世界的な難民危機に関して今週開催されたサミットは、歴史上重要な瞬間を迎えている難題に応えることができませんでした。エチオピア、イラン、ヨルダン、ケニア、レバノン、パキスタン、タイ、トルコなど、世界の難民の圧倒的多数を受け入れている国の多くは、受け入れ能力の限界に達していると明確にしています。これらの国々の一部は、何年も、あるいは何十年にもわたって寛大に難民を受け入れてきました。それが今や、難民に国を去るよう圧力をかけたり、新たな難民の受け入れを拒否したり、あるいは近々そうするだろうと警告するところまできているのです。
難民サミットで世界の首脳から聞きたかったのは、難民の大半が滞在する国々に対し、いかに大胆かつ寛大な支援をしていくかについてのコミットメントです。難民が最初に到着する「玄関国」への支援をどのように強化していくかを語ることこそ、危機にさらされている庇護を求める権利をまもることにつながるでしょう。しかし、今回の国連サミットは、現実世界からかけ離れた決まり文句や、国境警備強化による不法移民阻止などの厳しい宣告で埋め尽くされました。たとえば、欧州理事会のドナルド・トゥスク議長は次のように述べました。「本日はっきりと言えるのは、欧州連合(EU)がその境界地帯の秩序を回復するという、明確な目的を持っていることです。その結果、今後EUへの不法な人の流れは減っていくことになるでしょう。150万人超の不法移民が流入した2015年のような事態に再び陥ることはありません。」
しかし、これらの「不法移民」のなかに、難民はいなかったということでしょうか? 2015年に到着した人びとの83%が、難民を生み出している上位5カ国(シリア、アフガニスタン、ソマリア、イラク、エリトリア)の出身者であったことを思い出してみてください。
トゥスク議長はまた、難民のEU内再定住について何ら追加約束をしませんでした。EUは残念ながらこれまでも、難民受入れという国際的連帯が大事な課題で、期待を裏切ってきました。
国連主催の難民・移民サミットは、多くの世界のリーダーたちによる悲壮なスピーチで満たされましたが、(本編執筆時に開催中の)米大統領主催の首脳級難民サミットでは、もっと具体的なコミットメントが聞けることを期待したいと思います。それは、100万人の難民の子どもの就学、100万人のその親たちの就労、再定住の大幅増加、そしてより多くの援助資金拠出というゴール実現にむけたものです。
これら目標はすばらしいものです。しかし、これだけで十分なのではありません。庇護の質を改善し、再定住などの恒久的解決策を難民に現実的な選択として提供できるようにすることが、「玄関国」の不安定化を防ぐ手立てとなるでしょう。それこそが、今後何カ月または何年にもわたって命の危険から逃れてくるであろう人びとに対し、避難場所へのドアを確実に開けておける最善の戦略なのです。