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イスラエル/ガザ地区:ゴールドストン調査報告書の提言を実施すべき

国連安保理は被害者たちのため、戦争責任の追及による法の正義の実現を

(ジュネーブ)-イスラエル、ハマス及び国連は、昨年末から3週間続いたガザ地区攻撃に関する国連事実調査団(リチャード・ゴールドストン団長)の提言を速やかに実行に移し、戦争法の重大な違反を犯した責任者を裁判にかけ、戦争犯罪を追及しなければならない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

この事実調査団は、国連人権理事会が設立した。調査団は、15日に公表した報告書で、紛争の両当事者とも国際人権法及び国際人道法に対する重大な違反行為を行ない、戦争犯罪を犯したと明らかにするとともに、両当事者とも人道に対する罪も犯した可能性があると明らかにした。

「ゴールドストン事実調査団が、イスラエルとハマス両者が重大な違法行為を行なったことを明らかにした。これは、イスラエルとハマスいずれの側の被害者にとっても、法の正義の実現と救済の実現に向けた大きな前進といえる」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。「今こそ、国連、とりわけ国連安全保障理事会は、今回のゴールドストン勧告に沿った行動をとり、戦争責任を追及して正義をしっかり実現する必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、特に、米国政府に対し、国連安全保障理事会が勧告に沿った措置をとることを妨害をしないよう強く求めた。イスラエルは、人権理事会は偏向組織だと切り捨てている。しかも、ガザ地区の事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託できるのは安全保障理事会である。よって、人権理事会のみでは安全保障理事会の代わりにはならず、安全保障理事会の措置も必要とされているのである。安保理の措置がとられれば、イスラエルとハマス双方の問題行動に対する初の取り組みになる。

「オバマ政権が表明した中東に対する新しい人権原則が試されることになる」とウィットソンは述べた。「ガザ紛争での両当事者の問題に取り組めるこの安全保障理事会にとっての好機を、米国政府は歓迎するべきである。」

2009年9月5日に公表された事実調査団の報告書(575ページ)は、意図的な殺人、民用物に対する意図的攻撃、民間財産に対する過剰破壊、無差別攻撃、人間の盾の使用、ガザ地区封鎖の継続というガザ地区民間人住民への集団処罰など、イスラエル軍が犯した国際人道法の重大な違反行為を明らかにした。そのなかには、戦争犯罪に該当する行為があるとともに、人道に対する罪に該当する可能性のある行為もあると認定。

一方で、報告書は、パレスチナ武装勢力によるガザ地区からのロケット弾攻撃についても、民間人の生命を奪い、イスラエルの民間人を恐怖に陥れるために、意図的に計算された行為と認定。よって、こうしたロケット弾攻撃も、戦争犯罪に該当するとともに、人道に対する罪にも該当する可能性がある、と事実調査団は結論付けた。

ゴールドストン事実調査団は、イスラエルとハマスが、自らの軍が犯した行為を捜査するかどうか、捜査する場合でもしっかりした内容のものかどうか、モニターするための専門家委員会の設立を勧告。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、事実調査団のこの勧告を安保理は実行に移すべきだと語った。

戦争法違反行為を捜査し訴追することは、第一義的には、紛争当事者の責任である。しかし、イスラエルとハマスがこの責任をしっかり果たすかどうかは疑問である。両者とも、重大な戦争法の違反行為の容疑をかけられた兵士たちをしっかり捜査し責任を問うという責任を全く果たしてきていない。

「自らの軍隊が戦争法違反の行為を犯したという信頼性の高い報告がなされているからといって、イスラエルとハマスがそれぞれしっかりとした捜査を行うだろうと信頼できる根拠はまったくない」とウィットソンは語った。「だからこそ、しっかりした捜査と訴追を実現するためには、イスラエルとハマスの今後の行動を監視する委員会を安保理が設立することが必要なのだ。」

ゴールドストン事実調査団は、イスラエル政府とハマス当局による捜査が不適切な状況が今後も続く場合、安保理は、ガザ紛争を国際刑事裁判所(ICC)に付託すべきとの勧告を行なった。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこの勧告に支持を表明。

「安全保障理事会のメンバー国は、ガザ地区攻撃の際に行なわれたすべての当事者による犯罪行為について、戦争責任を追及し法の正義の実現するため、具体的な措置をとっていく必要がある」とウィットソンは語った。「ICCによる戦争責任の追及を、国際的な圧力に弱い国の犯人の訴追だけに限るべきでない。」

世界初の常設の国際刑事法廷である国際刑事裁判所(ICC)は、まさに、今回のガザ地区攻撃の際行われた戦争犯罪などの行為を裁くために設立された国際法廷である。イスラエルはICCの締約国ではないものの、国連安保理がガザ地区の事態をICCに付託するか、あるいは、ガザ地区で侵された犯罪に対する管轄を認めるパレスチナ自治政府(Palestinian National Authority)の求めに応じてICC検察官が捜査を開始するか、または、ICC締約国の国民がイスラエル又はハマスの戦争犯罪行為を行なった場合には、今回のガザ攻撃における戦争犯罪に対し、ICCは管轄権を有することとなる。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ICC検察官に対し、パレスチナ自治政府の求めに対し、戦争責任者の不処罰を終焉させるというICCの設立目的にそった速やかな決定を行なうよう求めた。

ガザ地区攻撃についての事実調査団は、今年1月に国連人権理事会によって設立された。事実調査団の権限は、当初、イスラエルによる違反行為の調査のみを行なうという不当な制限がついていた。しかし、その後、人権理事会議長が、ハマスなどのパレスチナ武装グループの行為に対する調査も対象に含めるよう権限を拡大。議長がこうした変更を明らかにし、国連人権理事会はこれを事後的に追認する形となった。著名な国際法律家であり、旧ユーゴスラビア戦争犯罪法廷及びルワンダ戦争犯罪法廷の元主任検察官であるゴールドストン判事が、イスラエルもパレスチナ武装グループ双方を調査することを明らかにしたうえで、事実調査団を率いることとなった。

事実調査団は、188名の個人に聞き取り調査を行い、30を超えるビデオと1200を超える写真に加えて、300を超える報告書などの文書記録を検討。

イスラエルは、事実調査団への協力を拒否し、質問への回答も拒否。表向きの理由としては、人権理事会も、事実調査団を設立した当初の決議も、イスラエルへの偏見にまみれているから、という。しかしながら、イスラエルは、今回のガザ地区攻撃についてのその他の調査に対しても協力を拒否してきており、調査は避けたいというのがイスラエルの協力拒否の真の理由であろう。イスラエルは、ゴールドストン調査団チームに対して、イスラエルへのビザ発給を拒否。そこで、調査団は、イスラエルからジュネーブに証人たちを招聘し、公開審理で証言の聞き取りを行なった。

ハマス及び西岸地区のパレスチナ自治政府当局者はチームの調査に協力。しかし、「ガザ地区で調査団が聞き取りを行った人々には、武装組織の行動について話をするのをいやがる傾向はあった」とも報告書は指摘している。ゴールドストン調査団のチームは、6月初旬、エジプト経由でガザ地区を訪れた。

「人権理事会は、これまで公平さを欠き、イスラエル問題ばかりに焦点をあてていた。しかし、ゴールドストン報告書は、紛争両当事者の戦争責任を正確にかつ専門性をもって調査した。政治性などまったくない報告書だ」とウィットソンは述べた。「イスラエルは、軍の行動に対する調査から逃れようと逃げ続けるべきでない。逆に、今回、人権理事会におけるイスラエル・パレスチナ紛争の取扱いが、よい方向で変化したことを歓迎すべきだ。

2008年12月から3週間続いたガザ地区攻撃を、イスラエルが「キャスト・レッド(いぶした鉛)作戦」と呼ぶ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この作戦の間に、イスラエルとパレスチナ武装グループ双方が犯した違法行為を広範に明らかにしてきた。ハマスなどのパレスチナ武装組織は、イスラエルの民間人居住地域に数百発のカッサムロケットやグラッド・ロケットを打ち込んだほか、こうしたロケット弾をガザ地区の人口密集地帯から発射した。これらはいずれも戦争法違反行為である。また、イスラエルも、白リン弾を民間人居住地帯に打ち込み、民間人であると伝えるため白旗を振っている民間人たちに発砲したほか、民間人を無人飛行機によるミサイル攻撃の標的にしたり、違法に民間人財産を破壊するなどした。こうしたイスラエル軍の行為もまた戦争法に違反する。

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