(モスクワ) ― ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本日発表した最新レポートで、ウズベキスタン政府が、2005年5月アンディジャンの騒乱に何らかの関与をしたと政府として考える人びとを、今も迫害し続けていると述べた。

45頁のレポート 『掻き消される真実:アンディジャンでの政府弾圧』 (一部日本語訳はこちら)は、ウズベキスタン政府が、アンディジャンの抗議運動の参加者や、アンディジャン虐殺の後ウズベキスタンを逃れた難民の家族、そして、ウズベキスタンへ帰還した難民などを、厳しく抑圧し続けている様子を記録している。こうした人びとは、尋問されたり、政府の恒常的な監視下におかれたり、村八分状態にされたり、脅迫されたりしている。こうしたプレッシャーによって、アンディジャンからは新たに難民が生まれている。ウズベキスタン政府軍は、2005年5月13日、武装勢力の襲撃に端を発した反政府抗議運動を鎮圧するため、数百人をアンディジャンで虐殺した。今も続く政府の抑圧のため、このアンディジャン虐殺以来、2度目の逃亡を余儀なくされる難民もある。

「ウズベキスタン政府は、アンディジャン難民は帰国を恐れなくてもいい、と言うが、事実と全く違う。自分の身の安全に脅威を感じて当然の状況だ。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、欧州・中央アジアディレクター、ホリー・カーターは述べる。

ウズベキスタン政府には、虐殺の責任者を捜査・訴追する義務があり、また、アンディジャンを現在も恐怖に陥れている日常的な抑圧をやめなくてはならない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国際社会に対し、ウズベキスタン政府に、こうした義務の履行を促すように、要請している。

「アンディジャン事件の残渣に直接繋がる人権侵害が多数起きている。ウズベキスタンの関係諸外国政府は、ウズベキスタン政府に働きかけるべきだ。あたかも本を閉じるように、アンディジャン事件の幕引きをさせてはならない。」とカーターは述べた。

2005年5月13日早朝、銃を持った複数の男性がアンディジャンの政府関係の建物を襲撃し、治安組織関係者を殺害した。そして、市の監獄に押し入り、人質をとった。それに続いて、大衆の抗議運動がおこり、政府に不満を訴える、数千人規模のデモとなった。これに対し、政府軍が無差別に発砲。人びとは一目散に逃げはじめた。政府軍は待ち伏せ攻撃を行い、数百人の人びとが(ほとんどが丸腰の市民だった)殺害された。ウズベキスタン政府は、現在にいたるも、こうした殺害についての軍の責任を一切認めていない。

アンディジャンの虐殺以来、ウズベキスタン政府は、抗議の声をあげた者たちの処罰を続け、また、2005年5月13日に何が起きたのかについてのウズベキスタン政府「バージョン」の見解に対し、異議を唱える声を黙らせようとしてきた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、帰還した難民や外国に逃れた難民の親族が、ウズベキスタン国内で、虐待や抑圧を受けているのは、こうしたアンディジャン虐殺以来のウズベキスタン政府の政策の一貫であると述べた。

ウズベキスタンに戻ったものの再び国外に逃げた難民たちは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、ウズベキスタンに戻った際の経験として、以下のようなことを語った。すなわち、こうした難民たちは、帰還してから、繰り返し尋問を受け、虚偽の自白を強要されたり、2005年5月13日に何が起きたのかについてのウズベキスタン政府「バージョン」の見解を支持する内容の供述調書に、むりやり署名させられたりしたという。中には、こうした自白を公表し、公の場で、自らの過ちを“認め”、許しを請うよう、強制された人びともある。海外に逃れた難民の親族で、ウズベキスタンに留まっているのは、多くが女性と子どもだ。こうした人びとは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに、当局から屈辱的な扱いをされたり、虐待されたりしている、と訴えた。例えば、シングルマザーに通常支給される福祉サービスを拒絶されたり、地方政府から村八分的扱いをうけた、と語った。

この新しいヒューマン・ライツ・ウォッチのレポートには、海外に逃れたアンディジャン難民のウズベキスタンに残された子どもたちの状況も記録されている。子どもたちは、学校当局から屈辱的な取り扱いをされたり、懲戒処分の脅しを受けたりしている。中には、学校を辞めさせられあらゆる教育を受けられないようにされた複数のケースもあった。青年の男性に対する扱いは特にひどく、尋問や拘留される他、両親の行為を罪として起訴すると脅迫されたりしている。

アンディジャン難民たちは、ひとたびウズベキスタンを逃れても、大きな危険に曝され続けている。例えば、ウズベキスタン政府は、難民たちを強制的に帰還させようとしている。近隣諸国も、難民たちを保護する能力がないか、あるいは保護する意思に欠けている。キルギスタン、カザフスタン、ウクライナ、ロシアの各国は、国際的な義務に反し、難民及び庇護希望者を、強制的にウズベキスタンに帰還させた。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは、このレポートで、ウズベキスタン政府に以下の要請をしている。
・ 帰還した難民と外国に残る難民の在ウズベキスタン親族に対する、虐待その他の人権侵害をやめること。
・ アンディジャンへの帰還を希望する人びとが、真の安全と尊厳を守られて帰還できるよう確保すること。
・ 独立の人権機関と報道機関が、妨害を受けることなく、アンディジャンを含む国内各地で、活動することを許可すること。
・ タシケントに本拠を置く外交使節団とNGOを含む第三者調査団に、保護を求めた国からウズベキスタンに強制送還された人びとへのアクセスを認めること。

 また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ウズベキスタンの関係各国に、以下の要請をしている。
・ 独立した人権調査団、国際機関及び報道機関が、自由にアンディジャンに入ることを許可するよう、ウズベキスタン政府に要求すること。
・ アンディジャン虐殺の責任者の法的責任を追及するよう、改めて要求すること。
・ 安全で尊厳ある帰還を保証する条件がアンディジャンに整うまで、ウズベキスタン人庇護希望者たちの再定住を最優先課題にすること。
  
また、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ウズベキスタンの庇護希望者を受け入れている国々に対し、難民条約(1951年)及び同議定書(1967年)と拷問等禁止条約に反して、ひとりも強制送還されることがないように確保するよう求めた。

2005年10月、EU(欧州連合)は、ウズベキスタンに対し、武器禁輸と12人の政府職員へのビザ発給禁止などの、限定的な制裁措置をとった。しかしこの2年半の間に、EUはこの制裁を徐々に緩和してきている。EUは、4月29日から、6ヶ月間、2度目になるビザ発禁の完全解除措置をとることにした。

「関係諸外国政府とウズベキスタン政府との対話の中でのアンディジャン事件の重要度は徐々に落ちてきている。しかし、関係諸政府は、アンディジャン事件を議論の優先課題に戻さなければならない。そして、関係諸外国政府は、アンディジャンにおける迫害を終わらせることを、ウズベキスタン政府との関与の最重要課題のひとつとすべきである。」とカーターは語る。

背景
政府は、虐殺から3年間、2005年5月13日に起きた殺害のいずれについても責任を否定し続けてきた。政府軍が無差別に発砲し丸腰の市民を何百人も殺したという夥しい数の証拠が、国際機関やNGOによって集められているにも拘わらず、である。政府は、第三者による国際的な事実調査を求める国際社会の要求を拒絶し、真実を覆い隠してきた。アンディジャン騒乱の後、ウズベキスタン政府はアンディジャンで厳しい弾圧を開始し、事件の真相を知る個人、特に虐殺の目撃者、また虐殺の引き金となったデモに参加した抗議者に圧力を加えてきた。

ウズベキスタン政府は、市民社会に対しても残虐な弾圧を展開するのをためらわなかった。アンディジャン事件について声を上げ、2005年5月13日の殺害について政府の責任を問うた、人権の守り手、独立系ジャーナリスト、政治家を、身柄拘束してきた。少なくとも12人の人権の守り手たちが、政治的動機によりかけられた容疑のため、今日も身柄拘束されたままである。数百人の人びとが、武装勢力の襲撃或いはその後の抗議運動に関与したとして、有罪判決を受けた。裁判は、一件を除き、すべて非公開裁判だった。