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ICC:国際刑事裁判所へのグローバルな支持の強化を

締約国(110カ国)の年次会合は、ICCへの非難に毅然と対峙し、国際的な法の正義の強化に向けて努力を

(ハーグ)-国際刑事裁判所(ICC)のメンバー国は、締約国の年次会合で、ICCの使命(ミッション)と独立性に対する国際的な支持を強化すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ICC締約国会合は2009年11月18日から9日間、ハーグで開催される。同会合は、ICCの運営を監督する機関である。

国際刑事裁判所(ICC)は、今年初の公判を開始するなど、重要な進展をみせた、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。一方、ICCが捜査をしている4カ国のうち3カ国で執行できていない逮捕状があるほか、逮捕状がでているスーダンのバシール大統領(ダルフールにおける人道に対する罪の容疑)の友好国がICCを攻撃するキャンペーンを繰り広げるなど、ICCは重大な試練にも直面している。

「ICCは間違いも犯した。その改善は必要だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの国際的な法の正義プログラムのカウンセルであるエリザベス・イベンソンは語った。「しかし、ICCの締約国110カ国は、世界の最終審たるICCの重要な使命を支持するとともに、無節操なICC反対キャンペーンを繰り広げる国々には毅然と対峙すべきである。」

多くのICC締約国(アフリカの締約国を含む)は、国際的な法の正義の実現に全力を傾けるという誓約を再確認しようと、努力をしている。例えば、アフリカのICC締約国のうち少なくとも2カ国(南アフリカとボツワナ)は、アフリカ連合(AU)が7月に下したバシール大統領の逮捕に協力しないという決定を拒否。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ICC締約国に対し、締約国会合での発言で、ICCには極めて重要な使命があること、そして、ICCは自らの広報活動・透明性を強化しなくてはならないと明らかにするよう呼びかけた。

締約国は、来年5月、ウガンダの首都カンパラで、ローマ規程により定められた再検討会議(review conference)を開催する。ローマ規程は、国際刑事裁判所(ICC)を設立した条約で、2002年に発効。再検討会議では、国際的刑事犯罪裁判の現状を評価・点検(ストックテイキング)するとともに、ローマ規程の修正を検討する見込みである。再検討会議で最重要課題として話し合うべき議題の中には、ICCの管轄を広げて法の正義が実現できる地域を世界に広げていくことや、国際犯罪によって悲惨な影響を受けたコミュニティに対してICCがどの程度の影響を及ぼせているかの評価などがある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「この再検討会議で、ICCの到達点と欠点とを両方とも評価するべきだ。そうすれば、この先の数年間のICCの課題が明らかになるし、課題を解決するための一助ともなろう」とイベンソンは語った。「カンパラでの再検討会議で本当に結果を出すためには、ICC締約国は、再検討会議にむけた周到な準備を始めなくてはならない。」

国際的な協力体制の強化が国際刑事裁判所(ICC)の成功に不可欠である、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。そのために、ICC締約国は、証人のリロケーション(移住)問題や刑の執行についての合意などの課題に対処する常設の作業部会を設置すべきである。

ICC締約国は、予算の検討に当たっては、ICCの本拠地ハーグはもちろん、ニューヨークやアジスアベバなどの世界の主要都市や捜査対象の国で、ICCがしっかり活動できるように必要な予算を確保すべきである。ICC検察官は、ICCにとって5件目となる捜査をケニアで開始したいと最近述べ、その承認を求める、としている。

「ICCの活動を拡大するとともに、法の正義実現に対する一層の期待に応える必要がある。そのためには、締約国は、ICCに対する資金的支援を続ける必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、先週、各国政府にメモランダムを送付。締約国会合で議論されると考えられる上記の問題以外にも、いくつかの問題について、関心を払うよう要望した。例えば、ICCの拘置所に拘束中の貧しい被疑者の家族の接見のために必要な費用を裁判所が負担する制度の導入や、今回の締約国会合で行なわれる判事2名の選挙で最高の資質を備えた候補者に投票するようにすること、次のICC検察官選出の準備をすること、などである。同時に、ICCスタッフも、効果的で公正そして信頼性の高い制度を作り上げるための努力を続けなくてはならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは強調した。

背景

国際刑事裁判所(ICC)は、当該国にその捜査又は訴追を真に行う意思又は能力がない場合に、戦争犯罪、人道に対する罪、集団殺害犯罪(ジェノサイド)の被疑者を裁くマンデートを持った世界初の常設裁判所である。

ICC検察官は、コンゴ民主共和国、ウガンダ北部、スーダン・ダルフール地方及び中央アフリカ共和国で捜査を開始。捜査に基づいて、13の逮捕状、1通の出頭召喚状を発行した。そのほかにも、ICC検察官は、世界中のその他の国の事態も調査をしている。具体的には、ケニア、カンボジア、グルジア、コート・ジボワール、アフガニスタン、ギニアなどの国々の事態である。また、パレスチナ自治政府は、ICC検察官に対し、ガザ地区で行われた犯罪についてのICCの管轄権を受け入れると申し立てている。

現在までに、4名がハーグのICC拘置所に収監されている。5番目の被疑者バハル・イドリス・アブ・ガルダ(Bahr Idriss Abu Garda)は、予審手続に自ら出頭した。同人は、ダルフールでのアフリカ連合平和維持部隊に対する攻撃についての戦争犯罪で訴追されている人物である。1月26日、ICC初の公判が、コンゴ民兵指導者トーマス・ルバンガ・ディロ(Thomas Lubanga Dyilo)に対して開始された。2つの追加事件に関する予審手続きも終了。ICCの2番目の公判は、コンゴの反政府軍指導者ジャーマイン・カタンガ(Germain Katanga)とマチュー・ングジョロ・キュイ(Mathieu Ngudjolo Chui)に対する公判で、11月24日に開始されると見込まれている。

ダルフールの事態に関して、バシール大統領及びその他2名に対する逮捕状が執行できていないほか、ウガンダ北部の神の抵抗軍(Lord's Resistance Army)指導者たちと今はコンゴ国軍将軍となっている反政府武装勢力の元指導者ボスコ・ンタガンダ(Bosco Ntaganda)に対する逮捕状が未執行のままである。

締約国会合は、ICCの運営を監督するため、ローマ規程により設置された。締約国政府の代表で構成され、少なくとも年1回は会議を開催するよう義務付けられている。必要により、複数回にわたり会議を開催することも可能である。

ICCの管轄権には3つの種類がある。締約国または国連安全保障理事会が、事態(一連の具体的な事件の意味)をICC検察官に付託する方法のほかに、ICC検察官がICCの予審法廷に対し、捜査開始の承認の申立を行なうこともできる。

条約発効から7年を経過した時点で、国連事務総長は規程の修正を検討する再検討会議を開催する、とローマ規程に義務付けられている。2008年の第7回締約国会合で、ICC締約国はカンパラでこの再検討会議を開催すると決定。同会議は、2010年5月31日から開始される予定である。

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