禁・反政府勢力とみなされる人びとへの嫌がらせ・雇用拒否などの方法で、政治的な同一性を強制している。このように日常的に行われる様々な抑圧の恐怖が社会を覆い、キューバ社会における基本的自由の尊重を深刻に妨げている。

人権活動家であるロドルフォ・バルテレミ・コバ(Rodolfo Bartelemí Coba)は、2009年3月にヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、「私たちは1日24時間、逮捕される覚悟で生活している。」と語った。これを述べた10日後、バルテレミは逮捕・投獄され、今も服役中である。

米国政府の、広範囲な禁輸措置で圧力をかけて改革を求める政策は、代償が大きい失策であった。禁輸措置は、キューバ国民全体に厳しい困窮をもたらしたが、キューバにおける人権状況を改善することは全く出来なかった。この政策は、米国政府と立場を共にする可能性もあった国々を遠ざけ、キューバよりもむしろ米国を孤立化させてしまった。

「キューバ政府と米国政府の両方が新政権となったにも拘らず、キューバは政府に反対意見を唱える者を弾圧し続け、米国は効果のない禁輸政策をとり続けている。」とビバンコは述べた。「そしていつも通り、その代償を払わされているのはキューバ国民である。」

本報告書「新しいカストロ、同じキューバ」は、オバマ政権がEU、カナダ、ラテンアメリカの各国と協力し、「6ヶ月以内に速やかかつ無条件の全政治囚釈放」とのひとつの具体的な要求に従うよう、キューバに働きかけるべきである、と提言している。

全政治囚とは、2003年にフィデル・カストロ前議長によって行われた取締り以来、獄中で苦しい生活を送る53名と、ラウル・カストロ議長の下「危険」条項違反で投獄されている多くの人びとすべてを含んでいる。

各国との連携が約束されたら、米国は失策であった禁輸措置を終了するべきである、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ラウル・カストロ政権がこの要求に応じなかった場合、多国間同盟の各国は、政府高官の渡航禁止、新しい外国投資の停止など、狙いを絞った制裁措置を科すべきである。それらの措置は、キューバ政府には十分な影響をあたえると同時に、キューバ国民全体には苦しみをもたらすことのないようにするべきである。

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